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デジタルコンテンツ制作ビジネスの位置付け

社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)では,2004年1月にDTPエキスパート登録者(1回以上の更新者)を対象にしたデジタルコンテンツ制作ビジネスに関するアンケートを実施した。
FAXで806名に送付し,208名の回答が寄せられた。
(送付数:806。DTPエキスパート登録者で,1回以上の更新者,かつ役職者を抽出。但し同一企業同一部門は1名のみ)
回収:208件 (25.8%)

1.企業の業種
印刷・製版が71%のほか,デザイン事務所や出版・新聞など関連する業種を含めると90%が印刷関連である。

業種
回答数
比率
(1)印刷・製版

148

71%
(2)一般企業
17
8%
(3)デザイン事務所
14
7
(4)出版・新聞
8
4
(5)印刷機材の製造販売
2
1
(6)コンピュータ・ソフトウェアの開発・販売
2
1
(7)学校
2
1
(8)官庁,団体
1
0
(9)その他
14
7

2.社員数
回答者の属する企業は,中堅〜小規模企業に万遍なく分散している。500名以上の企業は12%に過ぎない

社員数
回答数
比率
(1)1−9名
27
13%
(2)10−49名
49
24%
(3)50−99名
30
14%
(4)100−199名
35
17%
(5)200−499名
42
20%
(6)500−999名
14
7%
(7)1000名以上
11
5%

3.デジタルコンテンツ制作,およびWeb関連ビジネスに取り組む体制について

現在の体制と,2-3年後についての予想を聞いた。既にDTP部門とは別に社内に専門部署を設けている企業が51%となっており,社内で対応する傾向が大きい。なお,デジタル・Web関連未対応の企業は9%でしかない。

2-3年後には,社内に専門部署を設けると予想する回答者が51%→61%と拡大しており,社内で対応する傾向はまだ大きくなる。デジタル・Web関連未対応の企業は9%→2%と減少し,事実上どこでもクロスメディア的な業務をおこなうことが予想されている。

また現状と今後の関連を分析すると,回答者のおよそ半数は現状と同等を予想しており,これからデジタル・Web関連が始まると言うよりも,基本的な取組み姿勢は既に出来つつあることがわかる。一方,今後急激にデジタル・Web関連へのシフトを予想しているところは一部である。

現在のデジタルコンテンツ制作,Web関連ビジネスの体制
現状
2-3年後(予想)
(1)紙メディア以外の業務には,ほとんど対応していない。

19

9%

5

2%
(2)社内体制がなく,パートナー会社に外注している。
31
15%
24
12%
(3)社内のDTP部門で対応している。
53
25%
50
24%
(4)社内に専門の部署(1-9人)がある。
85
41%
81
39%
(5)社内に専門の部署(10人以上)がある。
20
10%
46
22%
(6)無回答
0
0%
2
1%

4.デジタルコンテンツ制作,およびWeb関連で規模の大きいビジネス(現状,2-3年後(予想))

設問は,売上規模の大きい順に3項目を選択する形式となっている。以下の順位は上位1-3位に各々3,2,1ポイントを割り振って算出し,総合的に上位にあると判定した項目である。
現在は,ホームページデザイン,Webサイト構築が1-2位である他,データ入力・変換業務,CD・DVDパッケージ制作が上位にある。
2-3年後の予想では,データ入力・変換業務,CD・DVDパッケージ制作のランクが下がり,データベース構築・電子カタログ制作が上位に移行している。
現状はデザイン的な業務中心であるが,今後はITサポート的な業務に変わるだろうという見方ができる。

現状
2-3年後(予想)
(1)ホームページデザイン (1)企業のWebサイト構築
(2)企業のWebサイト構築 (2)データベース構築
(3)データ入力・変換業務 (3)ホームページデザイン
(4)データベース構築 (4)データ入力・変換業務
(5)CD,DVDパッケージ制作 (5)電子カタログ制作
(6)その他 (6)ネットワーク・システム構築

5.デジタルコンテンツ制作業務,およびWeb関連ビジネスに対する課題
最も多い回答は,技術力向上・人材育成であった。その次に「営業力・提案力」を課題とする回答が27%あり,その差は少ない。トップの方向性・経営戦略を課題とする回答は17%で意外に少ない印象を受ける。
総じて現状ではデザイン面・コスト面の問題は少ないが,それ以上の取り組みは技術力・営業力と言った現場側のパワー不足のため,ビジネスとして軌道に乗っていないことが窺える。

回答数
比率
(1)技術力向上,人材育成

61

29%
(2)営業力・提案力 (技術・体制は整備されているが,受注が少ない)
56
27%
(3)トップの方向性決断。経営戦略
35
17%
(4)信頼できるパートナー企業探し
23
11%
(5)コスト競争力(仕事はあるが,利益が出ない)
13
6%
(6)グラフィックデザイン・センス,またはセンスを (5%)備えたパートナー
10
5%
(7)その他
10
5%

6.回答者個人の担当業務について
設問は,回答者本人の現在の担当業務と,予想する2-3年後の担当業務を問うものである。
現在の担当業務はDTP・印刷が中心と答えた回答者が65%となっているが,2-3年後の予想では42%となっており,徐々にデジタルコンテンツ制作・Web関連業務にシフトする傾向(予想)が見られる。デジタルコンテンツに関連がないだろうという回答は,28%→5%と大きく減少している。
また,現状と今後の回答の関連をみると印刷とデジタル・Web関連の比率は半々程度とする回答が多い。そのあたりにデジタル化の飽和を描いている人が多く,デジタル・Web関連を中心にすると答えた回答はそれほど増えていない。

現状
2-3年後(予想)
(1)DTP・印刷が中心で,デジタルコンテンツ製作・Web関連はない

59

28%

11

5%
(2)DTP・印刷が中心だが,多少はデジタルコンテンツ製作・Web関連もある
77
37%
77
37%
(3)DTP・印刷と,デジタルコンテンツ製作・Web関連とが半々である
26
13%
64
31%
(4)業務の中心はデジタルコンテンツ製作・Web関連である。
21
10%
26
13%
(5)その他
25
12%
30
14%

7.今後,必要とする知識,技術について

今後のビジネスに必要な知識・技術については,XMLや電子ドキュメント技術,デジタルコンテンツ制作,Web関連が上位に挙げられている。目下の現場的な課題が大きく意識されており,前問と同じ傾向である。

回答数
比率
(1)XMLや電子ドキュメント技術

81

39%
(2)デジタルコンテンツ製作,Web関連
50
24%
(3)一般企業におけるIT全般(ERPやSCM,電子取引等)
39
19%
(4)セキュリティ技術
19
9%
(5)知的財産権など法的知識
13
6%
(6)その他
6
3%

全体を通して,既にDTPと別のジタルコンテンツ制作・Web関連の部署が動き出している数%の企業では,積極的にデジタルコンテンツビジネスを中心にしようとしている。また,出来るだけDTPに留まりつつ兼業的な取り組みを考えている多くの企業では,デジタル・Web関連業務が半分も行かないような印象を持っていて,今後の取り組みは二分される傾向がある。

2004/03/19 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会