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デジタルコンテンツの制作支援システム

印刷会社では多くのデジタルデータを取り扱っている。制作のためにクライアントやデザイナーとの間でデータを交換したり,制作済みの過去のデータをクライアントが参照したり,さらにはコンテンツをほかの目的に利用するなどいろいろな利用がある。このため今後利用目的が広がる状況を考えれば,デジタルコンテンツを管理する技術が必要になってくる。
今まで印刷物の制作においては,ただデジタルデータをメールやオフラインメディアを利用して交換を行って作業していたが,これからは制作を効率的に行うためにもデータの交換などを管理する必要が出てきている。
このような背景もあり,デジタルデータを管理するためのデジタルコンテンツマネジメントシステムが必要になるが,またインフラの状況も変わり機能を実現する技術もどんどんと変わりつつある。
一般にコンテンツマネジメントシステムと言えば,Webサイト向けにコンテンツの制作,運用を支援するためのシステムを指す場合が多い。また社内ドキュメントを管理するシステムを言う場合もある。印刷物制作のためのデジタルコンテンツ管理も,今後はWebサイトへの利用といった多目的もあり,Webコンテンツマネジメントシステムとは別物ではなく,そのために必要な機能も求められてくる。

コンテンツマネジメントシステムとは

Web用コンテンツを管理するWebコンテンツマネジメントシステムと呼ばれるものは,Webサイトのコンテンツを管理して,Webサイトの運営を支援する。その中には無料のコンテンツもあれば,会員制で特定の人にしか見せないコンテンツもある。このためアクセス制限なども必要となるが,基本は作成,更新などの運用を管理する点にある。
同様に印刷ビジネスを考えた場合でも,コンテンツを作成する部分が非常に重要で,さらに制作,運用だけでなくアクセス管理,コンテンツの流れを管理するようなワークフロー機能を実現する仕組みが必要になる。これはWeb用のコンテンツでも,印刷物の制作のためのコンテンツでも,制作されて完成するまでの流れを管理することは必要であり重要な部分である。
さらに過去の利用できるコンテンツを管理する場合では,配信や検索などの機能が必要になる。DAMと呼ばれるデジタルアセッツマネジメントのシステムは,どちらかと言うとデジタル素材を管理するシステムを指すケースが多い。画像のような再利用可能な素材を管理する,または制作物に利用されるデジタル素材を管理するようなシステムになる。
このようにデジタルコンテンツの管理システムと言った場合に,目的と用途によりもつ機能が変わってくる必要がある。

印刷コンテンツ制作を支援するファイル共有

従来は制作するためにデータをLAN上のファイルサーバで共有して利用するケースが多かった。これは,社内で利用されているため作業が終わればいろいろと連絡を取る手段があり,ただのデータを収容する器であっても利用できていた。また外部からはオフラインメディアなどで送られてくる利用である。
しかしネットワークの普及が始まり,制作環境が複数の企業,複数の場所に分散してきている現状では,従来はファイルサーバと呼ばれていた部分で,インターネットなどのネットワーク上でファイルを共有できるファイルサーバが必要になる。
LANでの利用と違い,インターネット上でファイル共有する場合は,間違ったアクセスやバージョンの間違いなどは非常に注意する必要が出てくる。そのためのコミュニケーションが必要になってきた。また,不正アクセスに対応することも重要である。
このようなコンテンツの制作という視点では,作業の流れとコンテンツへのアクセス方法を管理する必要がある。制作は一つの場所で行われるわけではなく,画像がデジタルカメラで撮影されれば,撮影スタジオから送られ,デザインを外部で行えば,そこから送られてくる。また制作の途中の段階はでは校正が必要であり,クライアントやデザイン会社など多くの人や場所で参照できることが必要になってくる。

このような制作環境では,ネットワークを利用してコンテンツの受け渡しや流れを管理する仕組みとしてのコンテンツ管理が必要である。

インターネットへの対応

必要とされる機能は,当然外部からの接続を行うためのネットワークへの対応がある。ネットワークと言っても2つのパターンがある。一つはインターネットを利用して,どこからでもアクセスできる環境がある。もう一つはVPN(Virtual Private Network)と呼ばれる専用線のような特定の場所からのネットワーク接続への対応である。
このようなネットワークには,どちらもWeb技術を利用することが最近の仕組みとなっている。
今までデータを送る場合,メールの添付で送る方法が多かったと思われる。しかしメールの場合では,送るデータ量の制限があり,データ量を減らすために圧縮したり,セキュリティのために暗号化したりするなど手間であった。
これに対してFTPでファイルを転送する方法があるが,これもメール同様にセキュリティ上の問題や,またクライアント側のアプリケーションをインストールするなどの手間があった。
今注目されている技術はWeb技術を利用することで,Webを利用した専用のアプリケーションもあるが,標準化技術を利用したWebDAVサーバが多く出てきている。WebDAVは国際的標準化団体(IEEE)で定義された規格であるため,いろいろなサーバやアプリケーションが対応してくると思われる。

WebDAV技術の利用

WebDAVの主な機能には,ファイルの書き込みや共有,削除,移動などの操作機能がある。ロック,チェックイン,チェックアウト,ロギング,バージョン管理など,ファイルに対する管理機能もある。また,SSLといった暗号化,電子認証などによるセキュリティ機能をもたせてファイル共有も実現できる。これはあくまでも規格である。
WebDAV技術を利用したネットワークサーバアプリケーションの特長として次のようなことが挙げられる。
従来FTPならばFTPクライアント,メールならばメールアプリケーションなどを経由してサーバへデータを送るが,WebDAV技術を利用した場合WindowsのOfficeアプリケーションから,またMacintoshのアプリケーションから直接ファイルを読んだり,書いたりすることができる点がある。Webブラウザから行うこともあるが,直接アプリケーションから利用できる形にできる。
また制作を行う際に従来は,ファイルを転送して処理をしてまた送るといった操作になるが,WebDAVではファイルを開いている時にはほかから参照できないようなロック機構があり,ファイルを閉じれば自動的に更新され,またいつ処理されたかといった履歴も残る。制作におけるコラボレーションを実現するには,このようなファイルのアクセス管理や履歴管理が必要になる。この辺もWebDAVを利用することで実現できるようになる。
クライアントやデザイナー,制作会社などインターネットで結んだコンテンツ共有は,これからの制作過程では必然の機能となってくる。このような環境で利用できるコンテンツマネジメントシステムとして,WebDAV技術を利用したサーバが出てきている。アシストマイクロ社が扱うXythos WFS,ヒューリンクス社が扱うWebDAVmanagerなどがWebDAV機能を利用したサーバである。

DTP用サーバのWebへの対応

印刷物の制作という視点では,制作時に必要な機能と制作後のコンテンツの管理に必要な機能になる。ここに視点を置いた製品の特長は,DTP制作のワークフローを重視した製品となり,DTPのためのきめ細かい機能が特長である。制作時では重い画像を扱うのではなく軽い画像で操作を行うOPIサーバ機能,カラーマネジメント機能などになり,制作後の管理としては在版管理やバックアップ機能といった機能になる。
在版管理には,大容量のストレージが必要になり,またカタログデータベースや在版データのアーカイブ機能などが求められる。また自動バックアップ機能などで,管理者の手間を減らす機能も必要である。
このようなDTP向けに特化したサーバアプリケーションも,外部からのファイルアクセスが求められ,Web対応で外部との接続ができるようになってきている。これからは外部からの入稿や校正を含めた制作のコラボレーションが必要であり,インターネットに対応したファイル共有を実現する機能が求められる。このためクライアントやデザイナーなど複数の企業間でコンテンツ共有を実現する部分と,制作のきめ細かい部分の管理機能を実現する部分が,制作のためのプリプレス用サーバとして求められる機能になってくる。 このような機能をもった製品には,ビジュアル・プロセッシング・ジャパン社が扱うDTPターボサーバーやインテリジェントワークス社が扱うHELIOS ImageServer/WebShareなどがある。

制作のコラボレーションを支援するサービス

複数の企業間,または拠点で制作を進めていく場合は,Web技術を利用したネットワーク対応のサーバが必要になるが,これをサーバではなくネットワークサービスとして利用する方法もある。
従来データ転送のネットワークサービスと言うと,電子宅急便のようなネットワークを利用してデータを届けるようなサービスが多かった。
しかしこの場合ファイル共有ではないため,データのバージョン管理などを別に行う必要があった。最近はネットワーク上に大きなストレージサービスを提供しファイル共有できるサービスが出てきている。
NTTコミュニケーションズが提供するShareSatgeASPサービスがある。ネットワーク上にある大容量のファイルサーバで,ユーザIDを利用してクライアントやデザイナー,制作部門,営業などの間でファイル共有できる。またファイルをアップロードすると自動で通知を行えるのでリアルタイムでデータを参照できる。専用ソフトが不要でインターネットブラウザを利用して作業が行える。
また通信は暗号化され24時間システム・セキュリティ監視も行ってくれる。
社内でサーバを導入すると,運用管理などのメンテナンス要員が必要になるが,このようなASPサービスを利用することで不要になる。ASPのメリットは,初期導入コストが不要になり,さらにメンテナンス要員や技術習得などが不要になり,また設備や人材投資がないためいつでも止めることができるのがポイントである。

コンテンツデリバリーにはアクセス制限

制作を支援するコンテンツ管理の要素として,アクセス管理がある。ネットワーク上のどこからアクセスを許すのか,だれに許すのかといったセキュリティに対応する部分である。 これは,完成したコンテンツを配信する場合も,だれに許可するかといったことがあり,コンテンツデリバリに必要な要素である。
ビジュアルプロセッシング・ジャパンが扱うDTPターボサーバーのWebNativeで実現されているようなワンタイムパスワードのような方式をサポートしたサーバも出てきており,今後クライアントとの信頼関係の上でもアクセス制限といったセキュリティ対策は不可欠である。このためネットワークに対するセキュリティやサーバやコンテンツへのアクセス制限といった機能は,コンテンツマネジメントシステムの重要なポイントになる。

『プリンターズサークル8月号』より

2004/07/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会