株式会社十印
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XML化の目的
製品開発の工期短縮が叫ばれて久しい中,製品のマニュアル制作,翻訳をやっていく上で,当然ながら効率化というものを考えていかなくてはならない。さらに昨今製品の世界同時発売や仕向け地による多品種化などでその要求は増すばかりだ。
工期の短縮,コスト削減はもとより,多言語をいかに早く仕上げ,また,印刷物のみならず電子媒体への対応ができるかが大きな課題である。
これらの要求を満たすにはやはりXML化が必然の流れとなる。また,SGMLの利用のころに比べ安価なツール,ソフトウエアが数多く出てきたこともXML化への流れに加速を付けている。
XML化の大きな魅力は自動化と,文章の再利用である。
ソフトウエアの選定
XML化への移行に当たっての最大の問題は,既存マニュアルの文章をどの単位で部品化(素材)していくかというところにある。
ここで方針を見誤ると,作り上げたシステムがうまく機能せず結果,何ら効率化が図れないことになってしまうが,幸いわれわれには,長年のマニュアル制作およびSGMLのノウハウがあった。
次に問題なのが,どのソフトウエアを使用するのかだった。
機能面で優れているのは当然だが,選定の大きな理由にクライアントの厳しい要求にこたえられるか,つまり開発元が迅速にカスタマイズしてくれるかという部分だった。
この観点からわれわれは,データベースには日立ソフトウェアエンジニアリング(株)のEnterprisePublisher,自動組版ソフトはアンテナハウス(株)のXSL
Formatter/PDFオプションを選定した。翻訳支援ツールは業界標準となりつつあるTradosを使用することにした。
システム概要
第1段階として,XMLを使った多言語オンラインヘルプ校正システムを開発した。
クライアントの要求は,現状のペーパーマニュアルと同様にHTMLベースのオンラインヘルプをAcrobatを使って校正作業が行えることだった。当然ながら本文中のリンクやトピック,レイアウトが最終納品物と同一であることが求められる。
そこで,納品物となるHTMLベースのオンラインヘルプの機能,レイアウトが再現できるXSL-FOのスタイルシートを作成,EnterprisePublisherからヘルプに必要な素材(文章,図)を抽出し,XSL
Formatterで自動組版して,PDFに変換するシステムを開発した。
これによって校正もペーパーマニュアルと同様に,Acrobatの注釈機能を使用した的確な校正が可能となった。
また,Tradosをもっていない翻訳者に発注する場合も,注釈欄に翻訳してもらいコピーペーストでデータベースに登録することができる(図1)。
さらにわれわれは,EnterprisePublisherとXSL Formatterを連携するGUIをもったソフトウエアを自社開発し,徹底した自動化という意味で簡単な操作でだれでも簡単にヘルプ,PDFが作成できるようにした(図2)。
▲図1
▲図2
XSL Formatterの選定理由
以前は,FrameMakerでXML素材(画像・文章)を読み込んで,マニュアルで組版して校正用のPDFを生成していたが,マニュアル作業による人為的なミス,納品物作成とは同時に行えないことに起因する納品物と校正PDFファイルの同期の問題,また,仕上がりのPDFの画像などの質が,納品物(Web系オンラインヘルプ)に比べて劣る,といった点が校正の問題として浮上していた。
特に,FrameMakerから生成されたPDFのJPEG画像ファイルの品質については,アドビ系の製品群を使った流れでは解決できない問題として存在し,この問題を解決し,比較的安価で,開発工数の許容範囲内での開発が可能,そして,Web系オンラインヘルプ自動生成のWebアプリケーションに組み込める製品が求められていた。
XSL Formatterはこれらの要件を十分に満たし,多言語組版機能に関しても十分にシステムの要求を満たしていることから導入となった。
展望
このシステムを開発し,大幅な効率化が実現できたことで,現在は第2段階としてXMLを使ったフリーレイアウトのマニュアルを作成できるシステムを開発している。
XML化への移行はかなりの初期投資が必要だ。この点で導入を躊躇(ちゅうちょ)されることを聞くが,将来を見据えるととても魅力あるものだと考えている。
XMLをベースとしたCMS(Content Management System)は,今後さらなる広がりをもっていくものと思う。
■関連情報
アンテナハウス 株式会社
株式会社 十印
『プリンターズサークル 3月号より』
2004/03/05 00:00:00