CTPの普及
CTP化率をPS版とCTP版材の平米比率で見ると,CTP版が3割になった。半裁以上の刷版を使用するところには,CTPがかなり行き渡ってきた。CTPによって刷版や印刷の時間短縮と品質が向上した,外注費が削減されたなど,入れて良かったというところが多い。これからは半裁,4裁といったサイズの印刷機を使うところへの普及が始まってきている。 小ロット印刷ではアルミ版のCTPが必須ではない。クレオからプリナジー・エボのような,小規模向けのCTPワークフロー製品が提供されるなど,経営者がコストダウンの大きな手段はCTPだと認識しているところは導入が容易になっている。
CTP技術
現在普及しているサーマルCTPにおける開発の最終目標は無処理型CTPである。機材展などでもそれに近い製品や技術が,いろいろ発表されるようになってきた。製品化されているコニカミノルタのSimplateProは,PETベースの機上現像タイプであり,アグフアのAzuraは露光後,ガミング処理を施すだけでケミカル処理不要,10万部の耐刷力を兼ね備えた非アブレーション方式である。
参考品であるが富士フイルムのプロセスレス(無処理)CTPはフォトポリマー重合という方式で,通常のサーマルCTPに近い100〜150ミリジュールの高感度を確保して現行のCTPレコーダーで製版できる。コダック ポリクローム グラフィックスのサーマルダイレクト・ノープロセスプレートは現像や水洗が一切不要のサーマルCTPプレートで,版上の残膜は印刷機の湿し水やインキで除去する機上現像タイプ200線で1〜98%の解像度をもつ。海外で材料ビジネスに参入し始めたクレオのClarus PLは砂目を出さないスイッチャブルポリマー方式である。また,drupa2004では三菱重工業がアルミ板の代わりに繰り返し使用するスリーブ状の版を使う画期的なCTPシステムであるPRS-X1(機側製版装置)を技術発表した。装置内部でアルミの版胴(スリーブ方式)に直接,プリマー塗布→イメージング→現像し,これをカットオフ長のAB切り替えができる専用オフ輪にセットして印刷,スリーブ版を再びRPSに戻して→クリーニング→再利用するというものである。
バイオレットCTP
半裁以下の機種では露光光源にバイオレット(紫外線)レーザを用いたCTPが各種発表されるようになってきた。海外では中小ロット向けに普及しているが,日本でもやっと注目され始めた。
三菱製紙はアルミプレート用のVIPLASと,フレキシブルプレート用のFREDIAがあり,大日本スクリーンにはPlate Rite 3055Vi ,同2055Viがある。大床製作所はクラウゼ社のLS-110V,日本エーエムには小型セッタで定評のあるECRM社のMAKOシリーズCTPがある。
最初にバイオレットCTPを発売した日本アグフア・ゲバルトからは新たにPalladio 30Mが投入された。バイオレットCTPには民生用のDVDレコーダに使用されるレーザを使用し,しかも構造がシンプルな内面ドラム方式であるため,装置やメンテナンスコストの低減と長寿命が両立できるという特徴がある。しかし,開発当初のレーザ出力5ミリワット時代には高感度の銀塩タイププレートしか選べなかったが,現在は60ミリワットクラスが搭載されてフォトポリマーCTPプレートの露光も可能になった。さらに近未来に300mwレーザが実用化されると,バイオレットCTPでPS版を露光することが夢でなくなるかもしれない。
カラーマネジメント
カラーマネジメントの出発点である印刷を標準化するためには,初めに印刷機械のインキ濃度,ドットゲイン,トラッピング率,Lab値,僞値,網点の形状,グレーバランス,ゴーストの有無などが,どのようになっているかを調べなければならない。
機械の状態を調べるためには,色彩計,シリンダーゲージ,高倍率ルーペなど各種の測定器や道具が必要である。そして印刷の状態を調べるためにテストチャートで標準的な条件で印刷するが,チャートには風景・人物・静物などの絵柄,ドットゲインやベタ濃度を調べるためにステップチャートやグラデーションスケール,印刷される網点のズレなどの状態を調べるダブリゲージやスラーゲージ,見当精度を調べるスターターゲットや解像力チャート,インキトラッピングを調べるために1次色・2次色・3次色を作るベタの刷り重ねパッチ,グレーバランスを調べるためのCMY各色のステップチャートの組み合わせなどが組み込まれている。
印刷の標準化への取り組みに期待するものとしては,見た目による印刷から脱却して,数値管理によって印刷状態を把握し,印刷の刷り上り状態の均一化することが期待されている。
印刷が抱える色の問題とは,人の感覚に依存する部分が多くて表現が曖昧(あいまい)であること,印刷の色再現を経験と勘に頼っていること,印刷機は湿し水や印圧調整など,色再現に関わる変動要因が多いこと,出力機器ごとに色再現が異なることなど,解決しなければならない課題がたくさんある。
色校正
印刷品質を発注者が中間チェックするための色校正(カラープルーフ)は,オフセット印刷方式による平台校正刷りが多く使用されている。経験と勘で調整するので原理的に刷り品質は安定しない。カラープリンタ(網点なし)やDDCP(網点あり)からデジタル出力されたデジタル校正では,出力用紙も本紙でなかったり,本紙であっても表面にラミネート加工してから色材を転写するなど,用紙の中のインキが圧力で強制的に浸透させる印刷とは違う発色メカニズムが利用されている。そのため厳密には現在のデジタルプルーフと本刷りは完全に同じ発色(分光的再現)をさせることはできない。
しかし納期やコスト競争が極限にまで来てしまった中で,発注者にとっても印刷会社にとっても納得できる仕事の流れを作る必要があるので,印刷制作工程で最もスケジュールの読みにくい校正工程を合理化するための重要な技術がデジタル校正である。
色校正の作成方法は,(1)品質は安定で印刷品質に最も近く印刷網点も出力するが1枚コストが高いDDCP,(2)品質は安定していて最も1枚コストが小さいが網点なしのインクジェット方式やレーザ方式のプリンタによるデジタルプルーフ,(3)本機校正の3種類がある。これらを品質と費用対効果によって使い分ける。
CTPのもつスピードやコスト削減効果というポテンシャルを有効にするためにはデザイン・編集側と印刷会社との間でリモート校正の利用も含めて新たな体制作りが必用となる。色の確認をリモートで行うためには,発注側のカラー出力機の発色調整(キャリブレーション)の確認方法など,運用上で難しい課題もある。
環境対応
CTPプレートが露光されるところまではデジタル技術であるが,プレートそのものや現像廃液,印刷インキの残肉,湿し水タンクの洗浄廃液,各種洗浄剤,ウエスなどについての環境対応が重要になっている。
富士フイルムのCTPプレート現像システムのデジタル・スタブロンでは,LCA(ライフサイクル・アセスメント)のCO2(二酸化炭素)換算濃度で,7年間自現機を稼働させた時に使用されるエネルギーから排出されるCO2を,従来機種の45パーセントカットを実現しており,設備選択において環境のキーワードが見逃せない視点になってきた。
■プリンターズサークル 10月号企画特集より
2004/10/01 00:00:00