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Exifと印刷−Exif利用完全マスター−

デジタルカメラの活用が印刷現場でも増えている。写真原稿がスキャナ分解からデジタルカメラへ移行しつつあり,印刷現場での運用におけるポイントは,製版工程に当たるRGB/CMYKデータのハンドリングである。一方で撮影の段階からデジタルデータになっているということから,撮影データそのものにさまざまな情報を付加することも可能になった。それらの情報を活用することで,よりデジタルカメラのメリットを生かした利用も想定される。Exifがその可能性を広げるものと思われる。Exifについて解説する。

Exifって何のため?

デジタルカメラが印刷用画像ソースとして使用されるようになってまだ日は浅い。しかし,今では印刷物にデジタルカメラの画像を見ない日はないほどになってしまった。このデジタルカメラのうちほとんどのコンパクトデジタルカメラ(コンシューマ向けの一般デジカメ)の画像ファイルを規定しているのがExif( Exchangeable image file format)と呼ばれる規格である。
ExifはJEITA(電子情報技術産業協会)の規格で,当初は,前身であるJEIDA(日本電子工業振興協会)によって平成7年10月にVersion1.0が発行され,その後いくどか改良され今日に及んでいる。このExifはデジタルカメラの画像ファイルを扱う上で,見えないところでさまざまに役立っており,印刷用画像ソースとして使用する場合にもExifの仕様は活用可能だ。さらには最新バージョンのExif2.2では新たな強化がなされて印刷用途にも無視できない要素が盛り込まれている。
Exifは元来,PCカードなどの脱着式メモリを備えたデジタルカメラと,その関連機器のための規格である。こういった機器が出回るようになると,機器間,メーカー間での画像ファイルの互換性が問題となってくる。そのカメラ自身では撮影画像が開けても,データを渡したほかのカメラでは読めないといったことや,ファイルビューアでも相手カメラによって画像が読めたり読めなかったりといったことが起きることになる。そのため,このようなことのないよう,使用者の利便性を考えファイル互換性を保つために規定されたのがこのExif規格である。このExif規格策定以降の対応カメラでは,画像ファイルをやり取りしての画像の機器間相互利用が可能になったわけである。

Exifで決められているもの

Exif規格はフォーマット全体の中でも,まず画像ファイルの規定と音声ファイルの規定から成り立ち,画像音声それぞれの互換性について配慮されている。さらに下層のメモリカードなどの記録媒体規格については,Exifでは規定されず,媒体に応じて別規格が存在する。ここでは主に画像ファイル規格について触れることとする。
Exif規格ファイルの特徴としては,1つはファイル中の「タグ」と呼ばれる情報付加部分に撮影情報やファイル情報を記録可能な点である。「タグ」情報には画素数,圧縮モード,カメラの機種名,絞り値,シャッター速度,撮影日時といった各種情報が記録できる。(図1)

この「タグ」の情報を利用することで撮影時の露出条件を撮影にフィードバックしたり,プリント時の画像選択の参考としたり,この情報を用いて画像管理を行ったりとさまざまに活用可能である。
もう1つのExifの大きな特徴にサムネイルの格納がある。サムネイルは本画像を縮小した一覧見出し用の縮小画で,カメラや画像アプリケーションで画像のファイル一覧を高速に行わせるために用いられる。

ExifとTIFFは違う?

Exifに記録されるデータのうち主画像については,次のフォーマットを使用するよう記載されている。 ・RGB 非圧縮データ:Baseline TIFF Rev.6.0 RGB Full Color Images v
・YCbCr 非圧縮データ:TIFF Rev.6.0 Extensions YCbCr Images v
・JPEG 圧縮データ:JPEG Baseline ADCT iv
各データ形式に応じて,既存のフォーマットが割り振られているのが分かる。このうち,デジタルカメラでよく使用されるのは,RGB非圧縮データ(カメラではTIFFと表記)とJPEG圧縮データ(カメラではJPEGと表記)である。
RGB非圧縮データでは,付属情報はTIFF Rev.6.0 で定義されているタグ情報部分とExif用に拡張したプライベートタグ部分に記録する。JPEG圧縮データでは,上記JPEGフォーマットに準じたアプリケーション・マーカーセグメントと呼ばれる部分に付属情報を挿入記録し,TIFF Rev.6.0 で定義されているタグ情報と同じ形式で記述する。ファイル外形をそれぞれTIFF Rev.6.0 vやJPEG Baseline ADCT ivに準じた形に倣うことで,PC上に読み込んだ際に既存のTIFFやJPEGに対応したアプリケーションでそのまま読み込みや表示,再加工が可能になるというメリットが得られることになる。このようにExif規格は新フォーマットでありながら,普及している既存の汎用フォーマットとの互換性が考慮されており,デジタルカメラのファイルの浸透に際しての障壁が低くなるよう配慮されているのである。


さらにサムネイルのデータについても基本構造が定められており,格納場所や記録方式について記述されている。特にサムネイルの記録方式は主画像のデータ構造との関連が決められている。主画像が圧縮データの場合には,サムネイルは圧縮で記録しても非圧縮で記録しても構わないが,主画像が非圧縮データの場合には,サムネイルは非圧縮で記録されている必要がある。これは非圧縮の主画像データの再現装置側において,圧縮画像の伸長に対応していない場合も想定できるからである。

ExifとDCF

Exifに伴ってよく聞く言葉がDCF(Design rule for Camera File system)である。DCFはExif同様にデジタルカメラのファイルフォーマット規格であるかのように言われる場合も多い。しかもDCFはExifの場合に言われたのと同様に,画像ファイルおよび関連ファイルの機器間の交換を一層簡便にすることを目指しているので,両者は混同しやすいと言えるだろう。
しかしExifが各画像ファイル自身の規格であり,運用の自由度が大きくファイル名や周辺のファイル構造は運用例示にとどめているのに対して,DCFではその名のとおりファイルシステム全体の運用規約であり,実際のディレクトリ構造(フォルダ構成),ディレクトリ名,画像ファイル名について規定しているのと同時に,さらに細部の運用規定を加えた運用ルールとしての位置付けである。例えば,サムネイルのサイズは160×120画素と定められ,タグ情報の種類もExifに加えた必須のものが決められている。ファイルもJPEGのみ,色空間もより明確にsRGBのみと制限されている。

このように厳密な互換性の維持を主眼とした基本DCFファイルでは,非圧縮のRGB(TIFF)の画像データやsRGB以外の色空間の画像データは規格に含まれていないことに注意したい。ただし実際の運用面ではDCF拡張画像ファイルなどとして,仕様上の要求からこれらが実装されている場合も多い。
また,かつてCIFF(Camera Image File Format )という規格名をよく聞いたが,これもDCF同様にディレクトリとファイルの構造が記述されていた。そしてDCFはこのCIFFの規定をベースとして策定されている。従ってDCFは,この内容を新たに引き継いで置き換わるべき位置にいることになる。
(以下詳細は本誌へ続く)

『プリンターズサークル8月号』より

2003/07/26 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会