アウトラインフォントは、大きい文字サイズのビットマップに展開した場合はスムーズで高品位の出力が得られるが、すべてのサイズでみると完全とはいえない。
特に低解像度の出力機器に対し小サイズで出力する場合は、この傾向が顕著に現われる。そこで「ヒンティング」と呼ばれるテクノロジーにより、原字デザインに近い文字品質を維持することが重要になる。
フォントラスタライザがフォントの特徴を参照するときに、「画レベル」あるいは「フォントレベル」でのヒンティングが行われる。このことは第30回で説明したが、もう少し詳しく説明しよう。
漢字・かなのような和文文字には、表記文字のアルファベットに対するヒンティングとは異なるアプローチがある。
基本的には和文文字の「画」の構成は、形が複雑で種類も多い上にいろいろな方向に描かれているので複雑な処理が必要に思われるが、「画」が集まった文字として考えるとすべての「画」は正方形に収まっていることになる。
これに対して欧文文字のアルファベットは単純に見えるが、実際にはフォントアラインメント(文字を並べるための指標)は非常に高度化している。これら2種類の文字体系に関するヒンティング技術の例を説明しよう。
●フォントレベルのヒンティング
複雑な字形をもつ和文の漢字・かなには、欧文文字のようなデザインルールがない。アラインメントについていえば、視覚的な中心揃えというだけである。
ところが、この視覚的中心が文字の並びを左右する「寄り引き(よりひき)」に関係してくる。しかも日本語は縦組みと横組みがあるため、各文字に対して縦用と横用両方の寄り引きを考慮しなければならない。
この寄り引きが可読性に影響を及ぼすことになるが、これはデザイン上のルール化は難しい。したがって低解像度のドットフォントでは、デザイン上の微妙な寄り引きをコントロールできないという悩みがある。つまり縦/横のストロークを正確な位置に設定できないからだ。
アルファベットは、アラインメントに対して独自のルールをもっている。つまりアルファベットすべての文字は、その文字固有の最適な位置にデザインされている。
例えば、キャップハイトライン(大文字の上端部分に接する水平線)や、xハイトライン(小文字のxの上端部分を通る線。小文字のa,c,oなどはこの高さに揃えられる)。
そしてベースライン(大文字の下端を揃える線。小文字もこの線上に揃えられる)、およびディセンダーライン(小文字のうちg,j,p,qなどの文字の下端を示す線)など、この水平基準線に対して文字の位置を整える必要がある。
ここで発生してくる問題が「オーバーシュート」の補正である。オーバーシュートとは視覚的な補正のこと、つまり錯視を利用して文字の高さを揃える手法のことである(図1.参照)。
例えばキャップハイトラインの場合には、上側と下側の部分が丸い文字(図ではOの文字)は、同じ高さでデザインすると目の錯覚で、上側と下側が平らな文字(図ではTの文字)に比して天地が小さく見える。
そこでオーバーシュート処理を施してデザインし、背を高くして視覚的にバランスを整える。しかしこのようなフォントをラスタライズした場合、低解像度の出力では微妙なオーバーシュート部分は表現できない。したがって大きさが揃って見えないことになる(つづく)。
■DTP玉手箱■
2003/08/16 00:00:00