時代はオンライン校正へ
―電子校正活用でムダをなくせ!―
■電子校正の提案がビジネスチャンスに
―Acrobat7の注釈機能を徹底活用―
社団法人日本印刷技術協会 研究調査部 副参事 千葉弘幸
○Acrobat 7でできる文書校正の実際
PDF校正と言っても,色校正をPDFで送信しモニタ上で再現するモニタプルーフ,遠隔地のプリンタから校正紙を出力するリモートプルーフ,主にモノクロの文書やテキストをPDFとして送信して校正を行う場合などがある。さらに,校正紙の出力はPDFを使用するが,赤字入れは紙に書いてファックスで返信したり,営業マンが取りに来る,または宅配便を使うこともあるだろう。
モニタプルーフで色を判断するには,校正を行う環境の整備やモニタのキャリブレーションと,安定した印刷条件とが必要になるため,厳密な実現は,かなり制約があり困難である。
また,リモートプルーフは,ICCプロファイルを使う方法や,プリンタメーカーなどのツールを使う方法などがあり,徐々に利用されつつあるが,注釈ツールを多用する校正とは,スタイルが異なる。
本稿で触れる電子校正は,色校正ではなく,文字校正,文章校正,レイアウト校正を対象とし,ファックスや紙で赤字内容を返すのではなく,注釈ファイルを返信するスタイルである。
文書・テキストをPDFにて校正を行い,注釈を書き込んで返信する方法は,印刷業界に限らず出版新聞業界のほか,一般企業や官庁自治体,教育機関などでも利用可能である。
しかし,注釈機能を活用した校正は,それほど使われているとは言えない。それは,これまでAcrobat本体をおのおのPCにインストールする必要があり,導入コストがネックになっていたことと,校正者全員が注釈機能を使いこなす必要があること,原稿やPDFの送受信のセキュリティに関する不安などによると言えるだろう。
○PDFによる文書校正の基本的なワークフロー
例えば,印刷会社でテキスト原稿などを元にレイアウトを行う。レイアウトの結果をPDFにして,顧客の印刷発注担当者に返送する。印刷発注担当者は,まず社内のサーバの共有スペース上にPDFファイルをアップロードする。次に,社内の関係部署の担当者全員に校正を依頼し,期限とPDFファイルの置き場所を通知する。校正担当者は,おのおの共有スペース上のPDFを参照し,注釈ツールを使用して校正を行い,サーバ上のPDFに注釈を書き込む。印刷発注担当者は,期限が来ると関係者の注釈が書き込まれていることを確認し,印刷会社に,校正済みの注釈(FDF)ファイルだけを送信する。これがオンライン校正の方法である。この場合は,ほかの校正者のコメントを参照しながら,追記だけすればよいので校正自体も効率的となる。また,関係者が各地に分散しており,インターネット越しに注釈を書き込むには,Webサーバ上にPDFファイルを置き,WebDAV機能を使う必要がある。
サーバの種類によっては,オフライン校正を行う。関係者がおのおのPDFファイルをローカル環境にコピーして校正を行う。校正が完了したら,おのおの注釈ファイルだけを印刷発注担当者に送信する。発注担当者は,集まったFDFファイルを統合して,印刷会社に返信する。
○印刷会社は何をすべきか
上述した文書校正ワークフローは,PDFを電子メールで送信するかのように記した。しかし,印刷会社が扱う原稿やPDFには,新製品情報など機密性の高い情報が含まれていることが少なくない。大手企業では,電子メールの扱いに制限を設けているところも増えつつある。
これは,制作・印刷会社にとって,セキュリティ対策が印刷製作に必須となったことを示している。例えば印刷会社にセキュリティ対策されたサーバシステムを導入する。顧客単位,あるいはジョブ単位に,顧客関係者を認証し,ユーザID・パスワードがなければログインできないようにする。それ以降のデータの閲覧・送受信はSSLなど暗号化されたものとする,といった方法が必要だろう。
Reader 7によって,注釈書き込みの導入コストは下がっている。しかし,顧客がこれを導入するには,印刷会社からの働き掛けが重要である。顧客とのやり取りにセキュリティ対策を講ずることと,注釈による文書校正ワークフローのメリットを提示し理解させるには,印刷会社は何をすべきだろうか。
印刷会社は,顧客向けの勉強会を開き,何ができるか,どんなメリットがあるか,セキュリティ対策は万全かなどを理解させることが必要だろう。また,そのような勉強会をほかの印刷会社より先に開催できるレベルであることが,顧客との信頼関係を維持するためにも重要である。
――この続きは本誌でご覧ください――
2005/03/10 00:00:00