2004年5月7日 第7回アジア印刷技術情報フォーラム(The 7th Annual Meeting of The Forum of Asia Graphic Arts Technology;FAGAT)が,2004年3月11〜13日,マレーシアで開催された。本来は2003年の開催であったが,SARS(重症急性呼吸器症候群)問題によって延期されていた。今回は新しくメンバーとなったオーストラリアを加え,中国,日本,韓国,マレーシア,フィリピン,シンガポール,タイの8カ国とオブザーバーとしてスリランカと ベトナムが参加。海外からは関連参加も含め54人,地元マレーシアから92人,総勢146人が参集した。
1. 第7回FAGAT総会(3月11日)第7回FAGAT総会を開催。議長は主催国マレーシア印刷協会のRicky Tan Soo Huat会長が務めた。
参加国の代表機関(参加人員)
総会後には,歓迎パーティが行われた。 2. 第7回FAGATオープンセレモニーFAGAT2004大会運営委員長Ong Kum Sing氏が主催国を代表してあいさつを述べた。概要は以下のとおり。
FAGATはアジアにおける印刷技術に関する情報交流の場として設立された。知識・経験あるいは問題点をメンバー各国で情報交換する場として機能している。
3. 情報交流会(3月12日・13日)
以下に日本以外の7カ国の発表を要約する。→日本の講演内容
企業数は3290社,従業員数は約12万人,売上高30億ドルで,製造業としては最大級の産業の一つである。
企業数は6000社強,従業員数は12万人強,売上高は220億豪ドルで,製造業としては3番目に大きな産業である。
紙・紙製品の輸出額は7.64億豪ドル(印刷物が5.86億豪ドル),輸入額は9.89億豪ドル。輸入で多いのが,書籍,次いで新聞&雑誌。
WTOに加盟後の成長は著しい。2003年のGDPは1.4兆ドル,8.5%を超える成長である。
海外からの投資総額は10億ドルを超えた。外資・ベンチャーの数は2200社,このうち1600社が広州にあり,そのうちの90%が香港からの投資である。上海には外資・ジョイントベンチャーが200社ある。
印刷経営の側面からは多くの課題がある。管理能力の不足,小企業が多く政府依存が高い,高級品質への対応が低いのに対し低品質は供給過剰である。国営企業の体質改善の進捗が遅い。
2003年の製版印刷資材・機材の生産額は8.8億ドルで,そのうち1億ドルが輸出されている。2001〜03年の枚葉印刷機の輸入は2363セット,12億ドル(2003年は933台,5.07億ドル),2001〜03年のオフ輪の輸入は539セット,4.56億ドル(2003年は131台,1.26億ドル)であった。
紙の生産と消費では,出版印刷の生産量が1285万トン,消費量が1417万トン,新聞用紙は生産量185万トン,消費量は204万トン,それぞれ不足分は輸入している。
インキメーカーは400社以上,生産量22万トン,生産額632億円。
韓国全体は輸出主導で成功してきたが,印刷業界においては印刷機材の大半を輸入することで成り立っており輸出には貢献してこなかった。
印刷業界の80%を占める20名以下の小規模企業では,変化に対応しようとしても,新しい技術を導入する資金が不足している。
印刷会社1000社のうち,300社は大・中規模企業で,デザイン,プリプレス部門をもち,CD制作を含む多様な事業を展開し,先端技術も導入している。その強みを生かして国際市場で仕事を確保している。最近では安い労働力を求めてマレーシアや中国にも進出している。その他の700社は家族経営の小規模企業。2002年の生産額は2.58億シンガポール(S)ドルで付加価値額は1.23億Sドル。従業員数は1万7000人だが最新鋭の機器導入で減少傾向にある。 価格競争による利益の減少に対しては,合併あるいは共同購入によるコストダウンが考えられる。 印刷技術は高度になりITに関する知識などをもった現場作業者が必要だが,印刷に関するイメージが悪く,優秀な若い人材が不足していること,後継者が事業を継承しないことが大きな問題である。そこで,従業員向けの適切なトレーニングプログラムの導入や,メルボルン大学と提携し印刷に関して大学レベルの資格をもてるようにした。印刷業界に優秀で意欲のある人材を入れていくことが重要である。 今後の生き残りには,規模の最適化と利益率の改善が必要で,経営面で生業から企業への脱皮をしなければならない。成功する企業は,規模が大きな企業では国際市場に事業を拡大し,海外への工場進出もしていく。比較的小規模な企業では,業種特化したり,電子メディア分野を含む新しい事業領域に事業を拡大する。またプリプレスの企業では印刷分野に事業を広げるところもある。
2003年は大きな機材展と国家プロジェクトが始まった記念すべき年である。バンコクを中心に企業数(製版などを含む)は約5000社,従業員数は12万人。紙の消費量は200万トン(前年比9%増),そのうち約42万トンが輸入。最近はサービスビューロが伸び,印刷製版へサービスを提供しているところもある。 タイの印刷業は経済とともに順調に伸びており,広告宣伝費の予想伸び率が8%,パッケージや雑誌は12%という数字もある。 政府も印刷業に対する政策に熱心であるが,印刷業界からタイ首相に対して「印刷業の競争力強化のための開発戦略」という提言をした。5年以内に印刷物輸出を7億5000万ドル,投資額を5億ドルまで増加し,年率3%で雇用を増加させるとしている。この計画の根拠は,印刷コストの大部分を占める印刷用紙の国産化が可能になり,コスト面,技術,人材能力面での国際競争力があること,タイ経済の発展に伴う印刷需要拡大が望めること,海外からの投資が期待できることである。 しかしなから,計画の実現は容易ではなく,いろいろな問題がある。特に業界の80%を占める小規模企業は技術面,経営面で遅れている上,最近のハード,ソフトの多様化で先が見えず決断ができない状況である。 4. ファイナルセレモニー,さよならパーティ各国の発表が終わり,Ricky Tan Soo Huat会長から閉会の挨拶が行われ,「第8回FAGAT」が2005年10月にオーストラリア・シドニーで開催されることが参加者に伝えられて閉会となった。 夕刻よりファイナルセレモニーが開催された。マレーシアの地元の印刷会社並びにスポンサーメンバーなども加わり盛大なさよならパーティとなった。恒例の各国プレゼント交換,民族ダンスなど楽しい余興と交流が夜遅くまで続いた。 YB DATO' SERI KERK CHOO TING(国際貿易・工業副大臣)のご挨拶
Ricky Tan Soo Huat氏(マレーシア印刷協会会長)の閉会挨拶の概要 報告:マーケティング部部長/杉山慶廣
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2004/05/07 00:00:00