2005年3月20日
社団法人日本印刷技術協会・常務理事 山内亮一
印刷機械の機能,性能はここ数年で格段に向上し,競争力強化の焦点は統合化したデジタルワークフローの実現に移りつつある。このような状況は,日米の印刷業界の設備導入意向調査にも現れ始めた。また,印刷物製造に密着した拡印刷分野への取り組みも,顧客満足と競争力強化に欠かせないという状況も両国の印刷業界に共通のものである。
JAGATが実施した「2002年度印刷産業経営力アンケート調査」では,現在の設備保有状況と今後の新設・増設および廃棄意向について調べた。下図は,3年以内での設備等の導入・増設意向について,2001年度調査結果も対比して見られるようにしたものである。
図からは,回答各社の新規導入・増強設備,導入技術に明確な分野別の優先順位が感じられる。
最優先はプリプレスシステムと経営管理のコンピュータシステムである。新設・増設意向トップ10位にそれぞれ4つの項目が入っている。次いでネットワーク関係のシステム導入意向が多く,リストアップした3項目すべてが11位から20位までに入っている。そして,21位以降に枚葉印刷機が,31位以降にデジタル印刷機が顔を出す。ただし,この2分野の導入意向の差は小さい。
回答数の多少自体は,設備投資額の大きい設備ほど少なくなることは当然で印刷機械関係の回答比率は低くなる。従って,図を見る時のポイントは優先順位の変化である。
そこで昨年との対比で見ると,印刷物受発注の電子調達(23社),リモート校正(20社),バリアブルデータ印刷事業(18社),新商品開発(15社),印刷物発送アウトソーシング事業(10社)といった,新規事業・業務への取り組み意向が増加していることが特徴である。
●着実に進む次のステップへの歩み
つまり,この1年間での変化を見ても統合化されたデジタルワークフロー実現に向かう技術の流れが見て取れるし,印刷物発送アウトソーシング事業などの付加価値提供を目指す動きも確実に感じられる。
最新の印刷機械であれば,例えば版替え時間はそのサイズ,ユニット数にかかわらず5分以内で完了することは当たり前になった。色調整,見当調整も同様である。従って,コスト削減,時間短縮,人員削減の焦点はデジタルワークフローの拡張に移りつつある。JAGATの推計によれば,2002年における平版印刷機の内需はピーク時(1990年)の33%まで落ち込んでいる。収益性低下による設備導入の手控えもあるだろうが,機械設備の機能性能が大幅に向上したことも大きな要因である。生産合理化の努力とともに,他社との差別化の意味で,印刷物製造の前後工程に機能を広げてワンストップショップ機能をもつことも併せて実現することが,競争力にとって欠かせなくなってきている。印刷物発送アウトソーシング事業の取り組みが増加しているのも当然であろう。
2005/02/28 00:00:00
|