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実運用が始まったJMPAカラー

トヨタ自動車は,2003年5月掲載分の新規原稿から,JMPAカラーワークフローに則ったデジタル校了のワークフローに切り換えている。これは日本におけるCMS定着に向けた大きなトリガーとなると思われる。
JMPAカラーとは,(社)日本雑誌協会(JMPA)が策定した雑誌広告における基準カラーである。(社)日本雑誌協会の中に設置された電子送稿研究会というワーキンググループ(WG)の中で審議され、2001年のWG主催の定例セミナーにおいて提案された。
現在、ほとんどの広告制作作業はデジタル化されているが、4色分版フィルムでの入稿形態は根強く残っており、広告会社、出版社、印刷会社間で何度も校正刷りがやり取りされている。デジタルデータでの入稿も増えてはいるが、校正刷りのやり取りは同様で、制作のデジタル化の効果が十分に発揮されているとは言えない状況にある。
従来の雑誌広告の入稿締切日は、色校正のやり取りを考慮にいれて発売日の4週間前と設定されており、広告の即時性・速報性において新聞広告に大きく劣っている。そこで、雑誌広告の媒体価値を高めるためにも広告掲載にかかるコストの削減と掲載までの期間短縮が大きな課題となっている。解決手段として期待されているのがデジタル送稿であり、ネックとなっているのが色校正といえる。JMPAカラーは、DDCP(色校正)の基準色として提案されており、この基準を色の確認が必要なさまざまプレイヤー、すなわち広告主、広告会社、制作プロダクション、製版会社、出版社、印刷会社間で共有することにより、色校正ワークフローの飛躍的な改善が期待できる。具体的には、例えば広告会社は制作プロダクションからデジタルデータと色見本を受け取って、データを手元のJMPAカラーに準拠したプリンタから出力して色見本とズレがないことを確認し、出版社にデジタルデータと色見本を送る。出版社でも同様にJMPAカラーに準拠したプリンタから出力し色を確認し、印刷会社にデジタルデータと色見本を送る。印刷会社ではJMPAカラーに準拠したDDCPから出力し、色見本と比較確認したうえで、DDCPの出力物を色見本として印刷するという運用モデルとなる。
この運用により広告主は、印刷会社からの校正刷りを見なくても、上流工程で最終印刷品質の確認ができる。こうして校正刷りレスの一方通行のワークフローを実現できる。
このワークフローが成立する前提条件として次の二つがある。

1.JMPAカラーが無理なく印刷できる色再現範囲を持っていること
2.JMPAカラー準拠のカラープリンタが利用できること

前者については,JMPAカラーを策定したWGには,大日本印刷,凸版印刷,共同印刷の大手三社の印刷会社が参加しており,オフセット輪転印刷でコート紙をターゲットにした三社のDDCP基準の平均値(一次色・二次色L*a*b*)と三社が妥当と考えたベタ濃度値がJMPAカラーの策定基準となっており,印刷適性が十分に考慮されている。
後者については,JMPAカラー対応をうたったカラープリンタがいくつも出てきている。日本ヒューレット・パッカードは大判インクジェットプリンタ「hp designjet(デザインジェット)シリーズ」が対応しており,対応ICCプロファイルを自社のホームページでも公開している。また沖データの「MICROLINE 9500PS-F/PS」はJMPAカラーに対応するとともにDIC標準色の認定も取得しており,プルーフ対応を強めている。
またJMPAカラー準拠のプリンタであってもプリンタには個体差や経時変化があるので,きちんとキャリブレーションされていない状態で出力されては色見本として問題がある。そこで,プルーフ色がJMPAカラーに適合しているかどうかを判定するシステムとして電通テックから「D-ColorsS Check(ディーカラーズ チェック)」というシステムが提案されている。これはDTPによるデータの制作時い,専用プラグインによりレイアウトの欄外に色管理用のパッチとそのパッチパターンを管理するバーコードを自動的に配置。そのデータをJMPAカラー準拠の出力機で出力し,分光光度計を用いて色管理用パッチを測定。同時にバーコードリーダーにより,色評価判定用の端末にパッチパターンを認識,測定させることで,JMPAカラー基準への適合を色評価合否判定シートとして出力する。
それから,Adobe Acrobat6.0 Professionalには,ジャパンカラーのICCプロファイル2種に加えて,JapanWeb CoatedというJMPAカラーをベースにアドビが開発したICCプロファイルが搭載されており,より手軽にJMPAカラーをシミュレーションする環境が整いつつある。
(出典:プリンターズサークル 2003年9月号より)

■関連セミナー:
9月16日(火)テキスト&グラフィックス研究会techセミナー広告制作における色管理とワークフロー

2003/09/01 00:00:00


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