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XMLが可能にする情報の有効活用

XMLは柔軟性に優れていて,リアルタイム処理が可能であり,オープン性とインターネットとの相性の良さから,文書管理やB2Bのためのソリューションに適している。急速に利用が進むXMLをベースにしたドキュメント処理が注目されている。
今回は,XMLとデータベースを活用したデジタルドキュメントサービスに取り組んでいるエクスイズム取締役徳江一義氏に,創業1年を迎える同社の意気込みを伺った。

XML化,自動組版,印刷媒体制作までを連携
エクスイズム(東京・武蔵野市)の前身はアンテナハウスXMLサービス準備室で,法人化に際し,印刷を本業とする,ニシカワ,セザックスが資本参加し2003年3月に創業された。代表には,アンテナハウスの小林徳滋氏が就任している。印刷会社2社の資本が入ったことで,多様な媒体への対応が可能になったことも強みとしている。
主なサービス内容は,(1)Webアプリケーション開発,データベースアプリケーション開発,(2)XMLによる自動組版,(3)OCRによるテキストデータ作成,XMLマークアップ,(4)XSLTスタイルシート開発,XMLタグセット設計,(5)XML導入コンサルティングである。
XML化,自動組版,印刷媒体制作までのノウハウの連携を実現することが可能である。そのためのツール開発からシステム設計開発,データ加工,組版制作,媒体印刷まで請け負っている。
社名のエクスイズム(eXism)は,XMLのeXと主義主張を意味するismからの造語である。「将来,世界中の情報がXMLで統一されて,皆に簡単に使用される日がきっと訪れる。国際標準のデータフォーマットでデジタルコンテンツ化することによって社会貢献していきたい」という思いが込められている。

顧客と一緒に市場開拓を目指す
社名が表すようにXMLを主軸としているが,実際にはXMLだけでは商売は難しい。XMLはワンソース・マルチユースを実現する手段の一つだが,顧客側にXML化してどうするかというビジョンがまだないケースも多い。
今までは紙原稿や印刷物が先にあり,その後でXML化していた。今後は,最初にXMLデータベースをWebから作って,Webで修正して,Webで見ることになるだろう。成果物は,印刷物,オンデマンド,CDなど必要に応じて変えていく。それによって時間もコストも削減できる。印刷物への展開も大日本スクリーン製造のAVANAS Book Studioにより,既存のDTPソフトと同様にXMLデータからの高度な日本語組版も可能である。
XMLは始めに技術ありきではない。XML化を目的とするのではなく,コンテンツの付加価値付けのためにXMLをどう使うかが重要である。印刷会社とソフト会社が投資した新会社ということで,同社のサービスへの関心も高まっている。飛び込み営業も行っているという徳江氏は,「地道な努力が必要」と力強く語った。
技術を公表したがらない企業が多い中で,同社は顧客からの出向も受け入れている。「スキルの公開は大したことではない。顧客の理解を得られることで案件を獲得できれば,新しい技術の習得につながる。顧客と一緒に市場開拓していきたい」と言う。

カスタマイズが容易な「BASE MODEL」提供
主力商品である「eXism BASE MODEL(エクスイズム ベースモデル)V.1」は,三井物産,三井情報開発,アンテナハウスの協力を受けて,2003年秋にリリースされた。ドキュメントをNeoCore XMS上で管理し、検索と速報性を重視したWebアプリケーションシステムである。サーバ用途に設計されており,ブラウザ上で入稿されたデータをリアルタイムにXML化して登録,コンテンツを頻繁に更新,表示,高速検索,閲覧する用途に最適な基本モデルセットである。
NeoCore XMSは,独自特許技術のDPP(Digital Pattern Processing)により,高速性を実現している。XMLタグにインデックスを自動コーディングするフルオートインデックス機能により,すべてのデータに対し容易に検索を掛けることが可能である。スキーマやDTDの定義も不要であるため,システム開発者にとって非常に使い勝手が良く,生産性の飛躍的向上を実現するXML専用エンジンでもある。
またW3C仕様準拠の多言語組版エンジンである,アンテナハウス製「XSL Formatter V3.0」の実装により,大量文書の高速自動組版が可能である。「XSL Formatter V3.0」は,組版結果を自力でPDFファイルに出力する独自開発エンジンを標準で搭載しており,接続数無制限のサーバ上でXMLのPDF化が可能である。
XML文書はサーバで自動組版して,PDF配布するという流れができつつある。 BASE MODEL V.1は,XML/Webサービス技術とXSLTによる自動組版を組み合わせた初めての商品である。
登録者は入稿フォームに従って入力するだけで,データベースにXMLデータとして格納される。社名・キーワード・製品特徴などの複数のキーによる超高速検索が可能である。検索結果をレイアウトして,高速に組版し,表紙,目次,本文,索引をPDF化することができる。
主な特徴と用途は以下のとおりである。
(1)大量データ高速検索
商品情報の更新追加が簡単に行え,同時にWeb更新とPDF出力が可能である。電子カタログ,オンラインショッピング,展示会などの頻繁に更新するWebサイトに向いている。
(2)高速帳票組版
書誌情報の管理に最適であり,閲覧とレジュメ作成が容易に行えることから,出版物,チラシ媒体,マニュアルなどの素材管理に適している。
(3)社内文書管理・組版
書式の定まったドキュメントからWeb配信・帳票PDF化に展開できることから,人事情報,報告書,電子カルテ,約款類のWeb・帳票の活用に適している。
なお,顧客ニーズを素早く,確実に対応するためのソリューション提供として,BASE MODEL V.1はカスタマイズが可能な基本セットとして構成されている。
「デジタル化した情報の活用がもたらす,スピーディかつ確実な知識と可能性の共有」を目指す同社では,「BASE MODEL」を含めたXML/Webサービスソリューションをパートナー企業と連携して,積極的に拡販活動をしていきたいという。

JAGAT info 2004年2月号より

2004/02/16 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会