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フォント関連の知的財産権(6) フォント千夜一夜物語(21)

欧米におけるタイプフェイスの法的保護に関しては、「ウィーン協定」という世界的に準 拠さるべきものが存在している。その内容を「Tee No.114『特集:書体の法的保護は』1989年(日本タイポグラフィ協会)」から一部引用して紹介する。但し、十余年を経過した現在での実態は変化している。例えば、アメリカの「デザインパテント」の登録は相変わら<ず続いており、実用的なタイプフェイスの登録も少なくない。

この「ウィーン協定」は、1958年に開催された工業所有権の保護に関するパリ条約のリ スボン外交会議において、国際タイポグラフィ協会の会員がタイプフェイスの法的保護の 必要性について演説したのが、きっかけになったといわれる。

そして国際的には1973年、「タイプフェイスの保護及びその国際寄託に関するウィーン 協定」が成立し、国際的な保護の枠組みができているものの、批准国数が要件を満たして いないため、まだ発効にいたっていない。一方日本では、書体を直接、明示的に保護する 法律は存在していない。

● 欧米のタイプフェイスの保護

(1)西ドイツ
西ドイツは最初の「ウィーン協定」批准国で、特別法(タイプフェイス保護法)によっ て権利保護している。

(2)フランス
フランスも当初の「ウィーン協定」の批准国である。国内では著作権法により、タイプ フェイスを保護することを宣言している。 その「文学的及び美術的所有権に関する法律(書体著作権法)」第3条に、精神的著作物 としてタイポグラフィの著作物が規定されていて、その有効期間は10〜25年とされてい る。

(3)イギリス
イギリスでは1842年及び1843年のデザイン法以来、新規のものだけ個々の文字の活字 デザイン登録が可能となっている。
また一組の活字のセットとしてのデザイン登録も当初は可能であったが、その後イギリ ス特許局は一組の活字であっても、個々の活字一字一字の新規性を要求するようになり、 タイプフェイスの登録を受けつけなくなった。
しかしその後、著作権法によって保護するという考え方が有力になり、1989年から書体 (タイプフェイス)が著作権として保護されることになった。この結果イギリスは第3 番目の「ウィーン協定」批准国になった。

(4)アメリカ
アメリカはタイプフェイスの保護には、かつては否定的であった。
アメリカでは、タイプフェイスを「デザイン・パテント」として登録するこ とができるという。しかし個性的なタイプフェイスに限られる。
実用的なタイプフェイスは、新規性が乏しいとして登録を拒絶されることが多いという。 しかしアメリカのフォントメーカーは、著作権による保護を望んでいた。
アメリカ著作権局は1988年に、デジタル化したフォントのフォントデータを保護しない という方針を明らかにした。
そして「フォントデータからフォントを描画するプログラム(例:フォントラスタライ ザ)は、プログラム著作物として著作権登録ができる。著作権登録したプログラムがフ ォントデータを含む場合には、データについては権利を請求できない」とした。
この著作権局の見解に米アドビシステムズ社、米ビットストリーム社などが、データの 著作権を認めるよう著作権局に働きかけた。
その結果、1991年に公聴会を開き、デジタル化したタイプフェイスの保護のあり方を再 検討し、その後フォントの描画プログラムだけではなくフォントデータの保護も認めることに決めた。

アメリカだけではなく、フランスやイギリス、ドイツなども、タイプフェイスを法的に 保護している。フランスのように著作権法と意匠法で保護する国もあり、またドイツのよ うに新しい法律を作って対応する国もある。日本も真剣に取り組むべきではないだろうか (つづく)。

フォント千夜一夜物語

印刷100年の変革

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2003/03/01 00:00:00


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