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2003年の印刷業界

「2002年は最悪」と感じた印刷企業は多いだろう。しかし、GDP成長率が実質ベースでほぼ横ばい、名目ベースではマイナスが見込まれている2003年、印刷業界の景気も更に下向きになると覚悟せざるをえない。

出版市場低落の最大要因であるメディアの多様化と少子化は続く。前者の勢いは緩やかになっていくだろうが平衡点には至らないのではないか。人口を基盤とする出版市場において、高齢化という大きな流れをプラスにしていくような顕著な動きは見られない。出版業界の活性化という意味では、さまざまな電子化の動きや新興勢力がもたらしつつある販売業態の複合化が注目される。

広告宣伝市場は、GDPと強い相関関係があるので、GDPの予測に従えば2003年も前年割れを予想せざるをえない。広告市場にとって、規制緩和は企業の新しい動きを即して大きなプラス効果をもたらすことは、先の金融業界の再編成等に関わる需要からも明らかである。2003年は郵政公社化の動きとも関連して、DM分野での動きが注目である。 広告宣伝、販売促進手段として、対象と目的に応じて紙媒体と電子媒体を選択的に使うという考え方は定着しこれからは知恵の勝負になる。この点で、印刷業界は決して弱い立場にはないから頑張りどころである。

紙器、特殊印刷分野の印刷需要は、それぞれに関連する業界の景気循環や特殊事情が出版、商業印刷市場以上に大きく影響するが、基本的にはGDP連動で動く。共通の要因として資源環境問題に貢献できる新規商品、事業には伸びが期待できる。

以上のように見ると、2003年の印刷市場の全体見通しは明るいとはいえず、デフレ色も一層強まるだろう。しかし幸いなことに、印刷業界の経営マインドは健全である。2002年を振り返り2003年をどのようにしていくかについて聞いた会員企業の声からは、強いプラス志向が感じられる。
基本認識として漠然とした景気期待や印刷市場拡大願望はなくなった。しかし、それでめげるのではなく、現在よりもより厳しい環境を前提として、新しい展開も視野に入れた改革を、躊躇なく積極的に推し進めていこうとしている。さまざまな観点から現状を見直して贅肉を殺ぎ落とすとともに、新商品、新事業開発に向けて「トップ以下全員が知恵を出し、創造性を豊かにして失敗を恐れない勇気を持って臨む」というコメントは多くの声に共通するものである。

印刷産業は、社会に広く深く根を張った業界であり、しかも、公共事業に依存したり規制によって市場や経営が縛られることもない自立性が強い業界である。したがって、「変化がチャンス」という言葉を自らの努力次第で実現できる業界であり、経営マインドが上記のようにポジティブである限り新たな上昇気流を捉えて発展していけるはずである。
JAGATの「月次印刷業界動向」に寄せられた声のように、「売上減でも収益は上がり得る。製造業の場合、社内生産が増え外注費が減れば当然改善される。見せかけの儲からない売上増を追っかけるのは、みんなしてやめたい」ものだし、「この時期,経営者としての社会正義と使命を貫き通したい」という正論で、この困難な時期を乗り切っていきたいものである。

2002/12/31 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会