eJapanという大目標があって中央官庁からの支援策もいろいろあるのだろうが、地方自治体のIT対応力の向上はなかなか進んでいるようには見えない。一方で民間のECサイトはユーザ数が1000万人単位のところがいくつも活躍していて、地方自治体よりもはるかに大規模な処理や多様なサービスが展開されている。ポータルサイトの地域情報ですら、地元自治体のサイトの情報よりも充実している場合がある。
自治体がダメで民間がOKというわけでもない。銀行の統合も外資の入ったところでは新たなサービスが始まって、好評になったところがあるかと思えば、ドメスティックな銀行同士の統合は社内がずっと2系列のままで、新サービスといえば無利子預金を始めるなど、全然業務改善とは程遠いことを行っている。ITという破壊的な道具は、既存の秩序に切り込む時には有効だが、既存の置き換えだけに使うと金食い虫で無能なものかもしれない。
同じITを使っているところでも仕事の結果は正反対になるのは、ITベンダーは必ずしも顧客を賢くはしないということだし、顧客の体質強化もしないわけで、第一義にしているのは従来のIT関連製品の売上高の確保であろう。その意味ではコンピュータ技術がダウンサイジングしても顧客から可能な限り吸い上げているITベンダーの方が一枚上手といえる。
eJapanの各プログラムの中でなかなか実体の伴わないところは、動機が税の無駄使いをなくして住民サービスの向上をするという根本的なところから外れて、国際的な体面や、あるいはITベンダーとの癒着などに比重がいって、予算は消化するが目標達成は計測しようがないような計画を立てる場合がある。当然何の改善にもならない。
しかしそのようなITベンダーの呪縛から自由な立場にいる人は、ポストITバブルのインターネット上の覇者のように、自分のビジネスのビジョンから戦術プランとIT開発のすべてを自力でコントロールして、非常にパフォーマンスの高い経営をしている。ITバブルまではIT化すれば経営がうまくいくとか、ビジネス特許をとればオイシイという錯覚があったが、その後に起こったことは、二番煎じの戦略にいくら投資してもしても、先頭には追いつけないことである。
経営戦略とIT戦略のマッチングが好循環していくことにより、ECにおいてもひとつの民間サイトが、地方自治体はおろか、小国の経済を上回るようなコントロールができるほどになる。恐るべき寡占化がおこりえるようになった。銀行などは自己崩壊していったが、これから商売の分野ではネット上のビジネスと競合して疲弊していく会社もあるだろう。さて、あなたの会社にとってはITは味方ですか? 脅威ですか? どちらのようになりたいですか?
PAGE2005基調講演(2005年2月2日)では、【A0】Web:飛躍の原動力――ネットの計り知れないポテンシャルを土壌として において、ポストITバブルで短期間に急成長を遂げた,Webビジネスの世界的な成功モデルである,楽天,アマゾン,グーグルという代表的企業3社がはじめて一堂に会し,それぞれのインターネットに対する着眼点,独自の技術,顧客満足,計り知れない可能性について議論を行う。
それぞれWebへのアプローチの仕方は独自でありながら,一般には捉えどころのないWeb上で基盤を確立し,ITとサービスの組み合わせで循環するビジネスの組み上げ,リアルのビジネスでは考えられない「急拡大」を続けている秘訣は何か? 急拡大をもたらすネットの持つ「ポテンシャル」とは何なのか? サービス,技術,あるいはポジショニング,発想力などさまざまな観点から「Webビジネスの巨人(成功者)」の発見したネットの持つ計り知れない可能性を伺い,経済の重点がどのようにネット上にシフトしようとしているのかを考える。
今WEBを経由して何んでも買おうと思えば買える。しかしそうする必要もないものもある。だからといってネットワークが自分のビジネスと無縁でいられることでない。どこかで誰かがネットビジネスの先輩たちをヒントに独特の戦略を考え出してIT化すると、WEB上での取引の競争に火がついて、それがリアルビジネスに飛び火することが多くなっていくからだ。一体ネットワーク上で何が既に起こっているのか、それを踏まえて自社の戦略を見直してみるべきだ。
PAGE2005特別連載 その1
2004/12/24 00:00:00