元来が受注産業であった印刷産業では、顧客から電話がかかってきてから出かけていく営業を当たり前だと思っている人がいる。しかしこれでは、「何か仕事はありませんか」という御用聞き営業にもなっていない状態であり、印刷側の供給過剰状態になった今日では仕事が減るのは必然である。
だからといって、営業マンに気合を入れるだけの精神論には限界がある。無闇に仕事を集めても、実は利益は出ていなかったということが多くなったからだ。つまりもっと賢い営業にしなければならない。どのような営業が模索されているかについては、「経営戦略に見合った営業改革とは」のアンケートをご覧いただきたい。この結果からも従来の営業スタイルでは将来はないということを多くの印刷会社が感じていることがわかる。
では営業のあるべき姿とはどのようなものなのだろうか? 顧客満足と企業業績の橋渡しをする全人格的な営業は、ほっておいて出来上がるものではなく、全社的な取り組みと、能力のあるセールスマネージャーによる訓練によって育てられるものである。 経営シンポジウム2003の基調講演を行う廣田達衛氏は、「営業力を高める販売の計画とプロセス管理」(中央経済社)で次のように述べている。
『営業パーソンは育つものではなく育てるものである。その前提として、セールスに対する全社の理解が必要である。』そのうえで教育訓練のあり方のもとで、とくにOff-JT(職場外訓練)とOJT(職場内訓練)の連携に基づいて、現場に密着した教育訓練とともにその内容を仕事を通して身につけるための指導が大切になる。その際成長の過程に会わせた育成・指導をするが、その要となる人はセールスマネージャーである。
■営業パーソンは企業を代表して顧客と接する仕事を行っている。顧客は営業パーソンを通して企業の評価を行うことになる。それだけに、営業パーソンが単に商品を売る存在だけでなく、顧客志向に立ったセールのもとで顧客の満足と企業のイメージ向上をつなげる活動を行うことが営業パーソンに要求される。そのことをふまえて、営業パーソンをあるべき姿に向けて育成・指導することが企業にとって欠かせないことになってくる。
企業内教育訓練の目的は、直接的には、現在と将来の職務を遂行するのに必要な能力の開発と向上を図ることにある。能力という場合、これは知識・技術と態度・心構えとしてとらえることができる。
営業パーソンにとっての態度・心構えは仕事に向かう姿勢だけでなく、その人の人柄にも関係してくる。これは顧客からの信頼を形成するための要素として欠かせない。その意味では、営業パーソンの育成・指導には、全人格的なことも必要になってくる。
営業パーソンがよりよく育成・指導されることは、営業パーソンが顧客からの信頼を得て、結果としてよりよい販売成果の実現をもたらすことにつながる。
このことは企業によい販売実績をもたらすだけでなく、顧客に満足の提供をできることになる。それに、営業パーソンが顧客の満足と企業の業績の橋渡しを実現できたことに自信をもち、よりよき企業人として社会人として育つことになる。それは結果として社会の財産となるのである。
■営業パーソンはかつては育つものとしてとらえられていた。しかし、セールス戦略のもとで管理販売を進めるなかで、多くの営業パーソンを必要とするようになり、育つものから育てるものへと変わってきた。
営業パーソンの育成・指導にあたっては、まず企業内訓練のあり方を確認することが必要である。とくに大切なのは、セールスに対する全社的な理解とバックアップである。
教育訓練の内容はOFF-JTで学んだのち、それを職務を遂行する過程で身につける。このときのポイントがOJTとなり、教育訓練内容の職場での適用管理と指導になる。その意味で、OJTの進め方が教育訓練内容の定着のポイントになる。それだけに、OFF-JTとOJTの連係が大切になる。育成のポイントがOJTにあたることから、その役割を果たすセールスマネージャーがよりよいセールストレーナーの役を果たすことが大切になる。
育成にあたっては、営業パーソンの成長の過程に合わせて指導する。指導にあたっては、指示訪問・観察指導、同行訪問指導、営業日報による個別ミーティング指導を中心に、グループ指導として、朝礼会・勉強会による指導、ロールプレイング学習をとり入れる。とくに、ロールプレイング学習では商品説明の学習が大切になる。営業パーソンがよく育つもいびつに育つもセールスマネジャーにかかっていることを心に留めることが必要である。
2003/10/15 00:00:00