紙メディアやWebなどを単独で制作することの方が例外になりつつある。印刷業界の場合,主たる収益が印刷から得られるとしても,土台はクロスメディア対応することで,効率的なビジネス展開ができるようになるし,電子メディアが生み出す新ビジネス領域へ踏み出すことができる。しかし,クロスメディアはITと密接に関係るすため,変化が早い。
PAGE2005のクロスメディアトラックでは,JAGATにおけるメディアの動向調査やcall for speaker(スピーカー募集)をあわせて検討し,現在最も重要と思われるテーマを6つのセッションに集約したのでここに報告する。各セッションではモデレータ,スピーカーの方々に2〜3年先の方向性を見据えながら,先進的な取組みや技術について活発に議論していただく。
C1 ネットが生み出す新ビジネス(2/3 10:00〜12:00)
ネットワーク上でのビジネス展開は急速に拡大を続けている。特にこの1〜2年で,消費者はより気軽に携帯電話で物やコンテンツを購入しつつある。ネット上のコンテンツで最も勢いのあるものは音楽である。イプシ・マーケティング研究所の調査によると,携帯デジタルオーディオプレーヤや楽曲ダウンロードサービスの認知度は9割にも達するという。
情報を発信する,物を販売する,コンテンツを販売するというWebで定着しているビジネスは,ブロードバンド環境が整い始めた携帯電話でも広がりつつある。これは,業界の中でも常に新しい挑戦を続ける大日本印刷や凸版印刷の取組みをみてもよくわかる。大日本印刷の子会社である株式会社モバイルインパルスは,携帯電話でターゲットを絞り込んだファッション系の物販サイト「オシャレライフ 」(携帯サイト:http://www.oshare.jp,PCサイト:http://www.ol-dmck.com)を運営し,凸版印刷のビットウエイは新たにモバイルでもマンガや書籍など出版系のコンテンツ販売を開始した。
C1セッションでは,インターネットビジネスの調査・コンサルティングをてがける(株)イプシ・マーケティング研究所 代表取締役社長 野原佐和子氏が,Webからモバイルへ広がるネットビジネスの市場動向や利用者の傾向などを分析し,株式会社モバイルインパルス 代表取締役社長 澤居大介氏からは携帯電話の公式サイトで物品販売のビジネスについて,また凸版印刷 小林泰氏からはコンテンツ流通のインフラであるビットウエイの,モバイルへの新しいサービス展開についてお話いただき,ネットを使っての顧客ビジネスサポートの今後の広がりを考える。
C2 教育の柱となるeラーニング(2/3 13:00〜15:00)
効率的に短期間で学習効果をあげるeラーニングは次第に盛んになっている。大学では通信教育のeラーニング化や電子図書館との連動を行っている。企業内教育では新規事業を短期間で立ち上げるための技術習得に利用され,補助教材的立場から知識習得の柱に向けて,実用段階に入っている。
早稲田大学人間科学部では、eラーニングによる通信課程「eスクール」を開始して2年目を迎えた。eスクールの立ち上げから現在の運営を統括みているのが人間科学部 向後千春 助教授である。富山大学でPersonalized System of Instruction(PSI)方式で統計を教えてきた実績をeラーニングにいかし,生徒の学習速度にあわせた効果的な教材提供をする等,さまざまな工夫をこらし,修了率を高めている。
富士通は社内の人材育成戦略・システムを一元化するため,2002年にFUJITSUユニバーシティを設立した。事業戦略に沿った人材育成を行うという点では先進的な取組みを行っており,eラーニングは重要な要素として活用されている。
セッションでは,eラーニングについての調査を重ねてきたeラーニングコンソシアム会長でもあるNTTラーニングシステムズの小松秀圀氏にモデレータとして,海外や日本のeラーニングの最新について解説していただくとともに,早稲田大学 人間科学部 助教授 向後千春氏に大学のeラーニングについて,富士通 FUJITSUユニバーシティ所長 山村弘氏に企業教育のeラーニングの進み方を考える。
C3 用途が拡がるBlog(2/3 16:00〜18:00)
ブログが日本に入ってきた当初は,技術系の人たちがフリーで提供されていたMovableTypeのベータソフトやMovableTypeなどを使ってブログサイトを立ち上げた。日記やテーマごとに自分がチェックしたサイト情報を次々に乗せていった。しかし,悪意を持ってブログにプログラムで大容量データを送り込むなどの攻撃もあり,運用管理が大きな負担となっていた。その後,プロバイダやポータルサイトが無料ブログサービスを開始し,プログラミングの知識がない人でも手軽にブログサイトを立ち上げられるようになり,個人で爆発的に広がった。
その洗練された機能と利用の簡易さにより,企業でも商品情報やイベント情報をブログにしたり,日本総合研究所のようにグループウエアとして活用するところもでてきた。 数の増えるブログの市場性を見込み,新たなサービスも登場している。サイバーエージェントはブログの記事に合わせて広告を配信するキーワードマッチ型広告「Seesaaキーワード」を開始した。
セッションでは,技術系のパブリッシングたずさわり,自らもMovableTypeでブログを構築・運営した経験のあるインプレスホールディングス 田村明史氏をモデレータにむかえ,MovableTypeを提供するシックス・アパート 平田大治氏にブログ利用の方向性について,日本総合研究所 仙波修氏にグループウエアとしてのブログの可能性について検討する。
「顧客サポートに必須のクロスメディア(2)」
2004年12月23日(金)掲載予定
内容:PAGE2005 クロスメディアトラック(2/4)
C4 変わるコンテンツ管理/ワークフロー,C5 クロスメディアプロモーション戦略,C6 ネット動画がビジネスを変える
●PAGE2005:http://www.jagat.or.jp/page/
2004/12/21 00:00:00