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印刷プラス クリエイティブで差を付ける

印刷会社も受注産業,装置産業の枠にとらわれず,時代の変化に則したサービスを提供していくことが求められていくだろう。
今回は,「Sales」「Planning」「Printing」の3つを柱に企画・制作から行っている東京プリンテクスの営業本部統轄本部長木内一惠氏に同社の姿勢を伺った。

所有設備に縛られない多様な営業展開
東京プリンテクス(本社・東京都中央区,代表・木内恵子氏)は,メーカーや代理店を主要顧客に,ポスター,カタログ,チラシといった広告ツールからアイキャッチャーなどの立体ディスプレイ,パッケージ,液晶,香料,磁気,浮き出しなどの特殊印刷,マルチメディアとして映像,ホームページ制作から展示ブースの企画・設計・施工まで幅広く手掛けている。創業は1995年とまだ新しく,社員の平均年齢も若い。
印刷営業出身の木内氏は,印刷業の弱点を知った上で,印刷設備をもたなくても優れた印刷物はできると考えた。社内にデザイナーを擁し,カンプ出力まで行うが,プリプレス以降は資本提携もあるグループ会社で行っている。グループ会社の中には同社の主力製品であるポスターの専門機を保有しているところもある。
スーパーや百貨店,メーカーなど,顧客によってそれぞれ違った企業イメージがある。顧客の求める目的,内容,スケジュールなどにより,ディレクター,コピーライター,デザイナーなど専任スタッフを編成して,質の高いコミュニケーションツールの制作を行っている。機械の稼働率や機械に合った仕事に縛られない利点を生かして,営業品目を増やし,柔軟に対応していきたいという。また,品質管理に関しては,営業と生産管理は印刷会社の出身者が多く,社内での校正・検版作業に万全を期している。
最近評判の良かったものに,B2版の折り込みチラシがある。タイアップ広告として紙面を2つに分けて,費用を折半したもので,不動産会社の新築マンション情報と大手のショッピングセンターのダブル広告である。「ショッピングセンター○○店に隣接」という不動産のキャッチコピーの裏面にマンションの見取り図とスーパーのチラシが並んでいる。業種の組み合わせは偶然だったが,効果的なものであった。アイデア次第でより訴求効果を高めることもできるだろう。

印刷営業の連絡の悪さを徹底的に排除
営業力,サポート力を誇る同社では,「TPC(TOKYO PRINTECS CORPORATION)ビジネス基本スタンス」をマニュアル化している。自社の特色を明確にして業績を伸ばすことを目的に,「他社との差別化施策」「社内活性化施策」などが詳細に記されている。
木内氏は印刷会社で長年営業を担当していた経験から,ミスの多さ,連絡の悪さを痛感している。だから現在は事前連絡,事前報告をこまめに行うことを社員に徹底している。外線電話を3コール以上待たせない,保留はすばやく5秒以内といった基本マナーから,仕事の手順まで明文化して社員に配布している。
営業の担当者が外出中に顧客から電話があった時は,10分以内に折り返し連絡する決まりで,「お客様を待たせない」対応の速さを徹底している。担当営業が不在でも代行して対応できるバックアップ体制によって,「担当じゃないと分からない」という受け答えを徹底して排除している。また,見積書などの顧客への提出物は指定時間前に用意すること,無理に思える案件を依頼されても『No』と言わずに自社ができるものを提案することとしている。
主要顧客が広告代理店であることから,急を要する仕事が多く,特に迅速な対応が必要になる。顧客のなかには土曜出勤しているところも多く,緊急に用時を頼みたいという要望があるため,交代で土曜出勤もしている。休日も営業担当は連絡が取れるように携帯の電源を入れておく。最初は抵抗もあったが,今では顧客に喜ばれることが多く,自社の特長の一つにしているという。

顧客とのコミュニケーションが差別化になる
自社のイメージ作りのため,取引先から見た差別化施策にも意欲的である。印刷がメインでありつつもプランニング力やデザイン力といったものを前面に押し出し「クリエイティブから」という意識を個々がもち,対顧客に責任のある仕事ができる会社として認識していただくように努力することが大切だという。
そのために顧客とのコミュニケーションの方法として,「TPC新聞」の有効活用,顧客とのランチミーティングの実施などが行われている。「TPC新聞」とは,個別の顧客の業種などに合わせて,新聞記事を切り貼ったもので,営業担当は直接顧客に会えない時でも新聞だけは置いてくることにしている。新聞をゆっくり読む暇のない顧客には重宝されていて,営業ツールとしても有効なものになっている。また,担当者と昼食を一緒にすることも勧めている。オフィスから出ることで本音が訊けることもあるし,雑談の中にヒントが隠されている場合も多い。営業担当には「お客様とは仕事の話をするな。仕事の話は5分でいい」とコミュニケーションの重要性を説いている。さらに,「20代で人脈作り,30代で実績を残す。40代は部下を育てる年代」と,若い人には今が大切であることを強調している。

企画力・提案力で全国展開
メディアミックスとして印刷以外も多く手掛けている。映像関連では,携帯電話操作ガイドビデオがある。携帯電話を購入しても使い方が分からない年輩者も多い。そこでメーカーからの依頼で,ビデオの手順に従って使用方法をマスターしていく懇切丁寧な解説ビデオを制作したところ,なかなか好評だったという。
また展示会のSP活動の一環として,イベントの企画からブースのデザイン施工なども請け負っている。当然派生するカタログやプレゼンツールの企画から制作まで企業ニーズにこたえている。
新規の仕事は紹介が多く,「TPCに任せておけば大丈夫」という企業イメージが定着してきている。例えば,パッケージに関しては,商品を保護すると同時に訴求効果が重要な機能であることから,その質感にこだわり,一つの媒体の観点で企画制作している。こだわりを形にすることが競合商品との差別化を図る,本当に生きたパッケージを制作することにつながるという。
また,独自の企画力を生かして,観光地の活性化のためのチラシやパンフレットの制作を全国の観光協会に提案している。受注内容は,印刷まで請け負うのではなく企画提案にとどめていることで,地域に密着した印刷会社との付き合いを侵害することもなく,受注金額は大きくないが,全国ベースでかなりの実績を上げてきている。
今後とも,クライアントニーズに対し,的確な情報を基にメディアの提案からプリンティングの専門家としてのアドバイスまでトータルにサポート&プロデュースをしていきたいという。

JAGAT info 2004年6月号より

2004/06/28 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会