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中国の印刷産業の現状と展望(概要)

■ASIA FORUM
第7回マレーシアFAGAT(2004年)
中国講演レポート

2004年7月30日

中国印刷技術協会・理事長 武文祥

   WTOに加盟後の成長は著しい。2003年のGDPは1.4兆ドル、8.5%を超える成長である。印刷の成長も著しいく2003年には19万種類の書籍、9165種類の雑誌が刊行された。その他2000種類の新聞が行された。2003年の印刷出荷額は275億ドル(3兆250億円)、GDPの2%を占める。人口1人当たりにすると21ドル

印刷企業の数は全部で163,600社で内訳は下記のとおりである。

    印刷会社
    92,400社
    出版印刷9,950社
    パッケージ印刷31,300社
    その他の印刷51,150社
    製版会社71,200社
そこで働く従業員数は300万に登る。印刷会社の資本形態では、7、000社が国営、共同組合系(集団)が24,000社、外資系が2,200社、株式会社系が17,000社、私企業が36,000社,その他が6,200社となっている。

ここ数年の印刷市場の特徴は、政府の開放政策を進めると同時に監視機能を強化したことである。Press & Publication of administration of China (PPA)という新しい印刷規定ができた。暫定印刷会社保有法、外資印刷会社設置法ができ、従来の印刷会社設立特別許可法、印刷業個人許可法などが撤廃され、あたらしい枠組みが決まられた。これによって不法印刷すなわち海賊版などの取り締まりに乗り出した。これによって印刷業の市場開放と規制が上手く組み合わされ、印刷業の健全化がはかられた。
急成長する経済発展にともない印刷業も発展したが、香港(4800社、4万人、出荷額300香港ドル、香港第二の産業)と広州を中心とした珠江(Zhujiang River Delta)で、もう一つは揚子江(Yangtse River Delta) で、その中心は江蘇省(Jiangsu)と浙江省 (Zhejiang )である。これらの沿岸地域2つに集中しており中国の生産額の3/4を占めている。香港の70%以上の印刷会社が中国本土に資産拠点あるいは、ジョイントベンチャーを始めている。

●海外からの投資

今までの投資総額は10億USドルを超えた。外資・ベンチャーの数は2200、このうち1600が広州にあり、そのうちの90%が香港からの投資である。上海には外資・ジョイントベンチャーが200ある。
一つの例として、中山市(Zhongshan City)では、1300社の印刷会社があり、その内70社が海外投資の企業。333ヘクタールの35のパッケージ会社があり、生産額は60億元である。香港のHeshan Astros Printing Ltdは、65ヘクタールの土地に、180000平方メートルの建家を保有し、大型の枚葉カラー平版印刷機40セットを設備している。従業員数は10000人で、年間生産額は275億円である。ここで生産される印刷物の全てが海外に輸出されている。
また、RRダネリー社、凸版印刷、日報印刷/西口印刷など海外企業として定着、成功している。
・課題は多い
急成長しているものの、印刷経営の側面からは多くの課題がある。管理能力の不足、小企業が多く政府依存が高い、高級品質への対応が低いのに対し低品質へは供給過剰である。国営企業の体質改善の進捗が遅い。
・製版印刷資材、機材
2003年において、中国には500の印刷機械製造企業があり、生産額8.8億ドル(963億円)で、そのうち1億ドル(110億円)が輸出されている。2001年〜2003年までの枚葉カラーオフセット印刷機の輸入金額:2363セット、12億ドル(1320億円)、 2003年の枚葉印刷機の輸入は、933台、5.07億ドル(557.7億円)。2001年〜2003年までのオフ輪の輸入は、台数が539セット、金額は4.56億ドル(501.6億円)である。 2003年だけ見ると、131台、1.26億ドル(138.6億円)であった。
・紙の消費量
出版印刷の生産量は1285万トン、消費量は1417万トン、新聞用紙は生産量185万トン、消費量は204万トン、それぞれ不足分は輸入している。
・インクの生産
メーカ400社以上、生産量22万トン、生産額46億元(632億円)

●今後の展開

  1. 企業の体質改善が第一の課題である。具体的には、民営企業や海外からの投資会社の拡大と国営企業の改革である。
  2. 第2に、マーケットメカニズムを利用してオープンで公正な競争が出来る市場を確立することである(独占状況の排除)。競争を通じて海外市場を開拓し、さらに大規模企業が主導して中小企業を共存できる新しいパターンを発達させることである。
  3. 第3の課題は、ITを使って印刷産業を近代化することである。デジタルワークフローの導入とマネージメントシステムと生産システムの統合化による労働集約型の印刷業界から技術集約化された印刷業界に変身していくことである。
  4. 第4の課題は、さらなる開放政策を推進することである。印刷産業に関連する各種規制を取り払う。大規模、中規模印刷業は発展するだろうが、小規模企業や生産性が低い企業は再編成されるか市場から退場していくことになるだろう。

    2004/07/23 00:00:00