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「ing思想」に基づく経営管理の基本的考え方(要登録)

「ing思想」とは、現JAGAT最高顧問塚田益男氏が、1980年代前半において、来るべきゼロサム社会と第三の波の社会における印刷経営の思想として提唱されたものである。

1980年代前半は経済成長率が鈍化し始め、「ゼロサム」ということが言われ始めた。一方、トフラーの第三の波が話題となった、そのような時期であった。
印刷業界でも高度成長は終って需要が成熟化し、印刷会社の3割が赤字になって小規模企業は減少に向かい始めた。技術面では、プリプレスの技術がレイアウトスキャナなどコンピュータを中心としたものになり、世の中ではFAXがオフィスに入り、ノンインパクトプリンターが普及し、キャプテンシステム等が話題になった。従来の印刷に対する競合相手が意識され始めていた。

いわゆるパラダイムシフトが予感される中で、印刷業界、特に中小印刷企業においては、生産設備を持つことは必要条件ではあるが、それだけで十分ということにはならなくなった。オフ輪やスキャナは有り余るほど設備されたからである。
したがって、「従来のような生産設備あるいは製造機能から発生する売り物だけの印刷会社は生き残れない。生き残りの充分条件として従来からの営業機能にサービス機能を加え、2.5次産業と呼ばれるべき産業にならなければならない。そのとき、サービス業的側面として営業が提供するサービス機能にも付加価値を求めていくべきである」。印刷業界は、最近になってこのことをとっくり理解せざるを得なくなった。

このような認識から生まれた「ing思想」は、印刷価格=原価+利益という式が示す考え方、つまり、印刷価格は原価に利益を上乗せして出すものであるという考え方を否定する。
価格はあくまでも顧客の満足度に応じて決められるべきものであり原価とは直接的関わりがないものである。営業のひとつの重要な役割は、日常的な努力によって顧客の満足度、信頼度を高めて、その価値も含めた価格を顧客に評価してもらうようにすることである。価格とは、「原価+利益」によって算出されるだけの静的なものではなく、営業の努力次第で変わり得るものである。価格は単なる「Price」としてあるのではなく、営業の日常的行動、つまり「ing」の成果を含めて顧客に納得してもらえるように交渉して決めるべきもの、「Pricing」すべきものである。
一方、生産現場は常に生産性向上によって原価低減に努力すべきであり、その努力は価格の高低とは関わりのないものである。原価(cost)は、ひとつの状況下においてある水準にあるが、さまざまな工夫、行動、つまり「ing」によってその水準を下げていくこと(costing)が生産現場の重要な役割である。

印刷企業の利益は、上記のような営業のサービス機能と連動するPricingと生産現場の製造機能として当然なCostingの双方から生み出されるべきものである。
そして、そのような考え方に基づく経営管理手法は、Pricing とCostingの成果を明確に評価できるものでなければない。
具体的には、価格と原価の間に社内仕切価格のような標準の尺度を設け、以下のようにそれぞれの利益を評価する。
  営業部門貢献利益=価格―社内仕切価格―営業部門固定費
  生産部門貢献利益=社内仕切価格―外部購入価値―生産部門固定費
  全社の利益=価格―外部購入価値―固定費
これが、JAGATが推奨するPMPシステム(Profit Management for Printer:印刷業の利益管理システム)の基本である。

MISページ
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2003/07/30 00:00:00


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