ドットとはいまさらいうまでもなく、文字フォントを構成する点のことで、その点の構成で文字を表現したのがドットフォントである。文字の形状を仮想ボディのなかに0か 1で、つまり白か黒で表わしているわけだ。日本ではドットフォントの呼称が一般的であ るが、欧米では「ビットマップフォント」と呼ばれている。
一昔前は、プリンタやディスプレイなどに主流として用いられ、日常的にこの言葉が使 われていた。そしてドットフォントは市民権を得て、一般社会や印刷業界にも浸透してい た。
ところが1990年以降デジタルフォントといえば、アウトラインフォントをイメージする ようになり、DTPや電算写植システムなどの文字処理に使われた。
タイポグラフィの真実は、質の悪いフォント(書体)は良質なタイポグラフィを生まな いことである。では良質なフォントさえあれば、良質なタイポグラフィが生まれるか、と いうと必ずしもそうではない。
アウトラインフォントのデザイン品質は、原字(字母)に左右される。つまり原字デザ インが重要な要素になる。ところがドットフォントのデザイン品質は、ドットサイズごと のチューニングの良し悪しによる。
ドットフォントは、どれも同じだと思われているがそうではない。制作者によって、す なわちメーカーごとに異なる。同じドットサイズでも、読みやすいフォントと読みにくい フォントが存在するものである。
●ドットフォント・デザインの要素
過去100年間の印刷用書体は、活字でもまた写植文字でも、常に専門家の手によってデ
ザインされ文字組みに使われてきた。
よく「美しい明朝体」という表現が使われているが、「美しい明朝体」がすなわち「読み やすく美しい」という意味とはかぎらない。
ドットで構成されている文字は、新しいエレメントの書体といえる。文字情報による伝 達を世代別に分けると、第1世代は手書きである。そして第2世代は活字、第3世代は写 植で、第4世代は電子によるデジタル文字であろう。
第1世代から第2世代は大きく変貌した。つまり文字の姿が一変する。しかし第3世代 は第2世代の模造、変造で、第2世代の書体の本質を受け継いでいる。
第4世代のデジタル文字の始まりはドットフォントである。これは文字を構成するドッ ト数が多ければ多いほど第3世代に近い、すなわちアナログ文字に近くなる。
その反面ドット数が少なくなればなるほど、姿が変わってくるという二面性をもってい る。いい換えると第2世代と第3世代のフォントは、連続的な線質のアナログ文字である のに対して、第4世代のドットフォントは断続的な線質のデジタル文字といえる。
しかし第4世代のデジタルフォントの場合でも、ベクトルフォントやアウトラインフォ ントのような、よりアナログ的なデジタル文字もある。
●ドットフォントの変化
ドットフォントの変化には、大別して2つの要素が上げられる。その@は文字を構成す
るドット数の変化、そしてAは出力装置の変化である。
ワープロが1978年に誕生した当時は、ドットフォントといえば16×16ドットであった。 しかも出力機はワイヤドットプリンタが主流で、印字サイズは5号(10.5ポイント)のみ であった(つづく)。
■DTP玉手箱■
2003/04/12 00:00:00