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DTPはOS Xと,特化システムの2系列に

■フォント

2003年8月の時点で,主要フォントベンダーのほとんどがOpenType製品を発売している。
OpenTypeの最も重要な意義とは,MacとWindowsで同じ文字セットのフォントが使えるため,クロスプラットフォームを実現できることと,PostScriptフォントと違ってプリンタフォントを必要としないホストベースフォントということである。国内でのDTPのトラブルの多くが,OS・文字セットの違いやプリンタフォントの有無に起因するものであったことから,いづれはOpenTypeフォント中心に移行するだろう。

OpenTypeの製品化と同時に採用された拡張文字セットは,約9,600文字からなるAdobe-Japan 1-3(Std)と,約15,500文字からなるAdobe-Japan 1-4(Pro)がある。どちらの文字セットを重視しているかは,各フォントベンダーごとに異なっている。概して,文字数の多いPro版は,本文用フォントに限定して製品化しているケースが多く,事実上の標準文字セットは,その名のとおりStd版となる。また,2002年には,アドビからさらに拡張された文字セットがAdobe-Japan 1-5として発表された。Adobe-Japan 1-5は,アップルがMacOSで採用しているアップルパブリッシンググリフセットにJIS X0213で追加されたものを含めた約20,000字の文字セットである。しかし,アドビ社を始めフォントベンダーが積極的に製品化するかは不明である。

OpenTypeで採用された異体字の機能を利用できるアプリケーションは,現時点ではアドビのInDesignとエルゴソフトのEGWORD13(Mac版のみ)である。

前述の主要フォントベンダーが発売したOpenType製品は,既存フォントをOpenType化したもので,新フォントではない。新フォントとしては,ヒラギノのデザインで知られる字游工房の本文用フォント「游明朝体R」や,デザイン誌AXISの専用フォントから生まれたAXISフォント(ゴシック,7ウェイト)が,各々OpenTypeとして発売されている。

それ以外のフォント関連のサービスとして,フォントワークスジャパンは,年間契約により外字を含む全書体の提供とサポートをおこなう独自のプログラムを開始している。

■レイアウトソフト

Adobe InDesign 2.0は,高度な日本語組版機能を持つことから出版印刷の分野では好意的に受け取られているが,商業印刷やその他の分野ではそれほど利用されてはいないようだ。圧倒的な多数派は依然,QuarkXPressを使用しているのが実状である。QuarkXPressは,英語版は新たに6.0が発売され,MAC OSXとWindows2000以上に対応した。日本語版6.0のアナウンスはまだないが,OSXユーザの期待は大きい。

アドビからは,FrameMaker7.0も販売されている。構造化されたXML文書の編集制作と印刷の機能に優れており,海外との文書交換の多い大手メーカーのマニュアルなど,企業内出版物を対象に広く利用されている。

国内メーカーでは,キヤノンソリューションズのEDICOLOR(Mac/Windows)の最新バージョン6.0が発売されており,出版印刷分野や自治体広報誌の分野で定評がある。

専用システムと言われる分野では,出版印刷向けではキヤノンソリューションズのEdian WingやモリサワのMC-B2,リョービのEP-X,モトヤのPROX ELWIN XVなどがあり,大手−中堅印刷会社を中心に導入されている。方正のFounderFit3.0はチラシ向けと情報誌向けに販売されており,データベースと連動したシステム構築がおこなわれている。FounderFitは印刷制作会社の他に,発注元である流通業での導入も多い。シンプルプロダクツのWAVEシリーズは,情報誌や広告の自動組版レイアウトには定評がある。大日本スクリーンのAVANASシリーズにはページ物向け,チラシ向け,カタログ向けなど製品分野に特化した製品が発売されている。

■XML文書とレイアウトソフトの連動

近年,専用システムの多くやDTPソフトにおいても,XML文書との連携を重視した機能拡張を進めている。もはや印刷物とWebなど電子メディアの双方を対象にした制作にはXMLデータを中心にしたシステム構築が不可欠であり,様々な形態でのXMLサポートがトライされている。

シンプルプロダクツは,XML Automagic(WAVE版)for WAVEと,キヤノンソリューションズと共同開発したXML Automagic with EDICOLORを販売している。これらはXMLデータベースから自動組版をおこなうシステムで,WAVEまたはEDICOLORでの再編集も可能となっている。

モリサワのMDSは,XML文書からの自動組版やWebパブリッシングをおこなう各種のモジュールからなる統合ソリューションで,外字もサポート可能となっている。また,大日本スクリーンのAVANAS BookStudioも,XML文書から自動組版編集をおこなう機能を装備している。これらは用語集や辞典類,法令集などのXML化で実績が多いと言う。

■バリアブルプリント用のオーサリングソフトウェア

デジタル印刷で大きく期待される分野として,バリアブル印刷がある。バリアブル印刷のためのデータ生成には,専用のオーサリングソフトウェアが必要となる。サカタインクスは,XMPie(エックスエムパイ)社のパーソナルエフェクトを新たに発売した。データベースとデザインの要素を,設定したロジック(バリアブルデータを生成するルール)に従って,ダイナミックにバリアブルドキュメントを作成する。また,印刷物,e-mail,Webなど,メディア・目的に応じて,個々に最適なデザインを提供することができる。

■Acrobat6.0

AdobeからPDFを生成するツール,Acrobatの最新バージョン6.0が発売された。このバージョンから,一般企業向け製品のStandardと,エンジニアリング,クリエイティブ・出版印刷向け製品のProfessionalが発売されている。

Acrobat Professionalでは,新たにPDF/Xフォーマット対応,分版・透明の設定・プレビュー機能,内蔵プリフライト機能などが追加されている。PDF/Xは米国の広告業界を中心に利用が広まっているフォーマットで,データ入稿の信頼性向上と簡便性のためにPDFの機能を制限したものである。たとえば,PDF/X-1aでは,フォント埋め込みが必須で,CMYKカラーしか許されない。そのため,PDF/X-1aであればフォントの有無や色空間の違いによる入稿トラブルは起り得ない。このように,Acrobat6.0の登場により,PDF入稿が増加する可能性もある。また,これらの新機能により,PDFワークフローやリモートプルーフの実現が,より一層現実的になったと言えよう。

■プリンタの動向

出力分野では,多種のプリンタが販売されている。大サイズ,高速,高画質化という傾向も昨年までと同様だが,とくに最近は大判インクジェットプリンタの台頭が注目されていて,あらゆる分野で利用されるようになった。印刷関連では,カラーマネージメントを行なって色校正に使ったり,リモートプルーフ環境での校正に使うことが普及しつつある。また,サインディスプレイ分野でも,熱転写方式とならんでインクジェットプリンタが主流になっている。
一方,ファックスやコピー機能,スキャナ・プリンタ機能を併せ持つデジタル複合機(モノクロ・カラー)は,一般オフィス向けに普及が急速に進んでいる。

■出典:JAGAT 発行「2003-2004 機材インデックス」工程別・印刷関連優秀機材総覧

「グラフィックアーツ機材インデックス」の内容

2003/09/11 00:00:00


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