本社は東京都中央区にあり,1909年に創業した歴史のある会社である。現在,本社工場をはじめ,印刷機を中心に設備する大利根工場(埼玉県北埼玉郡)を拠点とした従業員数約110名の総合印刷会社である。
主な扱い品目は,チラシやパンフレット,カタログなどの商業印刷物と,伝票・帳票などのフォーム印刷物である。また,シールやラベルなどPR製品の企画・制作もおこなっている。
本社工場は,営業をはじめDTP中心のプリプレス部門がある。DTP関連では,MacintoshとWindowsをデスク上に併用し,1人のオペレータがジョブによって使い分けをおこなっている。アプリケーションもQuarkXPressやInDesign,フォーム専用DTP組版ソフトなど豊富に取り揃えている。また,製版カメラやカラースキャナ,DocuColor,rosetteStar Proof,フィルムセッターなどの設備も揃えている。
大利根工場は,従来の刷版装置に加えCTPシステム,ビジネスフォーム用輪転機,平版印刷機,製本設備を備えている。
本社工場と大利根工場は,毎日の定期便によるデリバリーのほか,100Mbps光ファイバでネットワーク接続されており,1bitTIFFデータ等を送受信している。
また,関連会社のニューハウス出版株式会社では,住宅雑誌の発行をおこない,株式会社インタープロダクツでは印刷物やWeb関連などの企画・デザインも手がけている。
現在,東京都中央区新川に本社新社屋を建設中(平成18年3月完成予定)である。
■独自開発したInDesign自動組版
同社では,投資信託等の運用報告書を数多く受注している。この手の仕事のほとんどは,納期が短く,もちろん文字・数字の間違いは決して許されないものである。また,運用決算日の関係から,入稿日が重なることも多く,翌日の校正提出という条件からページ組版処理にはたいへん苦労していた。
そこで,ソフト開発会社と連携をとり,クライアントから入稿するWORDやEXCELデータを,InDesignに自動組版するシステムを開発した。このシステムでは,100%の自動組版運用はしていないが,メリットは大きく,大幅な処理時間の短縮とヒューマンエラーの削減を達成することができた。
したがって,クライアントは入稿が集中するときは,伊坂美術印刷を指定するようになり,処理スピードと正確性から信頼を勝ち得ている。
社内では,業界用語等に慣れたオペレータが編集や校正を担当しているため,より安定した品質と付加価値の高いサービスが提供できることもアピールポイントである。
■カラーマネジメントへの取り組み
プリプレス部門では,印刷工程全般の色管理についてとくに力を注いでいる。カラーマネジメント支援プログラムi-ColorQCを導入し,本機印刷色基準を策定し,同一基準のもとで校正装置など製造工程全体の最適化に取り組んでいる。
具体的には,各印刷機の調子再現や濃度,ドットゲインなど印刷の仕上がりを左右するさまざまなパラメータを診断し、現在の印刷状態を把握して自社の印刷基準を明確にする。これによって,基準カラーとの色再現域の差を把握することが可能になる。この診断・解析結果から,校正装置のプロファイルを作成して,色の管理をするシステムである。
このソリューションによって,カラーマッチングの精度が向上し,rosetteStar ProofやDocuColor1256の出力を利用した校正が増加し,従来の平台校正機を上回る稼動になっている。
■顧客ニーズへの対応と高品質な印刷製品作り
プリプレス部門では,デジタルカメラによるデータ入稿が増加し,全体のカラー点数の半数に迫っている。
また,2004年に導入したCTPシステムの処理版数も増加して,従来のフィルム出力版数と肩を並べる程度になっている。同社ではCTPシステムの稼働率をより向上させ,出力版数を増加させる方針である。
クライアントからの受注データについては,アプリケーションソフトの種類やバージョンはもちろん,メディアについてはデジタルカメラのメモリーカードからFTP(File Transfer Protocol)に至るまで幅広く対応し,他社で開くことができないデータに対応するなど顧客の満足を得ている。
また,オンデマンド印刷としてDocuTechも導入し,小部数印刷物などの対応に活用している。
今後も,総合印刷会社として企画から納品までの一貫したシステムで顧客ニーズに対応する。また,個人情報の保護管理体制・安全対策などは,個人情報コンプライアンス・プログラムを確立して対応し,高品質な印刷製品作りを目指している。
■研究会の意義と要望
同社では,グラフィックス系とくにカラーマネジメント関係のテーマを中心に研究会を活用している。
岡崎課長は「最近では,モニタ動向を取り上げたミーティングに参加して,新たな設備を構築する際の情報収集に役立った」と述べ,さらに「今後も,カラーマネジメント関係を中心に研究会を活用していきたい。また,プリプレス部門でちょっとしたデザインを要求される場面もあるので,簡単なデザインができるようなテーマを取り上げてもらいたい」と研究会に期待を寄せている。
また,「当社は,DTPエキスパート認証試験の受験をはじめ,勉強会やセミナーへの参加には積極的な後押しがある。よって,今後も積極的に研究会などを活用していきたい」としめくくった。
2005/04/18 00:00:00