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ドットフォントの雑学(6)─フォント千夜一夜物語」(27)

前回(26回)で、ドットフォントには多様な種類があることを説明したが、ドット文字は新 しいエレメントで構成された書体といえる。

つまりドット構成が粗いグリッド(低ドット)にフォントデザインをすることは点や、 ハライ、トメ、ハネなど、書体がもつ独特な特徴を、アナログフォントやアウトラインフ ォントのように表現ができない。

アウトラインフォントの場合でも、グリッドメッシュ(解像度)が低いと品質は低下す るが、一般的に1000×1000メッシュが普通である。高解像度でも1024×1024メッシュで ある。

このグリッドメッシュが細かいほど曲線部分はアナログに近くなり、書体のエレメント がもつ微妙な表現ができるが、メモリ容量は多くなる。ということは、必要最小限の輪郭 情報でよいわけで、出力品質は出力解像度に依存することになる。

●ドットフォントのデザイン
フォントデザインの基本にはいくつかの要素があるが、その一つは文字を並べて印刷し た場合、紙面の黒さの均一性を維持することが重要になる。つまり字画の多い文字は黒く (濃く)見えるし、少ない文字は薄く(明るく)見える。また太い文字は黒く、細い文字 は明るく見えるからだ。

そこでそれぞれの文字の太さをコントロールして、視覚的に同じように見せるテクニッ クを用いるわけである。これは紙面の明るさの均一感が可読性に通じるからである。(文字 の濃度が均一であると、かえって可読性をそこねるという説もある)

これらのテクニックは、アナログやアウトラインフォント・デザインに用いることはで きても、ドットフォントへの適用には難しさがある。特にグリッドメッシュ(マス目)が 64×64ドット以下では正確なエレメントの表現や太さのコントロールができない。

低ドットフォントは明朝体、角ゴシック体、丸ゴシック体、楷書体などの書体の特徴や、 微妙なエレメントの表現だけでなく、文字の正確な字画をも表現できない、という問題が ある。

つまり画数の多い文字、例えば16ドットや24ドットの「鷹」のように、字画をごまか して文字の視認性を維持しているわけである(図1/図2参照)。


Windowsで「鷹」の字は、24ポイント以上でないと96dpiVGAの画面表示ではつぶれて見 える。これは画面表示にドットフォントを使っていても、低ドットのドットフォントのデ ザインでは字形を正確に表現できていないからだ。

しかしそれでも「鷹」と読めるということは、人間の目が文字の一点一画を認識して判 読するのではなく、イメージで判読しているという証であろう。

複雑な字画で構成される漢字のなかでも、比較的横画が多い文字や「右ハライ」、「左ハ ライ」、「トメ」などが交差した字画構成の文字が多い。使用頻度が高いといわれる、JIS X0208の第1水準だけでも「鷹」「藁」「欝」「霞」「窯」「竃」「驚」などがある。

これらの文字をドット化する場合、16ドットフォントは縦横16等分されたマス目(グ リッド)で構成されている。つまり横画に1ドット使うとしたら、横画は8本しか表現で きないことになるが「鷹」の字は横画10本ある。

したがって16ドットのマス目では、横線だけでも正確に表現できないため、図1のよう に横画を省略したデザインにして、錯視で「鷹」の字に見せているわけである。しかもこ の16ドットフォントは、文字枠(ボディサイズ)は16ドットであるが、字面(レターサ イズ)は15×15ドットで縦横1ドット小さくなっている(つづく)。

フォント千夜一夜物語

印刷100年の変革

DTP玉手箱

2003/06/14 00:00:00


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