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DMは経費ではない,投資である

日本郵政公社は,JAGAT,日本ダイレクト・メール協会,日本メーリングサービス協会と協力し,郵便を活用したビジネスソリューションを広く提案するビジネスショー「ポスタルフォーラム2004」を2月4〜6日,サンシャインシティコンベンションセンターTOKYOで,JAGAT主催の「PAGE2004」と同時開催する。
『JAGAT info』2003年12月号特別企画「郵便のフレキシビリティとDMの可能性」では,日本郵政公社に,郵政ビジネスの今後の方向性,ポスタルフォーラムの狙い,DMの可能性などを伺った。今回は,日本ダイレクト・メール協会の事務局長 保坂正和氏に,関連業界の連携を築いていくために同協会が果たしてきた役割,最近のDMを巡る動向など伺った。

DMの健全な発展と情報提供の活発化を目指す
日本ダイレクト・メール協会(日本DM協会)は,1984年6月に総務省(当時は郵政省)所管の社団法人として発足した。設立の目的は,「ダイレクト・メールに関する調査研究,普及,啓発等を通じて,ダイレクト・メールの健全な発展および情報提供の活発化を図り,国民の豊かな暮らしに奉仕する」ことを目指している。日本郵政公社の発足,個人情報保護法の成立など,DMを取り巻く環境が大きく変化している中で,これらの環境整備にさらに注力し,DMの需要拡大を図っている。
会員(現在239社)には,クレジットカード会社や通信販売会社といったDMを送付する企業のほか,広告代理店,印刷会社,発送代行業,リスト業,封筒製造業,メーリング機器販売業など,DMに関連するさまざまな業種業態の企業・団体で構成されている。
主な事業活動としては,日本郵政公社との共催により,毎年「全日本DM大賞コンテスト」を実施している。また,各種セミナーおよび「DM制作教室」などの開講,『DM年鑑』の発行,各種調査研究などを行っている。さらに,1998年よりMPS(DM受取休止登録サービス)を開始し,DMを受け取りたくない生活者の申し出を一括して受け付け,DM送付に関連する企業(有料登録制)に提供し,DMを休止させるサービスを行っている。

特性を生かし補完し合ってさらに伸びるDM
2003年の「第17回全日本DM大賞」では4468点の応募作品から92点が入賞し,『DM年鑑2003』に掲載されている。上位入賞作4点は,単なるフラットメールではなく,受け手に大きなインパクトを与える工夫が凝らされている。
DMの最近の傾向としては,費用面の制約が大きく,封書よりもハガキ,定形外よりも定形が多くなっているという。しかし,レスポンスを高めるためには,多少コストがアップしても,デザインや印刷加工での工夫が必要である。既成概念にとらわれない新しい提案が,印刷会社や広告代理店に常に求められているのである。
今秋の「第18回DM制作教室」にも印刷会社から多く参加していたが,約80点の課題作品から27点が入賞し,最優秀賞には「特にコピーが秀逸」な共同印刷の吉丸滋美氏の作品が選ばれた。また今回新設された「DMアドバイザー認証制度」により,79名のDMアドバイザーが誕生した。
2002年度の総引受郵便物数は261億8808万通,広告郵便物(DM)は41億1917万通で,日本の郵便の15.7%がDMで利用されていることになる。対前年比では2.4%減となっているが,中期的に見ると広告郵便物はこの10年間で1.6倍に増え,郵便物全体の伸びを大きく上回っている。
電通の「日本の広告費」によれば,2002年度の総広告費5兆7032億円に占めるDMの割合は6.1%と,テレビ,新聞,折り込み,雑誌に次いで5位となっている。ただし,DMは郵便料のみが計上されていることから,コンテンツ作成費などを加えると,3478億円という数字の2倍程度と推測される。
不況下で企業の出費が控えられる中,DMが堅調な伸びを示しているのは,費用対効果の有効性が評価されているからだろう。レスポンスを把握しやすく,その結果を受けて次のDMで変更・修正をすることも容易である。
テレビや新聞などのマス媒体は訴求効果は大きいが,「百人百色の時代」にあっては,その情報を望んでいる人に深い話ができない。専門雑誌では発行部数が限られるが,DMなら不特定多数に向けた薄まった情報ではなくて,受け手のニーズに合致した情報提供が可能になる。特に最近は説明の必要な商品が増えて,実演販売やテレビショッピングが注目を集めているが,DMにも同じような効果が期待できる。また,DMとEメールのどちらが有効かという問題ではなく,コミュニケーション手段として補完し合うものである。DMの特性を生かし,ほかのメディアと補完し合うことで,DMはさらに有望な広告手段となるだろう。

DM拡大のために郵便サービス改善を提言
日本のDMがさらに伸びることを裏付けるデータとして,年間国民1人当たりのDM受領通数の各国比較がある。日本44通,ヨーロッパ74通,アメリカ329通と,アメリカが日本の約7.5倍,ヨーロッパは約1.7倍となっている。各国の郵便事情や国民性などの違いを考えると一概にアメリカ並みに拡大するとは言い切れないが,まだまだ日本のDMは拡大途上にあると言えるだろう。
日本の郵便料金は高いと言われるが,日本DM協会では,郵便サービス改善に対する提言を行ってきた。大量に出す郵便物を安くという考えから,広告郵便物の場合,バーコード割引きと合わせて最大で48%割引きを実現している。
休眠顧客を起こすツールとしてDMは非常に有効である。割引制度を利用することで,同じ予算でDMの発送部数を拡大できれば,購買履歴のさらなる活用が可能になる。
日本DM協会には郵便の現状に対する不満も寄せられるが,利用環境を改善するために実現可能なものは積極的に提言している。例えば,バーコード付き郵便物の割引条件を示した『定形郵便物・はがき作成のガイドライン』には,圧着はがきのはく離強度,郵便物の表面の色,ミシン目入り封筒のミシン目のピッチまで適合条件が記載されている。非常に細かい規定のようだが,バーコードによる機械処理条件として,郵政側の大幅な譲歩を引き出してまとめられたものだ。
7桁の新郵便番号制になって,機械による仕分けの回数が増えたことで,窓付き封筒やビニール封筒,圧着はがきなどの破損が急増した。個人情報が入っている圧着はがきなどの破損は,送り手の信用問題にまで発展しかねない。そこで,DMを最大限に利用するために生み出されてきた新しい郵便物を,機械処理に適さないと排除するのではなく,適正な取り扱いが可能な着地点を見いだすために努力した結果が先のガイドラインとなった。

DM戦略を考えよう
個人情報保護法の成立を受けて,1998年9月には「DMに関する個人情報保護ガイドライン」を作成し,日本DM協会のホームぺージ(http://www.jdma.or.jp/)でも公開し,消費者のプライバシーを保護し,送り手と受け手の双方に利益をもたらすDMの有効性を存続させることを目指している。
広告の中でもレスポンスが明確なDMは経費ではなく,投資と捉えることができる。つまり,自社の経営戦略・事業計画の一環としてDM戦略を考えることで成果を上げることができるだろう。
日本郵政公社になってから初めての開催となる「ポスタルフォーラム」は,商談の場としての色彩を鮮明に打ち出していること,さらに「PAGE2004」との同時開催であることで,1+1以上の相乗効果が期待できるだろう。(吉村マチ子)

JAGAT info 2003年12月号より

2004/01/30 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会