コンテンツ制作の仕事は増えているはずなのに、グラフィックアーツの業界は緩やかに縮小をしている。制作ツールの向上による効率化やITによる自動化が進むことで、従来の作業は、紙であれWebであれ、価値の低下とか少人数でできるようになるので、サービス供給者が減るのは必然だ。近年のPAGEの展示会においても、際立った新製品以外はなかなか集客できないので、全体としても参加者数が増える方向にはいかない。しかし製品とあまり結びつきのないPAGEコンファレンスの方は人が増えている。 PAGE2005基調講演報告「 複合化し、新たな価値をうむ Webビジネス」では、GoogleNewsのように、人が編集にかかわっていないWebページすらあるほどで、技術革新が止まったわけではないが、製品化には何らかのギャップがある時期に入ったと考えられる。
近年はコンテンツ制作加工のビジネスにテコ入れする技術としてXMLを習得すれば道が拓けるかに思われたが、今すぐメリットが出るようなものはなかなか見つからなかったようだ。要するにベンダーもユーザーもXMLを看板にするものは一時的に減ってしまったとみられる。実際はXMLのデータがかなり作られるようになり、ビジネスでは使える環境がでてきている分野が増えているのにもかかわらず、グラフィックアーツでは逆の現象が起きている。
DTP普及の歴史というのは、文字組版、トレス、画像、……面つけと、部分部分をデジタルに置き換えていくものであったが、デジタルコンテンツビジネスの活性化のためには、どこか一部分を強化すればよいというものではなく、トータルにビジネスを見直す必要がある。しかもXMLはいろんな局面で使われているので、それらがどんな課題解決に使われようとしているのかをちゃんと位置付けて、自分のロードマップを作る必要がある。ここらがうまく整理されていないように見受ける。
DTPの作業に関連するXMLだけでも、作業の内側と外側のものがあり、大別すると4種の違う局面がある。まずコンテンツの外側からくるのは作業指示すなわちJobTicketであり、JDFとして進んでいる。またそのコンテンツがどういうものかを示すのがXMPとかNewlMLである。作業の内側で必要となる情報は、写植でファンクションと呼んでいたような原稿のマークアップをXML化したJobごとに個別のもの、AdsMLや何々MLのように分野ごとに決められたセットがある。それぞれの専門家に聞けば、それぞれ重要だというだろう。いったい何から取り組むべきか、どんな価値向上が図れるかは、各仕事各社各様であり、自分で考えなければならない。
しかしこういった全体的で戦略的なことは現場から発想しにくいのではないだろうか。だから現場のよくできる人をPAGE展示会に行かせただけでは何の前進にもならない恐れがあり、また出展社にしてももっと理解している人に来てもらいたいと思うだろう。つまり今は現場任せではダメで、経営者の出番である。上記のことにひらめきのある自分自身かキーマンを擁したところにチャンスがあるといえるが、なかなかそうもいかないだろう。
では業界全体でどのような手が打てるだろうか。昔のコンピュータ化のように時間がかかっても一気にトータルな統合的なシステムにして効果をあげることはできないので、短期間に部分的に改善を積み重ねていくしかない。作業の部分的なところではよいモジュールが使われているので、それらを組み合わせてマルチベンダーで使えるように標準化の導入や業界標準を要望していくのがひとつの道である。もしこれができないと多くの印刷企業は情報加工という点では沈没していき、PDFを受け取って刷るだけになってしまうであろう。
なぜなら、DTPよりも後から出てきたWeb制作の方が先にXMLによるコンテンツ管理やオートメーションが進みだしているので、メディアの設計や編集工程はWebの方に中心が移ってしまうからだ。そういったところのコンテンツの2次利用で印刷もされるようになり、それは高解像の画像に差し替えてPDFを作ればオワリの世界になる。AdobeがCSによってJDFやXMP対応の製品群に作り変えたことは、AdobeにとってはもしWeb主体に移行しなければならない時の保険かもしれないが、印刷業界からみれば印刷主体で今後とも居られる最後の望みのようなものである。オープンなDTPに対応しなかったプリプレスが消滅せざるを得なかったように、オープンなITに対応しないコンテンツ制作にも生き残る道はないであろう。
PAGE2005報告
その1:複合化し、新たな価値をうむ Webビジネス
その2:XMPとJDFで、印刷制作のオートメーションへ
その3:印刷か、Webか、これからのコンテンツ制作の本丸はどちらに?
2005/02/05 00:00:00