重要な労務面の大幅な発想転換と改革
サービス化のために教育が必要であることはいうまでもないが,ポイントは,ディレクター,コーディネータあるいはプランナーと呼ばれるような核になる人材の確保,育成である。このような人たちには創造力と社内外の多様な専門家をまとめながら仕事を進めていくことができる能力が求められるが,そのような人材がそれほど多くいるわけではない。
さらに,内部に働く人間の意識の変化を組織のソフト化の中で考えると,今までは,日々の糧を求めることで精一杯だったのが,経済的な基盤が確立され,次第にやりがいや達成感というものを求めるようになるという変化がある。ただし,全体が一つの方向に行くということではなく,労働に対する価値観が多様化するということだ。
そこで重要なのが労務面における大幅な発想転換と改革である。管理職が偉くて,管理職になるのが目標であり賃金体系も管理職にならなければ上がらないという体制は不適切となり,専門家と職制の区分の考え方が必要になる。サービス化では,多様な専門家集団が仕事に関わることになるから,画一的な評価・処遇ではなく柔軟な体系への革新が必要である。雇用制度についても,正社員とパートといった制度だけでなく,専門家に対しては契約社員,出来高制などの雇用制度の導入も必要だろう。
「運営力」と「戦略力」のバランス
組織の力には「運営力」と「戦略力」の2つがある。運営力とは基本的ニーズに対応できる機能であり,その内容は図2のようなものである。印刷業に対する基本的ニーズとは,印刷物の製造機能である。運営力は,同じ価値のものをより効率的に達成する力である。一方,戦略力はより挑戦的で創造的な機能を果たし,新しい価値の創造を達成する力である。サービス化にはこの力が大きな働きをする。かといって,運営力が不要というわけではない。
組織は環境に生かされて初めて機能できるのであって,すべてを満たそうとすればすべてを失うことにもなる。そこに意思決定の重要さがあり,優先順位付けの難しさが生まれる。そこで企業規模や専門分野,さらには発展段階によって,順位付けをした運営力と戦略力の強化が必要になる。
企画提案型営業を目指す企業は,改めて目標とする成果,想定する企画提案の内容,レベルを明確にし,その実現のためにどのような内部の体質転換が必要なのかを見直してみてはどうだろうか。
(前半部分⇒営業マン頼みでどこまで通じるか)
『JAGAT info』9月号より
関連イベント情報 経営シンポジウム2003:経営戦略にみあった営業改革とは
2003/10/02 00:00:00