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情報公開・業務改革のためのドキュメントマネジメントとXML

2004年10月のテキスト&グラフィックス研究会では,地方自治体における文書管理と広報業務におけるXML活用について,XMLソリューションのコンサルタントをおこなっているドキュメント・エンジニアリング研究所の寺澤氏に,お話を伺った。

自治体の業務と文書処理

自治体の事務部門についてのある調査では,全体を10とした場合,1割が会議のための移動時間や雑務,庶務的な業務であった。3割が,計算・伝票処理等各種手続系作業である。例えば住民票の発行や,年金の収受に関するような定型業務の比率は3割程度である。電子自治体などが推進されているが,その対象は全体の3割である。残りの6割は,思考的・準思考的作業である。担当者はいろいろな資料や統計資料等を見て,ExcelやWordを使い資料を,ドキュメントを作る。自治体が何かの事業を計画するとき「何々事業計画書」として,印刷物を作る。そこに至るプロセスの積み重ねが6割の仕事である。
この6割の業務に一番近い存在は,印刷会社ではないか。印刷会社は,説明資料を元にした計画書や報告書,その大元になるマニュアルや規定文書の例規集といった印刷物を請け負っている。これらの印刷物を単独で考えるのではなく,フロー全体の中で,例規集や議会の会議録,報告書がどう位置付けられるのかを考えることが,今後のクライアントの業務改善にもなり,印刷会社のビジネスチャンスにもなる。

顧客の一連の業務・コンテンツフローを支援

たとえば福祉部門が福祉事業を考えるとき,関連する事業計画のドキュメントを集める。他の自治体の事業計画や,厚生労働省の計画体系や県の計画体系,市の総合計画などを参考にしたり関連を考慮して計画体系をまとめる。しかし,この過程でクライアントが何より困っているのは,各体系を付き合わせて関連性をリンクさせていくような作業である。昔は,大きな紙に短冊を貼って,関連をチェックしながら作業をしていた。今はパソコンの時代になり,WordやExcelでコピー&ペーストするようになり,少しは便利になった。しかし,計画体系の細かい枝葉は数百もあり,それぞれのリンクの関係性を手作業で追いかけるとなると,たいへんである。こういう部分で苦労して事業計画を立案している。

今までの多くの自治体でおこなっている情報公開では,事業計画書,中間報告書,事業報告書というアウトプットを見せる程度であった。ところが,最近はこのサイクル全体の関連性を情報公開すべきと変わりつつある。そうなると,事業計画書,中間報告書,事業報告書だけでなく,事業の進捗をどのようにドキュメント化して管理するかも,大きな課題となる。PDFにしてWebにアップしておけば済むということではなく,一連のワークフローや全体の関連性をいかに見せるか,という課題が生まれてくる。
通常,県の仕事は約3,000事業ある。市でも1,200〜1,300事業である。県で1事業1ページで事業評価を表現したとしても3,000ページである。
今後,先進的な自治体では事業評価を公開するような方向に進むだろうし,データベース型で新しい情報をアップする仕組みが必要となるだろう。

自治体広報誌のデータベース化提案

数年前,札幌市に対して地元印刷会社数社と一緒に広報業務を分析し,現状と今後の課題をまとめるプロジェクトがあった。その結果をもとに,広報業務の見直しが徐々に始まっている。
当時の札幌市の広報セクションでは,各課からの原稿をWord,一太郎,OASYSのデータか,または手書きで集めていた。原稿にはタイトル,セクション名,電話番号を入れるといったルールを示してはいたが,実際には統一もされていなかった。手書きの原稿は,広報担当者が入力し,校正を見てもらう。様々な種類のデータを変換したり,テキストだけ取り込むといった手作業での文書修正をしていた。
さらに,年度途中に広報年鑑を作ることが決まると,印刷物の記事を切り抜き,分類し,時系列に並べて大きな紙に貼り付け,それを印刷会社に持っていく。印刷会社では,文字データをもう一度入力し,校正のために広報課に戻すという非効率なことがおこなわれていた。広報誌の内容はWebに情報を出すが,札幌市の当時の発注ルールでは,紙媒体は印刷会社に出し,画面に載せるコンテンツはWeb制作やシステム会社に発注するというルールであった。したがって,同じ原稿を印刷会社とWeb制作会社に渡し,別の担当者が同じように校正作業をおこない,印刷物とホームページを作っていた。

今後の広報セクションの姿として提示したのは,以下のようなものである。
各課にテンプレート化したツールを渡し,一定の範囲で原稿を書いてもらう。あるいは,ブラウザの穴埋め式で入力させてもいいし,Wordのテンプレートを作ってルールを決めて入力してもらうのもいい。
Webに配信するには,データベースと連動させる。広報情報の入力テンプレートで入力してもらうと,Webサーバに登録される。そうすると,登録したその日に市民や県民にオープンにできる。
印刷物の広報についても,データベースに原稿情報が登録されていれば,自動組版のプロセスを用意しておき,あるパターンの中に流し込んで組版すればよい。例えば,データベースの中に高齢者向けの情報という属性を持たせておけば,高齢者向けの広報誌を別に制作することも,容易である。さらに,広報紙に載っている情報を活用して,別な印刷物を提案することもできる。Webについても,毎日新しい情報が登録されてアップすることによって対応できる。
これが札幌市の調査研究プロジェクトとして取り組まれた内容である。

山梨県庁による広報情報のXML展開

山梨県庁では,XMLで広報を作っている。非常に簡単に現場の課から新しい広報情報をアップでき,それを全体として管理できる体制が運用されている。もともとは,各課1ページと決めて,ホームページビルダー等を使って作っていた。そうしているうちに,全体で数万ページ単位になってしまった。各課で勝手に作っているので,県民が見に来ても,どこに何があるのか分らない。
そこで,Web部門が予算を取って,地元のシステム業者からデータベース運用ができるような仕組みを公募したところ,ある会社がXMLでの情報管理を提案して実現した。

このシステムでは,新聞記事管理の標準フォーマットNewsMLが採用された。県では,県のサイトが市町村のコンテンツのポータルの役割をすることを目指し,甲府市や周辺の市町村との間で,NewsMLを使った情報連携の実験事業に取り組んでいる。
広報情報は印刷物でも発信しているが,この話には,印刷物制作は考慮されていない。県では,WebをどうするかWebの業者に相談した結果,Web部門の予算でシステム構築をおこなった。一般的なクライアントの意識として,印刷とWebは遠いものだと思っている人が多い。具体的に,クライアントの業務一つひとつに適応し,商品メニューを作って印刷会社から提案していくことが,重要である。
山梨県庁では,来年度の検討の中で,印刷との連動に向けて取り組むということである。

(Jagat Info 2005.1号より転載)

2005/01/06 00:00:00


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