そういう意味では、他部門では人事が管轄している制度の中身をほとんど理解することはなく、自社の人事制度の存在に気づくのは、例えば年に一度の昇進・昇格の時や昇給の実施、賞与の支給日などです。そういうときに人と比較してみて、昇給額や賞与の額がちょっと違う、あるいは同期入社の彼(彼女)よりも昇格が遅れた事実を知ったといった場合に、どこかで何かを評価されているみたいだと思うのが関の山で、自分の会社の人事制度について他部門の人間が詳しく知っているということはありえなかったのです。経営との連動性や戦略の実現性もほとんどなく、社員の納得性も当然のことながら低いものだったのです。
しかし、これからは経営連動性を持たせた戦略実現のためのサポート・ツールとして、人事制度を再定義する必要性に迫られてきています。昨今の経営環境の趨勢から見れば、人の持つコンピテンシーを結集し、人的資本を組織資本に換え、自社の目標や戦略の実現を果たしていく必要があります。企業として持続的な競争優位性を確保していくためには、競争市場において自社がどのようなポジショニングをとるかという、極めて競争戦略論的な視点ももちろん重要ですが、内部環境における知的競争力としての人材にフォーカスし、そのポテンシャルを最大限に引き出すための人事制度の戦略的活用がキーポイントとなってきました。制度自体に抜本的なメスを入れていく必要性が出てきたのです。
その処遇フレームの中では、社員個人のミッション(期待役割)とはいったい何なのかというミッションの明確化と、企業目標を達成していくという方向で改革すべきであること、また、制度の中身についてはできるだけ社員が理解・納得できるよう、オープン化が望まれるということになります。いまだに社員にどの部分までオープンにしていくかということで悩んでいる企業が多いのですが、基本的には包み隠さず全部オープンにするという感覚が必要なのです。
来る6月11日のJAGAT大会2003では、基調講演者に同氏を招き、組織と個人の未来をつなぐ経営革新の重要性について解説いただきます。
2003/05/20 00:00:00