定年をこれからどう考えますか
昨今の業界動向は,景気動向に左右されたぜい弱な印刷業界にさらに追い打ちを掛けているような様相を露呈し始めたこと,企業間格差の顕著化,デジタル化対応などスピード経営への柔軟性の姿勢と体力差は,過去経験したことのない感覚で経営のかじ取りの難しさを実感しています。
このような業界であり,当然ながら旧態依然の経営からどのように脱却し,かつ社員が誇れる会社作りを標榜した時,印刷業のもつ独特な雇用体系に起因していることの多さを感じているのは私だけではないと思います。
特に印刷技術者の高齢化と相反して現代機械技術の高性能化・デジタル化,e-ビジネス活用拡大など過去の印刷体系から大きく変化している現在,営業を含め対応できる柔軟性のある社員育成と設備強化は,これからの企業存続を左右しかねない経営の根幹の課題であり,経営改革を推進することがますます高齢技術者や高齢従業員削減へと課題解決にシフトせざるを得ない状況ではないかと思います。
当然ながら会社としては60歳定年制すら撤廃し,55歳定年もしくは50歳定年の導入ができれば実施したいと考えるのは現状打破からもやむを得ないことかと思います。
近年,業界も年功序列体系の見直しから職能給の導入・人事制度の改訂など業況に照らして変化していることも事実と思います。
しかしながら印刷技術者の育成に,一人前と言われる技術者に会社としての投資は何年掛けてきたか,後継技術者は本当に育成されているのか,印刷技術に限らず職人と言われる人材こそ会社の財産のはずであり,高齢化したから定年がきたからで簡単に人材の交代ができるほど印刷技術は簡単ではないと考えています。
当社が試行しようとしているのは,定年後の技術指導員としての嘱託制(3年間)+繁忙時の雇用対策です(現時点60歳定年を踏襲した時,後継者が育成されていれば別ですが,定年55歳を視野に入れた時には確実に職制改革から指導員制を導入していく予定です)。
併せ現状の専門的印刷技術者の業務の汎用化(1人3役マスター)の徹底が本人の雇用の幅を広げていける支援と考え40歳以上のOJT教育・能力アップ訓練に取り入れています。
会社がバックアップできることは本人の能力をより高めてやれる仕組みを作り上げていくことと考えています。
(東京飯田橋 K・O)
定年だけに限定すると,高齢社会だし,延長すべきというのが原則論になる。
しかし,その前提には年功序列・終身雇用という暗黙の原則があるため,定年をなかなか変えられない事情がある。
窓際族なんて言葉は定年があるから存在するようなものである。
極めて個人的な意見になるが,アメリカのように定年を年齢による差別として認めないような制度・考え方を経営も働く側もしてはどうかと思う。
それが成り立つには,労働の流動性がなければならず,儒教的な敬老精神的なものはビジネス社会では払しょくしていかねばならない。
現在のベンチャービジネスなどは,比較的若い人が集まり能力給,あるいは成果給的なもので経営されていると思われる。また,外資系では採用も解雇も頻繁に行われている例も日本でもある。
一方で,日本型の経営では役職定年などを設けて若手社員の登用に道を開いたりしているが,これも非常に不合理と言えば不合理である。
定年と能力は一致しない。気力・体力などは個人差が大きい。かつて定年55歳が決められたのは,人生50年という中で決まったことで,その時代には55で引退してもおかしくなかった。
年金制度などもあって,60から能力ある人が安い賃金で年金を一部もらいながら仕事をしているのは極めて非合理的であるが,こういう制度があるため,60から積極的に働こうとしない人がいるのも事実だし,ある面では相当高額に当たる人を安い賃金で再雇用しているとも言えるのである。
そろそろこのような非合理性を廃して,
定年廃止を考えるべきだと思うし,年金も在職か非在職かでなく,収入に応じて支払うべきと考える。でも個人的に理屈はそう思っても,自社への導入は,極めて難しい。毎年プロ野球の年俸更改のような仕組みをとって,「はいあなたは100万アップ」「あなたは残念ながら業績不振のため自由契約(解雇)です」とやらなければならず,労使双方とも相当な真剣さと緊張感が伴うから。しかし,生きるか死ぬかの中小企業ではそれをやらねば企業がつぶれるから。
(東京・商業印刷 常務)
いつも意見のウラ・オモテを面白く読ませていただいています。
人間,20歳前後の,まだ白紙に近い時ならともかく,60歳前後になるとその人がそれまで歩んできた人生がどのようなものであったかによって,全く異なる人格なり能力になっています。まだ十分頭が柔らかいし,まだ勉学の意欲もある人(少数ですが)もいれば,過去の知識や経験で凝り固まって,次第に現場とそぐわなくなってしまった人(多くの場合こうなっている)もいます。またすべて放棄したような人までいるわけで,これらの方々を
一つの雇用制度で対処することは不可能だと思います。
だから
定年が何歳であっても,定年になる何年か前から,各人が自分の進むべき道を選択することができて,定年に向けて自分をリフレッシュするための準備時間を与え,実際に定年になるころには諮問・試験などで,次の道へ振り分けるような,「シニアプラン」を用意することが本当は重要でしょう。
これがなければ,再雇用による仕事の効率低下や,退職によるノウハウの低減・流出などは防ぎようがないのではないでしょうか?
(匿名希望)
大日本スクリーンが定年社員を再雇用する子会社の設立を発表した。60歳以降の就業機会提供に対する企業責任を果たすために,年金満額受給時までの間の収入確保を支援するという。三浦印刷は退職金・年金制度を見直し,国債の利回りに連動して給付額が決まるキャッシュバランスプラン制度を導入するという。
企業責任ということで言えば,なぜ政府の無策のツケをわれわれが払わなくてはならないのか。
年金受給年齢が引き上げられたから,企業にその分定年も引き上げろと言われても納得がいかない。労働者にとっても自分で定年年齢を決められるほうが望ましい。
労使それぞれの事情により,選択できる雇用の受け皿の拡大と,個人を尊重した幅広い社会制度の拡充を望む。
(匿名希望)
会社役員として充実した日々を送っているし,できることなら死ぬまで現役でいたいとも思う。しかし,政治家の世界もそうだが,高齢者がいつまでも後進に道を譲らない世界には何も発展性がないし,後継者が育っていない状態は,会社的にも非常にまずい。
そういう意味で,
任せられる人ができた時点で,65歳と言わず60歳前でも後進に道を譲り,潔く勇退したい。(匿名希望)
2004/04/16 00:00:00