インターネットは,次々に新しいビジネスの形を作り出し,人々の生活そのものにも大きな影響をもたらした。数年前では考えられなかったIT社会が生み出された。しかし,このインターネットによる変革以上の革命が,静かにしかも着実に起きようとしている。それをもたらすものがXMLである。インターネットは,いわばコミュニケーション分野の革命であったが,XMLは価値創造の方法そのものの革命だからである。
いよいよ日本でも,工業社会から知識情報社会への新たな第3次産業革命が起ころうとしている。
その牽引力として期待されているITエンジンのメイン部品がXML技術である。
新たな時代に求められる「知識創造型経営」では,ばらばらに存在している知識・経験・ノウハウ・知恵などを情報資産として組織的に共有・活用することによって,優れた商品やサービスを作り出し,その競争力を高める「価値創造のイノベーション」を起こしていくことが求められる。個々がもつ知識を企業全体の知的資産として再利用が可能な形で共有するためには,このXMLのもつ力をいかにうまく活用していくかがカギとなる。
その点ではXMLは単なる基礎技術ではなく,1つの文化を作り出すものとして捉えられている。
低迷する印刷業の起死回生の手段が,「製造業からIT産業への転身である」ということを多くの人が唱えるようになってきている。これはページ単価いくらでお金をもらうのではなく,おのおののサービスに対して値段を付けるというような,単なる課金方法の違いだけではない。つまりこれからは,戦う相手が同業他社ではなく,情報システムを開発するシステムベンダーやそれを組み合わせるSIベンダーとなるわけである。先行を許した分明らかに分の悪い戦いであるが,印刷業者が顧客の情報資産を握っている今ならば,まだ十分に勝機がある。今後は,単にシステムやアプリケーションを組み合わせてその機能に客先の業務プロセスを合わせるのではなく,顧客がもつ情報の本来の姿をそのままモデル化し,それに応じたシステムを作成する時代になると考えられるからである。そのための最終兵器がXMLというわけである。
印刷業にとって,いよいよXMLは知らないでは済まされなくなってきた。印刷業関連のさまざまな関係者と話していると,「XMLの導入は時期尚早である」とか「導入効果が見えない」など取り組みに消極的な話をよく耳にする。その多くは情報不足や誤解から生じる根拠のないものだが,情報を発信する側の説明の不十分さや偏った見方も問題の原因になっているのは残念なことである。
そこでこの機会に,特に印刷業向けに,多少の混乱や誤解がある問題を一問一答形式で取り上げる。XMLの可能性について理解してほしい。
◆今後の掲載テーマ
第1回〔はじめに〕|第2回〔基本編〕|第3回〔システム編〕|第4回〔ツール編〕|第5回〔XSLT編〕
2002/10/28 00:00:00