フォントをめぐる知的財産権の問題は、古くて新しい問題である。今ではアウトライン
フォントは市民権を得て当り前のごとく使われているので、アウトラインフォント処理に
不可欠な要素である、「ラスタライザ」と「タイプフェイス(書体)」の知的財産権につい
ては関心度が低くなっている。 そこで少し古い記事になるが、1992年ころのアウトラインフォント関係の知的財産権に 関する雑誌記事を見直して、あらためて考えてみたいと思う。 これまでの「フォント千夜一夜物語」で取り上げたように、文字のデジタル化がドット フォントから始まりアウトラインフォントへと移行した時代は1985年代であるが、アウト ラインフォント処理に関する特許は1968年代から多くのメーカーから出願されていた(以下参照)。
●アウトラインフォントの主な特許 アウトラインフォントをめぐる知的財産権には2つの要素がある。1つは特許の問題、 もう1つはタイプフェイス(以下書体という)の知的財産権である。 ラスタライザの基本特許にいついては、日本電気オフィスシステムがラスタライザの 基本特許を取得している。アウトラインフォント搭載のプリンタやワープロなどは、この 基本特許を避けられないといわれていた。 もう1つの書体の知的財産権については、国内では著作権や意匠権による保護はいまの ところ難しい状況にある。しかしフォントメーカーやタイプデザイナーは、法的保護の必 要性を強く求めているのが実情である。
●ラスタライズの基本特許は1993年まで 特許を取得したメーカーは、権利行使の実行に力を入れるようになった。一方で、フォントメーカー/フォントベンダーやコンピュータメーカー、周辺機器メーカーなどは他社の特許を 回避するように、いろいろと工夫を凝らしていた。 しかし避けがたい特許もある。日本電気オフィスシステムの基本特許である。この特許 は「プリンタからワープロまで、アウトラインフォントを搭載する、あらゆる機器が対象 になる可能性がある強力な特許」といわれている。 このことは、特許の有効期間がきれる1993年春まで、アウトラインフォントを手がける 多くの関連メーカーは、日本電気オフィスシステムに対して特許使用料を払うことになる わけだ。 特許取得者である日本電気オフィスシステムは、特許権の権利行使に注力し各 フォント関連メーカーに警告書を送付した。(つづく)。
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2002/12/07 00:00:00