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収益性を軸に変わった舵取り

8兆円を割込んだ印刷産業の実像

印刷産業の出荷額はついに8兆円の大台を割込んだ。この10年で1兆円も縮小した。出版印刷市場も商業宣伝印刷市場も大幅な前年割となり、電子部品関係だけがプラスというのが上場企業の品目別売上の状況である。
しかし、少し細かく見ると、不況、デフレと言われる中でも次の時代に繋がる新しい動きが芽を出し始めた分野もある。商業宣伝印刷物として拡大するフリーペーパー、モバイルと紙媒体を相乗効果的に使用する販売促進分野などで、出版業界における情報化も、今後印刷の世界と密接に関連する動きとして見逃せないものがある。いずれにしても、2002年はデジタル技術の影響が身近により色濃く見られた。

一段と低下する収益性

印刷企業の収益性は一段と低下した。中小印刷企業の売上経常利益率は3%を切り、上場印刷企業も減収減益となって利益率は低下している。
ここ1,2年、更なるプリプレスのデジタル化で印刷会社のプリプレス内製化がさらに拡大するとともに、CTPの導入によって収益性改善を図っている企業が多い。しかし、デフレ経済下における顧客の低価格要求と供給力過剰による低価格が生産の合理化以上に進み、生産の合理化がそれに追いつかない。このような中で中国への印刷需要流出の懸念も高まったが、中国からの印刷物の逆輸入は必ずしもメリットがあるわけではないという調査結果もある。

見られ始めた過剰設備調整の兆候

生産設備は、すでに設備単体としての省人化、自動化の完成地点に近づいており、その導入による見返りは以前ほど高くはなくなってきている。また、設備導入によって物的生産性が上がっても、それに応じた仕事量の確保をしなければならないことの方が多いから、安値受注に向かいがちである。したがって、物的生産性の向上と比例して価値的生産性は上がらず、かえって安値競争に巻込まれていくことになる。経営判断といえばそれまでだが、業界全体としては、この競争が印刷産業の出荷額が8兆円を割込む大きな要因となっている。このような状況は、右肩上がりの成長が終った後もしばらく続いていたが、中小印刷業界ではようやく過剰設備による供給力過剰を見直す兆候がいくつかの経営指標に見られ始めた。
また、各社の基本的な政策面でも、人に関わる部分をより重視することが良い業績につながるという状況もみられるようになった。

来る6月11日のJAGAT大会において、JAGATからの報告「収益性を軸に変わった舵取り」では、上記のような印刷業界の状況を各種の客観データをもとに解説する。

2003/05/13 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会