本社は大阪市中央区にあり,1949年に製版業として創業。
現在,東京事業所をはじめ,神戸,名古屋,香港などを拠点に営業活動を行っており,社員数230名で大証に上場している。
主な扱い品目は,チラシやパンフレット,カタログなど商業印刷全般である。また,電飾やサインなどディスプレイ事業もおこなっている。
東京事業所は営業の主要拠点であると同時に,DTPを中心とした製版部門がある。その他,近年では江東事業所に印刷部門を設置している。
また,製版・印刷の他に,CoreSeparation,CoreImpositionに代表されるアプリケーションソフトの販売事業と,ダブル・クロックというデジタルサポートセンター事業をおこなっている。ダブル・クロックは,当初はフィルム出力が中心の出力センターであったが,現在は印刷会社やデザイン・制作会社を顧客としたプリントショップ(印刷サービス)に変わってきている。
デジタル化については,1990年代はじめ,組版工程へのEdianシステム導入からスタートし,さらに数年後にはMacによるDTPへと移行していった。
製版の技術を中心に,企画・デザイン,印刷までの一貫体制を取っていることが強みである。
■テクニカルコーディネータの強み
東京事業所の企画制作部は,製造部門の技術スタッフと営業サポートとしての役割を担っている。以前は技術部と呼ばれる部署であった。
営業部門の仕事は単なる印刷営業活動に留まらず,得意先の困っている点やボトルネックをチェックしたり,改善することも含まれている。企画制作部では,得意先とのやり取りを改善するため,営業と同行し,テクニカルコーディネータとして,顧客サポートをおこなっている。
さらに,得意先にて勉強会を開催し,顧客側の知識向上のサポートをおこない,さらなる信頼獲得や受注活動にもつなげている。
これらの活動により,技術の蓄積と提供が可能になり,顧客である印刷会社との良好な関係を築くことができ,顧客も信頼して相談をもちかけてもらうなどの効果を上げている。
■幅広い分野への事業展開
数年前までの印刷業界では,Microsoft社のOfficeに代表されるWindowsアプリケーションのデータ入稿への対応に困っていた。WindowsデータはRGBであり,また面付けする手段もなく,問題となっていた。
光陽社では,Windowsデータを活用した印刷がさらに増加することをいち早く察知した。韓国光陽社設立の経緯もあり,ソフト開発会社との技術交流が始まり韓国メーカーと契約を結ぶことになった。それが,Windowsデータ用RGB-CMYK分版ソフトCoreSeparationと,Windowsデータを専門的な知識なしで面付け処理するソフトCoreImpositionであり,光陽社が日本仕様の製品化と販売をおこなった。
これらのソフトウェアにより,多くの印刷会社でWindowsビジネスアプリケーションからの印刷が,簡単におこなえるようになった。現在では,約1,000ユーザの導入実績がある。
本業は製版・印刷であるため,これらのパッケージソフト販売当初は,問合せへの対応やサポートに苦労した。しかし,元々はユーザでもあるため,使う側の気持ちも良く分かっており,徐々にサポート体制も整備することができた。そのことがこれらのソフトのユーザをある程度満足させることができた理由でもある。まもなく次期バージョン(新製品)をリリース予定である。
また,DTPを活用した「easyBook」という電子ブック作成サービスをおこなっている。現在,紙への印刷だけでは需要は喚起できない時代になりつつある。紙とWebなどのデジタルメディアを組み合わせてプロモーションをすることは当たり前になったが,さらに使い勝手がよく,印刷データとWebに掲載するデータが同時にできることが求められている。
easyBookは,印刷用DTPデータをそのまま使用して,容易にWeb上の電子ブックを作成することができるツールである。このツールでは,DTPで作成したPDFデータをドラッグ&ドロップするだけで,電子ブックが作成でき,コストも安いのが特徴である。また,HTMLなどのコーディングの知識がなくても容易に利用することができる。
出来上がった電子ブックは,Webブラウザさえあれば,新たにソフトウェアをインストールすることなく,誰でも容易に見開き表示し,利用することができる。このような電子ブックは,印刷とWebを組み合わせたプロモーションツールとして,効果的な情報配信に効果を発揮するだろう。通販カタログ,IR発信,社内文書の閲覧など多くの用途に活用でき,印刷物製作との相乗効果を狙うことができる。
この電子ブック制作ツールは,プロユースのパッケージソフトとして近日発売を予定している。
■製版で培った技術を活かした活動
製版・印刷業界は,現状ではDTP単独ではなかなか事業として成り立たなくなりつつある。光陽社としても例外ではなく,製版の前工程から後工程まで視野に入れるようになった。
印刷事業を手がけるようになって,印刷工程を数値で管理するには,印刷機のメンテナンスが基本であり重要なポイントであることをあらためて認識している。
また,近年ではデジタルカメラによるRGBデータ入稿が,全体の過半数を超えるようになっている。しかし,RGBデータ入稿といっても,入稿する側で正しく理解されていないことも多く,順調にいかないことも少なくない。RAWデータによる入稿など,課題もあるが,このような問題にも着実に対応している。
さらに,新しいスクリーニング技術を利用した高精細印刷や,3DによるPOP,ディスプレイ制作などの事業展開も多岐にわたる。これらは,生産活動そのものであると同時に,営業活動に少しでも活かせるツールになっている。
また,自社の標準的な印刷特性,印刷条件を反映したICCプロファイルを作成し,場合によっては協力関係にある印刷会社に渡している。自社のICCプロファイルをそのまま使うということではなく,そのプロファイルをベースにして調整することにより,印刷機の色合わせがスムースに運び,色合わせによる無駄な時間を削減することができる。
光陽社のセールスポイントは,技術的な検証をしながら顧客と相談し,ベストの制作プロセスを構築し,ベストの商品につなげていくことである。これらは,これまでの技術力の蓄積によるものであり,またこの過程が今後の蓄積となっていくものである。
コアは製版の技術であり,カラーマネジメントの技術,RGBデータの変換技術など培ってきたさまざまな技術を踏まえ,得意先の困っているところを解決しながら,さらなる技術開発や受注につなげていくことが会社のポリシーである。
現在,1bit TIFFやPDF,カラーマネジメントを中心とした技術を,ワークフローの中に盛り込んでおり,これらをアピールしている。多くの印刷会社と取引があり,それらの技術・ノウハウを活かし,それぞれの会社の特性に合わせたワークフローの構築を考えている。
今後は,製版を中心に前工程であるデータ制作から印刷までをトータルに受注する企業として成長し,製版の技術を自社の誇りとして,時代に合ったワークフローを相互に構築するパートナーとしての発展を目指している。
■研究会の意義と要望
DTP関連では,Mac OS XやInDesignの使用状況など,メーカーから発信される数字ではなく,より実態を反映した情報や,設備投資に関わる情報が欲しいことがある。テキスト&グラフィックス研究会では,今まで以上にさまざまな場面の製版会社,印刷会社の事例を発信してもらいたい。
また,JAGATが推進しているプリンティングコーディネータは,デジタルをベースした品質管理,表現支援,合理的な制作・製造手法の中核となる人材を指すようであるが,より技術的なサポートを中心とした役割を持つテクニカルコーディネータも必要ではないだろうか。
今後もテキスト&グラフィックス研究会を通して,さまざまな有効な情報をいただきたい。
2005/01/29 00:00:00