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商域を広げるモバイルビジネス

2005年2月3日,PAGE2005コンファレンスで開催されたクロスメディアトラックの「ネットが生み出す新ビジネス〜急成長するモバイル」では,(株)イプシ・マーケティング研究所 代表取締役社長 野原佐和子氏,(株)モバイルインパルス 代表取締役社長 澤居大介氏,凸版印刷 Eビジネス事業部 ネットワークビジネス本部 部長 小林泰氏がモバイルビジネスの最新事情について紹介した。


若年層が牽引するモバイルマーケット

インターネットやモバイルコマースの市場調査を行う(株)イプシ・マーケティング研究所 代表取締役社長 野原佐和子氏は,同社のアンケート調査によると,約6割が月に1回以上携帯ウェブサイトへアクセスしていると報告した。特に若い世代はアクセス頻度が高く,10代では8割以上が月に1回以上アクセスしているという。

携帯のメールやウェブサイトを利用する時間帯は朝の7時台と夜の23時台と2回ピークがある。特に就寝前に自宅で利用するケースが多いという調査結果がでている。これは,モバイルコマースが活発化する時間帯でもある。実際多くのモバイルサイトの運営者は,夜の10時くらいから徐々にアクセスが増え,午前4時ごろにおさまると話しているという。モバイルコマースは従来のビジネスの時間帯と全く異なるのである。

モバイルコマースの有料コンテンツサービスについては,定番の着メロ,待ち受け,ゲーム,ニュース・天気予報が上位に入る。個別にみていくと実は購入する年齢層が異なるという。着メロは幅広い年齢層が購入するが,ゲームは若年層が中心で,ニュース・天気予報は40代後半以上が購入しているという。

一方,物品を購入した経験者は男性は20代後半〜30代,女性は10台から20代が主な購入者層となっている。またPCと携帯との関連性はあまりないと野原氏は指摘する。PCでインターネットショッピングをよく利用する人が,携帯電話での購入に感心が高いとは限らないという調査結果がでているからである。

携帯電話でのコンテンツやサービス購入は普及しているが,まだまだ,物品購入経験者は少ない。野原氏は「これは逆に今後ネットショッピングユーザなど他のメディアのショッピングユーザにも拡大する兆し」と分析する。特に,携帯電話の定額制の普及はモバイルコマース拡大の鍵となりそうだ。

ファッション系のモバイルショッピング

モバイルインパルスは大日本印刷印刷の社内ベンチャー第4号として設立された,携帯ショッピングサイトの運営やモバイルコマースのASP事業を展開する会社である。サービスのひとつに「オシャレライフ」(携帯サイト:http://www.oshare.jp,PCサイト:http://www.ol-dmck.com)という20代前半の女性をターゲットにしたサイトの運営がある。ファッションブランドを厳選して数を限定し,モバイルインパルス側が直営店として運営する。モバイルインパルスはさまざまな販売活動を実施し,商品が売れた際に報酬を得る成功報酬型でビジネスを展開する。

モバイルインパルスの購買者層もやはり夜に買い物をするという。これまでの販売実績や調査から「24時にベッドで雑誌を読みながら買っている」と(株)モバイルインパル 代表取締役 澤居大介氏は分析する。

モバイルインパルスが成功報酬にこだわるのは,サイトの運営を店舗のオーナー任せにしてしまうと,モバイルの店舗を成功させるのは難しいからである。オーナーはリアルな店舗も管理しているので,なかなか頻繁な情報更新やモバイル向けの新たな企画を行うことができない。そこで,モバイルインパルスが売り上げにつながる様々なプロモーションや企画をうちだしていく。

澤居氏はモバイルインパルスの前身ともいえるDNPメディアクリエイト関西の事業部で,携帯のショッピングモール運営を2000年からてがけてきたが,現状,モバイルショッピングのビジネスはまだ厳しいと語る。しかし,早期に事業をてがけた同社は,効果的なメール配信の頻度や文章,画像の更新頻度など,プロモーションや運営のノウハウを着実に蓄積している。

商品カタログを作って終りという従来の印刷ビジネスではなく,(電子の)カタログを作ってどれだけ商品を売るかという部分まで印刷業界がふみこんだという意味でも今後も注目の会社である。

Bitwayのモバイルコンテンツ戦略

凸版印刷は1999年にインターネットを利用したコンテンツ流通網「Bitway」を開始した。2001年にはPDAにむけたコンテンツ流通「@irBitway」のサービスを開始している。携帯電話向けコンテンツサービスを始める2年前である。世界最大のハンドヘルドコンテンツアグリゲーターとも提携し,豊富なコンテンツを提供する。PDAのユーザ層は現時点ではまだ多くないが,携帯電話が第4世代に入り,PDAに近いビジネスフォンが普及すれば,@irBitwayが一気に広がるのではないか,と凸版印刷 部長 小林泰氏は期待する。

Bitwayの携帯電話サービスへの参入は,2003年のau(KDDI)が最初となる。そこから順次,NTTドコモ,Vodafoneに電子書籍のポータルサイトを展開してきた。(携帯電子書籍サイト:http://books.bitway.ne.jp/shop/mt-keitai.html)コンテンツの主軸はマンガである。ただし,携帯電話の小さい画面にマンガを1ページ表示すると,細かくてほとんど読めない。そこで,1コマごとに表示し,スクロールしながら見るというマンガ向けのビューアを採用した。中には作品をコマ切れにすることに抵抗を感じる作家や編集者もいたため,その説得や調整には苦労があったという。実際に提供してみると,人気が高く,20代の女性という新たな読者層の開拓にもなったという。

モバイルコマースのひとつの課題として小林氏は「通信料金の定額制」をあげた。3Gの携帯電話の登場でダウンロードのスピードは速くなったが,そのかわり,すぐにパケット料金が膨らむ。通常,16ページのマンガを1話で配信するが,この1話のデータのパケット料金が1,000円くらいになるという。通話とは切り離し,データ通信に重点を置いた安い定額制サービスの普及に期待をよせた。

2005/02/17 00:00:00


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