楽天で印刷物受注?
楽天株式会社が運営する日本最大級のネットショッピングサイト「楽天市場」を,よもや知らない読者はいないだろう。仮に知らないとしても,昨年,半世紀ぶりにプロ野球に誕生した新球団「東北楽天ゴールデンイーグルス」関連のニュースで,楽天の名前ぐらいは耳にしているはずだ。
その楽天で印刷物受注が可能だということをご存じだろうか。そしてその成功事例が,先月号でご紹介した金沢市で紙問屋を本業として展開する角谷商店である。
角谷商店で楽天ビジネスを担当する営業部長代理石倉奨氏に,楽天ビジネスに関連した売り上げはどのくらいか尋ねると,たぶん皆さんが想像する以上だと語る。具体的な数字は上げなかったが,通常の印刷会社で一人の営業担当者の受注額に匹敵,あるいはそれ以上はあるだろうというニュアンスの回答を得た。新規開拓に四苦八苦している状況で,インターネット上に新規取引の可能性が広がっているのである。
楽天ビジネスって何?
さて,ではこの楽天ビジネスとはどのようなものなのだろうか。
まず楽天ビジネスを運営する「楽天株式会社」だが,ネットショッピングサイト「楽天市場」を運営するほかに,楽天トラベル,楽天証券など多方面に事業展開を行っている。
その中で,楽天ビジネスは2000年12月にスタートした。その内容は企業間取引の仲介業務を,インターネットを利用して行うものである。
楽天ビジネスは,3万8000社以上が出店して,530万人の会員を有する日本最大級のネットショッピングサイトである楽天市場の集客力を最大限に生かした「ビジネスの出合いの場」を提供している。
ここではあくまで,最初の結び付きを提供するだけであり,コンサルテーションという形で実際の商談を行うまでを楽天側が黒子となって進めるが,その後の商談については当事者間のやり取りとなる。
58ジャンルに及ぶ発注依頼
楽天ビジネスでは,コンピュータ・IT,クリエイター,印刷・プレス,営業支援,オフィス・人材,国家資格関連業務,専門サービスのカテゴリーで,58のサービスジャンルがある。ちなみに印刷物は,印刷・プレスのカテゴリーの中にある。昨年末からはこの印刷・プレスはさらに,「CD,DVDプレス」「名刺,封筒,伝票」「包装,パッケージ」「特殊印刷物」「パンフレット,印刷物全般」と,よりジャンルが細分化された。
印刷業界の受注対象になるものとして,印刷・プレスの中のジャンル全般,そのほかのカテゴリーでもコンピュータ・ITのホームページデザイン,クリエイターカテゴリーのコピーや企画,デザイン,DTPのジャンルが上げられるだろう。
サービスジャンル全般を見ると,比較的コンサルティングのような調査,各種の代行サービスなどの,モノの納品が絡まない仕事が多い。これはもともとは,このサービスがSOHOや起業する人などを対象として,名刺や封筒を作成する,法人登記をしたり,営業活動用のグッズを制作したりという範囲のサービスを想定していたことにあるという。加えて,インターネットとの融和性ということもあるようだ。
楽天ビジネスに参加するには
楽天ビジネスではどのような形で仕事が流れていくのかを,発注側と受注側の流れで追ってみる。
発注側は楽天ビジネスのトップページなどから見積もり依頼のフォームで会員登録し,依頼したい仕事の内容を入力する。その情報をいったん楽天側が受け取り,発注依頼者に対して電話確認を行っている。これは見積もり依頼事前承認制度と呼ばれており,ここでは見積もり依頼者の所在確認など,登録電話番号が間違っていないか,フリーメールの登録はできないのでメールアドレスについてなど,信頼性を高めるための確認作業を行っている。このほか,登録内容についてはあらかじめ設けている項目の記載漏れなどもヒアリングで確認する。
その後,出展企業からの見積もりを取得して,各見積もりを検討して業者選択を行う。選択した業者と詳細について直接打ち合わせを行い,合意できれば契約ということになる。
一方受注側は,まず楽天ビジネスに出展を申し込み,アカウントの発行を受けて出展情報を入力し,楽天ビジネスのWebサイトにPRページを掲載してオープンする。このPRページに印刷会社であれば,どのような印刷ができるのかやこれまでの実績などを掲載する。これが完了後に,見積もり依頼を受信して,見積もり・提案を入力していく。後は発注側の流れと対応する。
楽天ビジネスへの出展料は法人の場合には現在,月額2万円で個人は6000円となる。このほかは商談の申し込みの発生があれば,紹介手数料ということで,受注側は1件ごとに2000円(資本金5億円未満の法人の場合)または3000円(資本金5億円以上の法人の場合)の金額が必要となる。これが楽天の収入となる。紹介手数料とはマッチング成功料という形であり,この後商談が成立しても新たに料金は発生しない。また,楽天ビジネスを利用する上で,仕事を依頼する側は特別に費用の負担は発生しない。
また,楽天ビジネスでは出展の段階でスタートアップ講習会を開いている。これは定期的に開催しているもので,毎月東京で2回,大阪は隔月で1回行っている?。そこでは,インターネットで本格的に受注活動をしていくための基本をセミナー形式で行っている。
(『プリンターズサークル』2月号より)
2005/02/07 00:00:00