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情報統合のステップは業務プロセスの標準が不可欠

2005年2月3日,PAGE2005コンファレンスで開催されたMIS/JDFトラックの「情報統合のインフラ構築ステップ」では,凸版印刷 本社 業務改革本部 第一部 川島誠人氏,町田印刷 総務部 並木勝美氏,ジェイティ エンジニアリング SI事業部 SI営業部 部長 陶山 孝氏が印刷業務管理のシステム化における構築のポイントについて紹介した。


CIMを目指したMISの再構築

実際のところ印刷会社の基幹系の仕組みとしてMIS自体はきちんと整備されていないのが現状ではないか。現在印刷会社のさまざまな業務・生産活動にネットワークやパソコンなどのITは利用されているが、今までは個別に導入されていたので、個々のシステム間で情報が分断され、情報ギャップが生じている。
そこで今後進めるべき道は個別に管理されているシステムの情報を統合し、モノと情報を一元化することで柔軟性のある生産体制を構築することである。将来はプロセスを自動化するCIM、SCMの構築を目指すことである。
MISと製造系システムの間だけではなく、得意先や協力会社ともJDFなどを利用して工程仕様の情報をリアルタイムで共有し、シームレスに伝達する。これが情報統合のイメージではないか。

取り組みは、JDFを活用した製造系システムを、メーカ主導ではなく印刷会社主導による検討を行う必要がある。その一方で手付かずであった基幹系システムとしてMISの見直しが必要である。
今のMISはあるべき姿を考えて作成したシステムではなく業務の優先順から構築されてきたケースが多い。そのため本来あるべき姿を検討したシステム構築を行う必要がある。
MISの要件のキーワードは、統合化、オープン化、自動化である。また共有制、可用性、柔軟性、管理性も重要である。自社と得意先、協力会社、仕入先との関係も考える必要があるが、特に得意先との関係は重要であり、このように考えるとシステムの完成系はなく、常に変化する状況に対応していけるシステムでなくてはならない。

次に業務プロセス全体を見直して統一・標準化を行うことが必要である。業務プロセス・データモデルの統一・標準化なしでは情報統合・プロセス自動化は実現困難である。特に工程をまたがった部分の標準化、工程全体での標準化は重要である。また自社だけの標準化だけではなく、得意先、協力会社、仕入先との間での標準化も必要である。
再構築を行うには、一気に全面再構築するのか、段階的に再構築するのかがある。全面が理想であるが、費用や要員などで難しい。段階的な再構築ではデータ連携をどうするのかがある。このようなことを検討することで統合化へのステップを始める必要がある。

求められる情報システムの形

まず背景として、IT関連の機器が革新的に進化し普及していることがある。次に印刷物受注において、短納期、小ロットということで、業務そのものはかなり効率化が進んでおり、頭打ちの状態になりつつある。そしてインターネットの利用などで営業の受注業務が変わりつつある。このような背景を考えながらコンピュータとネットワーク、デジタルデータの扱いをベースとして新しい作業手順を構築する必要がる。
今取引先との現状を見ても、取引先の組織や発注方法が業界再編性などもあることからどんどん変わってしまう。すでにEDIで発注される部分もある。引渡しデータや作業情報もデジタルデータ化されるなどモノで受け取るケースは減ってきている。またクライアントニーズの変化も特に情報のセキュリティに関して敏感になってきている。

このようなことを考慮しながら、情報統合化あるいは新作業手順の構築を行う。
キーワードは、データベースシステムを中心とする、デジタルワークフローや情報共有という形になり、通信ネットワークの効率的な配置と運用が重要な位置づけになる。
従来個別間で情報交換しながら作業を行っているような部分のある作業形態では、情報システムに情報が反映されず情報が更新されないことになり、従来の作業の仕方と変わりがなく、事故につながることになるので、必ずデータベースに反映する仕組みが必要である。

中小の印刷会社の傾向として情報システムをどう考えるかでは、まず商業印刷物が中心で多くの受注が個別受注であり、しかも作業手順は多様である。また変更が多く、印刷が始まってからでも変更が出れくる。
このような環境の中で、しかも情報システムへの投資は消極的で機能の遅れも深刻な状況にある。またシステムの開発メーカも、ノウハウが不足がちで特に工程がいろいろな形で変わるので対応しきれない。システム管理者も不在で兼任の場合が多く、経営内容の変化に対応していくには課題が多いのが中小印刷会社の実体かと思う。

では検討のポイントは何か。何を変えたいのか、何を処理するのか、何と連携するのかが重要である。具体的には情報の共有と活用の仕方、処理の標準化・自動化、作業手順の検討である。
作業手順の見直しも、単純に見直すのではなく、業務やシステムのアウトソーシングも含めて検討する必要がある。作業フローの標準化も古い作業環境もあるので、そこも含めて検討する必要がある。
そして情報統合化は全社的なアプローチでないとできない。そのためには全社的なコンセンサスを得て行う必要がある。
また、今後得意先や協力会社との関係からグローバルネットワーク化という視点で社内ネットワークだけではなく、コラボレーションということになってくる。そこで重要なことは、セキュリティの確立がポイントになってくる。

印刷業向けMESの提案

パッケージとして、計画系、実行系、監視・制御系という3階層のものがある。計画系では、MRPと呼ばれるものがある。JTEではリアルタイムソリューションということを言っている。今までの製造現場では日誌があってデータを入れて翌日にならないと現場の結果が見えない。今の製造業ではこれは許されず、リアルタイムでデータを入れて管理者、経営者までそれが見えることが必要である。
一般的な製造業ではCIMとかMISというよりMESということが使われる。MESは11の機能が必要と言われている。JTEではこの機能を実現するために各種のパッケージを用意しており、これらでMESの部分を実現しており、その外側にSCMやERPという機能の位置づけになる。

印刷業では、情報統合化が遅れているのは特殊な産業だからだと言われているが、安く物を製造して納期に納めるという目的は同じである。従来は自動車メーカでもExcelで計画を作っていたが、多品種小ロットになると難しい。そのため計画のパッケージが必要になった。トレーサビリティは、現場から正確なデータを戻す必要があり、これもパッケージが必要になる。そして品質管理は、従来物を作り測定してフィードバックしていた部分をリアルタイムで品質管理を行う必要からここもパッケージを利用する必要がある。このような状況が製造業である。

では導入するには、どのようなステップを取るのがいいのか。パッケージを導入するにはまず要件定義がある。これを行うためプロジェクトを作りトップの意向を聞きながら意思決定してもらう。次に現状分析を行い問題点を出し、要望を聞きながら業務改善ができる仕組みを考える。
次にこの仕様に対して費用をかけるのか、それとも人が行うのかを調整する。すべてシステムで行えば高価なシステムになることもあるので、場合によっては人が行うことも選択する必要がある。次に一度に投資して行うのかステップで投資を行うのかを決める。このような流れでシステム導入を進めている。

今印刷業の案件を進めているが、意外であったのは印刷業はパッケージを調べようとしていない傾向があった。他の業界では同業他社のシステムや利用しているパッケージなどを調べるのがふつうであるがこれを行わない。これは実際には自社の業務に合う合わないは実際に利用しているところを見ないと判断できない。このため情報収集はパッケージを導入するうえで絶対に必要である。
JDF対応などを考えると、パッケージが対応すればそのまま利用できる。これがパッケージのいいところである。またパッケージは他社と比較して必ず機能を向上してくるので、それも利用できる。このようなこともあるのでパッケージは調べて欲しい。
JTEのパッケージはデータベースを公開しているのでユーザインタフェースでも他のシステムとの連携も自社で行える。このような利用方法もできる。

2005/02/23 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会