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DTPエキスパート認証取得は,最も効果的な社員教育となった

セキ株式会社 執行役員 経営管理部長 藤原武彦

 
経営活性化研究会
1999年3月,社内の若手幹部が集まり,ある会が発足しました。将来の経営に関わる重要な問題を研究・解決していこうという主旨の研究会です。「DTPエキスパート認証試験」というものが全社的なテーマとして議論されたのは,これが最初だったかと思います。
当時,社内には2名のDTPエキスパートがおりましたが,プリプレス部門の工場長とDTPチームのリーダーという立場であり,極めて専門的な資格だという認識が強かったこと,また,このころの議事録を見ると,SGMLやXML,マルチメディアやブロードバンドなどの言葉が盛んに用いられ,当時の印刷業界のデジタル化対応への関心やニーズが,かなり強かったことも思い出されます。

それは突然にやってきた
当時,私は人事課に所属しておりましたので,取り組みテーマは急速に構築されつつあったDTPを中心としたデジタル化に対応できる社員教育や人材育成といったところにあり,先ほどの2名の資格者を中心に,営業を対象としたデジタル化対応の社内教育や社内資格制度の企画を始めていた矢先だったと思います。とにかく,一刻も早くDTPというものを総合的に捉え対応できる知識の習得が求められていました。
そんなある日の研究会の冒頭,座長の社長から「一つ全社的に挑戦してみないか」との提案。もちろんそれはDTPエキスパート認証試験のことでした。社長いわく,これからは印刷会社である以上この問題は避けては通れない,また多くの資格者を有することは(今なら)他社との差別化にもなる。ゆえに幹部になる以上は必須資格になり得るとも。
確かにそのとおりで,皆も納得する内容だったのです。が,だれかが「随分難しい資格だと聞いていますが…」。皆,無言でうなずきます。私は,チラッと目が合ってしまった社長から「なあに,その気でやれば大丈夫だよ。なあ藤原君」と意味深げな微笑。思わず悪い予感(えっ?私も対象?)が的中したことに「あ,はい…」と返事をすることが精一杯でした。
受験体制作り
さて,そうなると準備やら体制作りは事務局のわれわれの出番。しかし情報を集める度に,自力で乗り切るのは不可能と悟り,取引先の教育部隊の協力を得て,その年の暮れに「DTPエキスパート認証試験講座」の開講となりました。講座の中では模擬試験や課題制作,制作ガイド作成の指導も予定されており,さて,これで大船に乗ったつもり…は甘かった。
まず,開講初回日に自己評価のための模擬試験を受けてみます。そして5角形のレーダーチャート式採点表に記入してみますと,業務に関わりのあったコンピュータ関連知識以外はすべて合格点に足りません。講師からは,5つのジャンル(DTP関連知識・印刷発注側知識・印刷工程知識・色の知識・コンピュータ関連知識)のいずれもボーダーラインは80%以上との冷たい説明。前途を悲観して思わず「とほほ」でしたが,「いやぁ,私は専門外だから…」と言い訳もむなしく,前途多難の受験生活が始まりました。
講座のほうは整然とスケジュールどおりに進みましたが,内容は実に範囲が広く奥深い。確かに印刷会社に勤めていながら知らないことが多過ぎることは恥じましたが,非常に良い勉強となったのも事実でした。とにかく内容を理解して解いての繰り返し。部下のM君のように若さを武器に,強引にテキスト丸ごと頭の中に詰め込んでいくツワモノもおりましたが,私は過去問を中心に1歩また1歩の繰り返しで,瞬く間に準備期間は過ぎていきました。とにかく平均して点が取れるよう苦手の克服を中心に勉強を組み立てて進めていきました。

そして試験
そして筆記試験当日。怒涛(どとう)のような2カ月が過ぎ,講座初日に「何やこれは!」とあ然とした設問の多さも模試の繰り返しで何とか克服。私のような者でもがんばれば何とかなるという絶妙な難易度が良いプレッシャーとなったのでしょう。
そしてもう一つの難関「課題製作」に続きます。当時はDTPと言うとMacintoshであり,私のような事務屋や営業マンの最初の試練は,まずこのMacのオペレーションからでした。私は,趣味でMacを使っていましたので,これは不幸中の幸いでした。この時の経験が,ますますMacにのめり込むキッカケとなったわけですが…。
課題は私を含めてBを選択した人のほうが多かったようです。私はできるだけ簡単なほうをと選んだつもりでしたが,難易度は同じくらいでしょうとは講師の評価。この課題に関しては早め早めに取り掛かっておかないと最後に時間が足りなくなってしまいます。どこまでやればいいのか,何が正解か分かり難いので,思い込まないで何度も何度も見直すことが自分にとっては良かったと思います。

結果と反省点
こうして,私のつたない受験経験は終わります。結果はどうだったかというと,かろうじて初回挑戦組の面目を守ったというところ。当社ではこの時から,取引先にアピールもできるよう資格取得者については名刺にその資格を明記するようにしています。私の名刺にもDTPエキスパート認証と記載されており,これは私のひそかな誇りでもあります。時は過ぎ,今回の更新試験でゴールドカードの仲間入りもしました。直接印刷に携わらない私にとっても,印刷という社業への思いを深めてくれたこの試験に大変感謝をしています。
当初の計画では,私の受験した第13期から17期までの2年余りを集中取得期間としていました。当社には通信教育などによる自己啓発制度がありますが,それに準じ,合格した場合には受験費用を補助するという取得奨励措置を設定しました。これは,挑戦者の意欲を高めるキッカケにはなりましたが,回を重ね合格者が増えるごとに新たな挑戦者や再挑戦者が出てくる活気や流れが生まれたことは思わぬ収穫となりました。現在,当社では営業職を中心に85名のDTPエキスパートがいます。
しかしながら,取得奨励期間後は自己啓発制度へ組み入れたことにより新たな合格者が激減しました。高い難易度に対しては,同じ目的をもってともにがんばろうとする場作りや勉強のフォローを行うけん引型のバックアップ体制は必要なのかもしれません。この点を反省して,近いうちに新たな認証試験講座を企画したいと思っています。
またDTPエキスパートの登録期間は,技術変化を考慮して2年間となっています。この仕組みが,この認証資格の良いところ。特にデジタルの進歩は速く,これらについて再度勉強して知識を補っていける仕組みがあるところがミソだと思います。従って,更新意欲が続く限りは,認証資格は錆びずに更新されていくことになります。もちろん私も更新を続けていきたいと思っています。

われわれにとってDTPエキスパート挑戦の意味は
現在の印刷業界を取り巻く環境は,非常に厳しいものがあります。長期の景気後退に伴うコスト競争や小ロット・短納期に対応できる体力はもちろんのこと,お客様のニーズを的確に捉え評価いただける企業になれるかどうかは重要な問題です。その上で利益を残せる工夫や設計のできるプロの育成はわれわれの最優先課題の一つであり,その具象化としての「DTPエキスパート」挑戦は,社員教育・人材教育として有効かつ最適であったように思います。

 
(JAGAT info 2005年2月号)

 
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2005/03/06 00:00:00


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