何が新ビジネスを成功させるのか? それはアイデアだけではだめ。技術だけでもだめ。それぞれの会社の得意分野を足し合わせて強力な陣営を築くことが必勝法になる。
これがパートナーシップ戦略の基本の基本である。
ではどのようにすれば強力なパートナーが得られるか? まずは数多くの情報を得て、相手を探すことである。そして、意欲を前面に出して相手を話に引き込み、お互いが何を目的にするのか充分に理解できるまで話し合い、知恵を出し合うことである。そしてお互い納得ずくで、リスクと利益を明確にしそれをお互い分かち合える「スキーム」を組むことである。
これまで「提携」と言ったとき、お互い相手の経営資源を曖昧に把握したままに、あそこと組むことで「あそこがこうやってくれるだろうからウチにメリットがあるだろう」と、状況を直視し分析しないままで、相手に過剰な期待感をかける形でおおざっぱな絵を描くことが多かったのではないだろうか。
そこにはリスクも少ないものの、利益も明解でないことが多かった。
当然ビジネスは走らない。
お互いに目的をきちんと共有し、きちんと役割分担を決め、明快な成功条件(あるいは撤退条件)を決めた上でやらなくては成功できない、ということである。
安全地帯に引きこもっていては事業は縮小するばかりである。ではチャレンジをと言って投資すべきは、設備だけではないのである。まず情報に投資し、そしてパートナーシップの構築に投資することが、少ないリスクで新ビジネスの可能性を広げる近道なのである。
昔、「ひと・もの・かね」と言われた経営資源に今では「情報」が同格で含まれている。ひと・もの・かねのどれ一つ欠けても経営が成り立たないのと同様、情報が欠けても成り立たない時代なのである。
情報は継続投資して常に蓄積更新していく必要がある。そして、パートナーシップを成功させるための情報とは、マクロな業界情報であり、異業種情報であり、顧客側(取引先)情報であり、事例情報である。
この事例情報で言えば、印刷会社でもユニークなパートナーシップで事業を推進している会社がいくつもある。
例えば、1929年創業の京都に本社を置く日本写真印刷(株)は、1946年に創業の鈴木尚美社を中心に京都の印刷業者15社の企業合同により有限会社として設立している。高級美術印刷に実績をもつ同社では、取引先の出版社・淡交社との戦略的なパートナーシップをはじめ、加工・制作のビジネス領域拡大のための取り組みを積極的に推進している。
1946年設立の欧文印刷(株)は、全国主要都市の印刷会社15社で提携する「EPC-Japan」をはじめ、制作からサービスへとビジネスの仕組みの切替えを目指し、数々のパートナーシップ戦略に積極的に取り組んでいる。
1852年創業の紙卸商が本業の(株)角谷商店は、2002年、楽天ビジネスに参加し印刷会社多数をパートナーにEC展開を行ない、同年と翌年の2年連続で楽天ショップオブザイヤー・ビジネス賞を受賞し、その取り組みが顧客から高い支持を受けている。
これら印刷会社にふさわしいパートナーシップの成功事例をヒントに、自社の経営資源、即ち自社の技術、設備、人材、ノウハウ、情報、土地、人脈等などを再点検してみると、これまで気付かなかったパートナーの可能性と事業展開の可能性も見えてくるのではないだろうか。
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11月1日(月)開催のJAGAT「経営シンポジウム2004」では、日本写真印刷(株)、欧文印刷(株)、(株)角谷商店をお招きし、パネルディスカッション形式で、印刷業にふさわしいパートナーシップの具体像を実践的に考えます。
2004/10/25 00:00:00