同じ悩みをもつ仲間(パートナー)と漫然と手を組むのではなくて、お互いが結合することによりこれまで成し得なかったビジネスの成果が具体的に望める関係(パートナー)の構築を真剣に追究することが、相手の発掘、交渉、合意形成に多少の時間がかかったとしても、結果的にはビジネスを走らせる近道になる。
「外国語の印刷」を基点とする事業を展開してきた欧文印刷(株)は、印刷とWebを融合させる技術を持った会社を意味する「e-printer」をコンセプトに、製作からサービスにビジネスの仕組みを切替えるべく積極的に取り組んでいる。
その欧文印刷の和田隆史社長は、同社のWebサイトで「マンスリー経営独言」という含蓄の深いエッセイを連載しているが、この中に、コスト競争力をつけるための海外進出に関する意見を述べた一節がある。
「現地印刷会社とのアライアンスを組むことが一番よい選択肢として考えております。現地事情・言語に精通している印刷会社と実際のお客様のニーズを肌で感じている私どもが組むことによって、お客様にとって一番適切なソリューションを提案できるものと信じているからです。さらにアライアンスのなかで、当社だけでは実現できなかった新しい生産方法が実現できるかもしれません。逆に、日本で経験した作業の繰り返し、ないしは多少の焼き直しになるならば、前に進むというよりも、留まったり、それこそ後戻りになってきます。」
そして実際に欧文印刷では、パートナーシップの構築、アライアンスの構築に真剣かつ積極的に取り組んできている。
戦略経営の世界的エキスパートである松蔭大学・中村元一教授は「アライアンス」について、
「複数のパートナー間での目的・目標、さらにリスク負担の共有と、相互間での実質的な対等性と、経営資源の相互交流があること」
とした上で、
●自社の抹消能力の負担軽減が、パートナーの中核能力の機会増大に結びつくもの(あるいはその反対)、
●自社の中核能力の機会増大が、パートナーの中核能力の機会増大に結びつくもの、
これらにほとんどのアライアンスは含まれると延べている。
そのためには、一方的に自社の利を求める考え方からスタートするのではなく、自社の経営資源をパートナー側の視点で再評価することからのスタートが重要となる。
雑駁に言えば、「営業です、買ってください」――即ち、我社の利益のために御社にコスト負担をお願いします、と持ちかけてもなかなか応じてはくれないが、「提案です。我社のこれと御社のあれとを交換しませんか?」という持ちかけであれば、少なくとも話しを聞いてみる気にはなるということである。
その姿勢を前提としながら、お互いがお互いを知り、目的を共有し合える対等な信頼関係の構築に全力をあげることがパートナーシップを戦略的なビジネスにするために決定的に重要となるのである。
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11月1日(月)開催のJAGAT「経営シンポジウム2004」では、欧文印刷の和田社長をパネリストの一人としてお招きし、松蔭大学・中村元一教授に特別講演をお願いし、戦略的パートナーシップの具体像を多角的・実践的に考えます。
2004/10/15 00:00:00