今日では、DTPを初めとして印刷用の文字(フォント)は、アウトラインフォントが使 われるのが定番になっている。アウトラインフォントは、拡大・縮小・変形処理の自由度 が高く、低解像度のプリンタでも文字の曲線や斜線部分が滑らかに表現できるというのが 特徴である。
ところがアウトラインフォントを使ってラスタライズしても、低解像度の出力装置 (300dpi/400dpiプリンタ、CRT/液晶デスプレイなど)では、小サイズで出力するとジ ャギーや線幅のバラツキが目立つものである。つまり綺麗に表現できるというわけにはい かない。そこで「ヒンティング」というフォントテクノロジーが重要な役割をする。
いまでは低価格のプリンタでも、解像度の数値だけでいえば700dpi×1400dpiとか、 800dpi×800dpiのように高解像度化している。しかし印字方式はインクジェット方式が主 流になっている。
ワープロが誕生した1983年ころ、またDTPや電子組版機が登場した1985年ころのプリ ンタの解像度は、300dpiとか400dpiが主流であった。それでも当時の展示会のブースな どで、メーカーの説明員はワープロの印字物を見せて「もう印刷はいらない」などと説明 していたのを思い出す。
300dpiや400dpi程度の印字物が印刷物の代替えになるわけがないが、印刷に素人の人 たちは本当にそう思ったようである。また印刷人の中でも、社内文書くらいには使えると いうことを実感した人は少なくなかったようである。
初めのうちは、ワープロを批判していた印刷業者、特に軽印刷業者なども、次第にワー プロを無視できなくなった。それは印刷物の代替としてではなく、ワープロがもつ入力・ 編集機能の入力機としての魅力である。
しかし今や2万円前後のインクジェットプリンタでも、印刷物に匹敵する印字物を手に することが可能になった。しかもカラー印字で、わずか20年の間の出来ごとである。
●改めてドットフォントの需要
ここ数年、ドットフォントの需要が増加しているという。1992年以来グラフィック
アーツ業界では多くのフォントベンダーが、積極的にフォントビジネスを展開してきた。
しかしそのほとんどがポストスクリプトやTrueTypeのアウトラインフォントのフォント
パッケージ販売あるいは制作委託である。
DTP環境でトラブルが多いのは、フォント関係といわれている。現代ではいろいろなフ ォントフォーマットが生まれ、覚えるだけでも大変である。しかしフォントの理屈が分っ ていれば難解ではないというが、DTP環境ではドットフォントとアウトラインフォントの 両方が使われているので、一層複雑になっている。
過去のワープロや電子組版機のプリンタにはドットフォントが使われた。というよりデ ジタルフォントといえば、ドットフォントであったわけだ。
MacによるDTPの誕生とともにPostScriptが登場し、その後のフォントテクノロジーの 進歩により、アウトラインフォントが主流を占めるようになったわけである。
その結果、アウトラインフォントが、すべての出力装置に使われるようになったと思わ れ、ドットフォントの影が薄くなっているが、実はドットフォントでなければ役に立たな いという分野もある。そこであらためて、ドットフォントに関する周辺知識について述べ てみたいと思う(つづく)。
■DTP玉手箱■
2003/03/15 00:00:00