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新たな価値をもたらすDMビジネス

DMは今後も堅調?

ダイレクトメール(DM)やチラシなどの販売促進印刷物は,いろいろな印刷需要の中でも量的変動が比較的少なく堅調で,さらに経済の動きに先導して上向きになるという性質がある。需要が堅調な理由の一つは,必要数量が最初から予測できるからであろう。ダイレクトメールやチラシは郵送料や折り込み料などの経費が大きいために,もともと必要数に絞って企画されているので,なかなか減らすことができないということもあろう。
また,この分野は販促計画から配布後や販売後のフィードバックまでのマーケティング手法も経験的な積み重ねがあるので,一定の効果が読めて,それも予算化されやすい理由になっている。 新聞雑誌などのマスメディアは広告不況の影響を受けてマイナス成長を続けているが,DMは過去10年間で総広告費に占める比重が倍増したように,その後に現われたインターネットを除いて最も成長した広告メディアでもある。
しかし,インターネットは販売促進を考える基盤を大きく変えてしまった。CRM(顧客関係管理とか顧客対応力)が叫ばれるようになったのは,ダイレクトマーケティングの方法が従来の紙のDMだけではなく,Webや携帯電話などオンラインの方法が縦横に使えるようになったIT時代だからである。
DMを出して電話やハガキでレスポンスをもらう方法に比べて,オンラインメディアではリアルタイムにレスポンスが得られるので,マスカスタマイズでアピールして,そのリアクションから本当にワンtoワンもできるようになる。特にメールとWebの連携が進んでおり,DMだけでは不可能であったタイミングを見計らった販売促進が管理できるようになった。
かつてはDMと言えば,外部リストを使って同一内容のチラシを大量に発送するといった,マス広告のような方式が主流であった。しかし,その場合のレスポンス率は,メールなどと連動した販売促進に比べ,DMだけではコストの割に効果が出ないとさえ言われてしまう。
さらに単に大量にDMを出す方法は,ジャンクメールと見なされて環境負荷の面からの批判や,個人情報の好ましくない利用として社会的な批判の対象にもなりかねない。しかしIT化によって,データベースで適切に個人情報を管理して不要な摩擦を避け,送り届ける内容もバリアブルプリントによって対象にフィットするようにし,また同封物もメーリングマシンで選択的にコントロールして必要ないものをカットするような方法ができつつある。
企業が顧客満足(CS)を指向すれば,必然的にダイレクトマーケティングが重要になる。今まででもDMを出す時には,対象を絞るのに男女・世代・地域・購買金額等々の属性を処理していた。このような属性で顧客をグループ分けして,グループごとに別の案内を送るのがマスカスタマイズであって,そういったDMを自動で作成する「パーソナル」や「バリアブル」のプリントシステムが利用され始めている。
これらも一般に「ワンtoワン」と呼ぶが,まだ実際には個人ごとに内容が異なるのは取引明細などトランザクション用のダイレクトメールだけで,一般には「ワンtoワン」までは至っていない。今後もダイレクトメールがコミュニケーションの重要な手段として育っていくためには,データベースやオンラインマーケティングなり,オンライン販売と連携して十分な役割を果たすものにしていかなければならない。

バリューチェーンの中のDM

データベースやバリアブルプリントの設備があるからといって,やみくもにワンtoワンの努力をすることよりも,ダイレクトマーケティングの全体を考えることのほうが重要である。幸いDMの世界は歴史も古く冒頭のようにモデル化が行いやすい。
ただし,この分野もITで大きく組み替えられつつある。販促計画は顧客管理と密接に連動してCRMという分野でくくられるようになってきたし,表現媒体も印刷以外にWebや携帯電話などとのクロスメディアをして,フィードバックやCRMと強く結び付くようになってきた。配送は雑誌や郵便や新聞折り込みチラシだけでなく,宅配便やポスティング,フリーペーパーなどのピックアップ,印刷物の管理あるいはPODのバリアブルプリントなど実に関連業務が多様化している。
これらの手段をミックスして最大の効果を出すことは1社ではできず,それぞれ関連した業者が協力してクライアントおよびそのエンドユーザのためのコミュニケーションシステムを作り上げなければならない。
つまりバリューチェーンとして,顧客管理からダイレクトマーケティング・媒体計画・デジタルメディアでの顧客とのダイレクトなコミュニケーション,多媒体の配布のコントロールを販促計画の中で一貫してコントロールできるように,関連業者がチームを組む必要が出てきたのである。
日本では日本郵政公社が民営化に向けて法人向けの営業活動にテコ入れしているが,その中では,DMに関して企画面から提案し,郵送料金までネゴシエーションするとか,既存のデータベースをDMに活用する提案など,従来のDM関連の民間業者が行っていたことと,ある意味ではバッティングするようなことも行われている。
しかし,日本郵政公社が民営化に向けて進む中で,逆に民間と手を組んで共同で企画提案をすることも起こりつつある。そのような従来にはない大きな連携が可能な時代であるから,従来の印刷のノウハウがあるところは,さらにダイレクトマーケティングを学び,その中で紙のDMやバリアブルプリント,あるいはクロスメディアの位置付けを考えて,新たなビジネスプランを立てることになる。

フルフィルメントから逆算する印刷ニーズ

ダイレクトマーケティングは潜在顧客掘り起こしのキャンペーンや,そこで得たデータの入力,通販であれば商品の在庫管理や発送,通販でなくても販促物の在庫管理や発送,販売との結び付きの追跡,顧客へのアフターサービス等々のルーチンワークが多い。これらはフルフィルメントと呼ばれる業務である。

今日では特に人件費の面でムダができなくなっているので,会社の業務はコアコンピタンスに絞り込んで経営をスリム化する。例えば,受注の季節変動に対して業務がパンクしやすくなりフレキシビリティがなくなる。
お歳暮など受注が集中する時は受け付け業務のキャパシティを高めなければならないが,それはオペレータ人数だけでなくPC台数,通信回線やサーバ能力,また倉庫の手立て,発送作業の集中化などに対策を立てなければ,需要が高まった時にサービスが低下することになってしまう。
とりわけ経営のスリム化という意味ではEC化が効果があるにもかかわらず,EC化によってB2Bの世界でも引き合いから受注までの段階が効率化してしまうと,フルフィルメントの遅さとかバックヤード処理の弱さが客先にもよく見えるようなるので,フルフィルメントのノウハウの蓄積があるところがプロセスの改善,それに必要なITインフラの導入,管理のスキル,人の教育などをしてフルフィルメントの専門業者となって,水平にノウハウを展開している。
資料請求の処理やDMもこのフルフィルメントの一環の業務である。印刷産業も書籍・雑誌・DMやカタログ印刷物などで,その送り先の管理と合わせて請け負う例は見られる。今後も印刷会社がフルフィルメントサ−ビスを伸ばすとか,ほかのフルフィルメント業者に印刷会社が納品をするような業務交流が増えていき,上記以外のさまざまな印刷物もフルフィルメントの業務の対象になっていくであろう。
そのきっかけとなりそうなのはオンデマンド印刷である。特にバリアブルプリントをするとなると,封筒と内容物を別の会社が扱うような非効率をなくすことができる。現在は封筒に何点もの印刷物を同封する作業があると,大変人手が掛かるとか,個々の印刷物の在庫管理も複雑になってしまい,いくら印刷コストを抑えてもバリューチェーン全体ではボトルネックになってしまう。
従来は同封の機械化を考えていたが,高速でカラーのバリアブルプリントが可能になると,ワンtoワンでの内容の差し替えで同封と同じようなことができ,タイムリーな販促とともに大きな合理化になると期待されている。だからDMは最初からフルフィルメントを含めたビジネスモデルとして提案されるようになるだろう。
このようにDMビジネスの今後は,クロスメディア展開とフルフィルメントが絡み合って,CRMの下に進化していこうとしている。
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JAGATが毎年行っているPAGEは,近年プリプレスだけでなく,ITソリューション・パートナーシップコーナーの拡大,さらにXMLやPOD,MISなどのZONEに分けた深耕を行ってきた。2004年は日本郵政公社を主体とするポスタルフォーラムの同時開催によって,従来のITのツールや部分的ソリューションだけでなく,大口法人ユーザに直接に販促のソリューションを訴えるイベントへと変化する。
ポスタルフォーラムとPAGEとを合わせることで,CRMから,制作,クロスメディア,デリバリ,フルフィルメントまでを一貫したソリューションとして考えることができるからである。

(『プリンターズサークル1月号』より)

2004/01/07 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会