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何故、下請けの刷り専業が伸びるのか

最近、刷り専門あるいは印刷会社からの下請け専門の印刷業が伸びている。印刷業界における供給力過剰に対する認識とその対応の変化を背景とした動きだが、今後多様化しつつ発展する印刷産業のひとつの業態となり得る要素を持っているからでもある。

この2年で、中小印刷業界の印刷外注費はそれまでの低下から一転して上昇するとともに、1人当り機械装置額は過去4年間減少が続いている。
バブル崩壊後、伸び悩む売上高の利益への影響を少なくするために、それまで外注していた仕事を内製化する動きが顕著になり、対売上高外注費比率は31%から25%へと6ポイントも低下した。そのような形で平成不況をしのいで来た印刷業界だが、ここ数年は供給力過剰が解消しないばかりか安値受注競争は更に進み、一方で、需要回復の兆しが一向に見えず今後に期待できる根拠も全く見当たらない状況が続いている。したがって、経営の基本的な考え方が、設備投資は更新も含めて必要最低限に押さえ、それでこなせない分は外注で処理していく方向に変化してきた。すでに長い間の受注競争で収益性を低下させてきた印刷業界もやっと過剰な設備競争が自分の首を締めることに気付いたということであろう。

しかし、だからといって、どのような企業でも刷り専門あるいは印刷会社からの下請け専門の印刷会社として伸びていけるわけではない。従来の下請けとは大きく異なり、刷り専門あるいは下請け専門でありながら利益を生み、継続的な事業を可能にする「仕組み」を作り上げことなしに、このような業態での発展的事業継続は不可能である。その仕組みとは、直しをしなくてもよい仕組み、コストを下げる仕組み、生産に柔軟性を持たせる仕組み、さらには顧客が安心して頼める仕組みなどである。

ここ数年での印刷機械の性能向上によって、準備作業時間は10分以内で完了し、数百枚の小ロット印刷ならば1時間で5台程度の仕事をこなすことも充分にできるようになった。 現在の料金体系においては、上記のような生産性で印刷できるのならば、小ロット印刷は 「儲からない」仕事ではなく「儲かる仕事」に変化した。ただし、そのためには、1日に40点〜50点という仕事を集めることが前提条件になる。
そのひとつの手段が「下請け」である。下請けとは、それを専業とする立場から見ると、他の印刷会社が営業機能を果たしてくれるということであり、幅広い商圏から仕事を集める仕掛けである。ただし、ここでも、例えば「納期保証をするための受注条件」といった契約概念を明確にした取引形態を仕組みとして設けておくことが重要である。そのことによって「儲からない下請け」ではなく、「下請け」を儲かる業態にすることができる。 従来からの固定観念を脱して新しいビジネスモデルを創ることによって生まれた「刷り専門」事業は、今後、多様化しつつ発展する印刷産業の中で定着していくと思われる。

JAGAT印刷マーケティング研究会では、来る8月25日、印刷会社の下請け仕事を専門に受注し発展する印刷会社の経営者の方々を講師に迎え「仕組み作りで伸びる印刷会社の事例」と題するセミナーを開催する。

2003/08/18 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会