今まで、代表的な受注型産業であった印刷業界。発注者の要望にいかに応えるかが最大の課題であった。しかし、「印刷会社の方からも、よりよいものを提案してほしい」という要望がクライアントから出るようになり、受け身の姿勢から、提案型の企業になることが求められるようになってきた。つまり、今までの殻を破って、新しいビジネスモデルを構築していかなければならない時代に突入している―。
1to1マーケティング、CRMという言葉が日本のビジネス界にすっかり定着し、印刷会社においてもCRMシステムを導入しつつあるが、高価なシステムを導入したにも関わらず満足度が今ひとつ高くないといった現状があることを否定できない。それは、マネジメントがシステムに追いついていないからであって、「根本的な組織変革が求められる。1to1は、対話なくしてはなりたたない」と、ワン・トゥ・ワン・マーケティング協議会運営事務局長(ダイヤモンド社データベース事業局長)の和田昌樹氏は分析する。
顧客に納得してもらうにはどうすればいいか、顧客との長いつきあいを持続させるにはどうすればいいか。全ては顧客との対話活動に尽きる。
チラシの印刷を受けた場合、「何故そのチラシを配布するのか、を考えるところからクライアントと一緒に関わっていくのが望ましい」と和田氏。一例として、新しくオープンしたクリーニング店がチラシを作成して近所に配布することになったが、1種類のチラシを作るだけではなく、8種類のチラシを作って配布することにチャレンジした。というのは、店を中心として、住んでいる場所が東西南北、北東、南東、南西、北西と分け、それぞれ住んでいる場所から店にたどり着きやすいように最適な8種類の地図を作り、チラシに印刷したのだ。ちょっとした工夫であるが、顧客の立場にたって顧客のニーズに応じる姿勢がうかがえる。これは、あるワン・トゥ・ワンのコンサルタントが提案したそうだが、そういったことを印刷会社自らが提案できるようになってもいいだろう。
印刷物には何らかのメッセージが載せられている。和田氏は、「投げかけるメッセージを顧客のライフサイクルに合わせて設計することが必要」と言う。発注者だけではなく、印刷会社も一緒になって設計することが望ましい。今までのように、印刷物を受注して待っているだけという考え方は捨てて、「メディア創り」に積極的に関わっていくことが、今、印刷会社に求められている。
また、業界全体のシビアな時代を勝ち抜くには、「印刷会社は何を持って世の中に貢献しているのか」を考えなければならない。具体的には、自社の独自性や文化を書き出して議論し、失敗を含めて検証するプロセスが大切である。全社的に、「何を目的として今後どこへ向かうのか」、「それらがどのように影響しあっているのか」を明確にし、さらには、「社員に対しては正当な評価をあげることが必要」、そして「最終的にはコミュニケーションが大切」と和田氏は力説する。
ITの進化により、メディアがワン・トゥ・ワン化する傾向がますます強くなってくるだろう。顧客との対話を大切にし、コミュニティ作りをすることがこれからのメディアの使命であり、印刷会社にも求められていることなのではないだろうか。
JAGATでは、来る7月16日(水)、シンポジウム「顧客の顔が見えるメディア」―顧客との関係で進化をはじめたメディアとビジネス―を開催します。iMiネット、OKWeb、イーエスブックス、ぱどの代表者、そして最後のパネルディスカッションでは、1to1の第一人者である和田昌樹氏をモデレータにお迎えして、顧客と共に創るメディアのあり方と具体的ビジョンを探ります。皆様のお越しをお待ちしています。
(注)会場が変更になりましたのでご注意ください。
会場:社団法人日本印刷技術協会(東京都杉並区和田1-29-11 TEL03-3384-3111)
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2003/06/23 00:00:00