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進化を続ける携帯サイト向けコンテンツ制作

PCやモバイルを対象にコンテンツ流通サービスを提供する凸版印刷のビットウェイは,2004年4月現在で40,000アイテムのコンテンツ数,40万件の月間購入件数と国内最大級のコンテンツアグリゲータである。膨大なコンテンツを流通する環境を提供しているビットウェイでは,携帯電話向けコンテンツの開発やコンテンツの保護に対してはどのように対応しているのか。Eビジネス事業部ネットワークビジネス本部 ビットウェイ部部長の小林泰氏とビットウェイ部 コンテンツチームの野淵大輔氏に話を伺った。

JAGAT:日本で人気のある携帯コンテンツはどの分野ですか。

凸版印刷 野淵大輔(以下,野淵):ケータイ白書2005(モバイル・コンテンツ・フォーラム監修・インプレス発行)によれば、ユーザが今後利用してみたいサービスは、1位が着メロ/うた,2位がゲーム,3位が電子書籍となっています。マンガだけでなく長編のテキストコンテンツも人気があります。最初は携帯電話の小さい画面で文字を読むのだろうかと不安もありましたが,順調に売れています。人気の分野は気軽に読める「ライトノベル」やドラマ化された原作の小説,そして歴史物なども売れています。

JAGAT:モバイルアプリケーション開発の最近の動向を教えてください。

野淵:携帯電話のアプリケーションは,ボーダフォンやNTTドコモはJavaで開発し,KDDIはBREWで開発します。

Javaの場合は,公式サイトに認定されればアプリケーションを自由にサイトへアップロードすることができます。BREWはJavaよりも高速に動き,電話機の機能と連動させることも可能なので,いろいろな機能をもたせることができますが,そのため,KDDIによるアプリケーションの審査を経る必要があります。

Flash対応端末の登場も動向のひとつです。Flashは携帯端末の時計機能と連動できるので,様々な仕掛けをすることができます。待ち受け画面をFlashのアニメーションで作成したり,そのアニメーションを午後6時になれば夕方の風景に変えることなども可能になります。対応端末はまだ少ないので,台数が増えればFlashのゲームなども普及するでしょう。

JAGAT:携帯サイト向けの電子書籍系のビューアの動向について教えてください。

野淵:電子書籍用のビューアはシャープの「ブンコビューア」が普及しています。

KDDIのBREW版ブンコビューアは、PC向けXMDFの一部を変更したファイルで対応可能なため、ファイル作成が比較的容易です。そのため、Brew端末向けのテキスト系の電子書籍はタイトル数が増えています。

コミックはセルシスの「コミックサーフィン」が主流です。KDDIの公式ビューアとして指定されています。また,KDDIはシャープのブンコビューアも公式ビューアに指定しています。

JAGAT:電子書籍のビューアはブンコビューアとコミックサーフィンが今後も主流になりそうですか。

凸版印刷 小林泰(以下,小林):ビューアはまだ過渡期の段階です。テキスト系の電子書籍の取り組みは数年前から行われていたので,ブンコビューアはビューアとしてかなり洗練されているといえるでしょう。

一方,コミック系のビューアは登場から1年程度なので機能は発展途上にあります。データを作る際にも,ビットマップデータとベクトルデータのどちらでデータを作成するか,表示画面が大きくなったり,画素数が増えたりした場合の対応をどうするか,などの課題があります。

JAGAT:写真集は特別なビューアを利用しているのですか。

野淵:当初は、当社が開発したビューアを使用していましたが、その後同様の機能がコミックサーフィンに盛り込まれたので、ユーザの利便性を考え、写真集もマンガと同じビューアのコミックサーフィンを採用しています。静止画を見せるという点では同じだからです。従来のように無理に画面の大きさにあわせようとすると,人物がとても小さくなってしまいます。しかし,写真1枚を1コマとして考え,コミックサーフィンを利用して画面サイズに無理に小さくせずに,縦長のものや横長のものはスクロールして見るようにしたら,ユーザには大変好評です。

JAGAT:その他に電子書籍系のビューアがあれば教えてください。

野淵:凸版印刷では雑誌用コンテンツのマガジンビューアとニュースビューアを開発しました。

マガジンビューアを開発した背景には,ブンコビューアは文字専用のビューアであるし,コミックサーフィンは画像専用のビューアなので,この2つのビューアだけでは文字と画像を融合したコンテンツを提供することが難しかったからです。

凸版印刷では2005年2月にKDDIの「CDMA 1X WIN」向けのBREWアプリ「MX MagazineViewer」を開発しました。コンテンツの第1弾として携帯電話向けの「ちびHanako ケータイ版」(1タイトルあたり290円)を配信しました。最初に相談にのっていただいたのがマガジンハウスでしたので,Hanakoのケータイ版を作ることができました。「ちびHanakoケータイ版」は写真と文章によるグルメガイドで,目次機能をはじめ地図や電話番号も閲覧しやすいです。現在,他の出版社とも企画を進めています。

JAGAT:従来の雑誌的な携帯コンテンツとの違いは何ですか。

野淵:Webサイトのようなものはありましたが,雑誌のように読むことができるコンテンツはありませんでした。マガジンビューアであれば,携帯端末に一度ダウンロードして,電車の中でも読むことができます。

小林:凸版印刷ではニュースビューア「MX NewsViewer」も開発しました。2003年12月にはauの第3世代携帯電話サービス「CDMA 1X WIN」,2004年年9月にはNTTドコモの900iシリーズに対応しました。

ニュースビューアでは,写真を含むコンテンツデータのダウンロード,速報やスポーツなどに分類したタブ表示,気になるニュースを保存できるクリップ機能などを備えています。また,アプリケーションを立ち上げて待ち受け状態にしておけば,自動でサーバにニュースをとりにいくという便利な機能もあります。

提供しているコンテンツは,読売新聞東京本社の「NEXT読売」、毎日新聞社の「毎日新聞PLUS」です。携帯電話の定額制サービスが普及すれば,今後のびていくのではないかと期待しています。

JAGAT:携帯電話向けに配信するコンテンツのデジタル著作権管理(DRM)についてはどのように対応していますか。

野淵:携帯電話のキャリア,NTTドコモ,KDDI(au),ボーダフォンの3社は,いずれも有料のコンテンツビジネスを重視しています。キャリア主導で携帯端末のDRMの仕様が決められていて,各携帯端末メーカーはその仕様に沿ったDRMの機能を端末に搭載しています。公式サイトになれば,キャリアから著作権保護の設定をするための仕様書やツールが提供されます。コンテンツを配信する側は,用意されたDRMの仕組みを利用すればよいので,特別なDRM用の仕組みを構築する必要はありません。

例えば,ビットウェイの場合は,携帯電話向けに配信するマンガなどの電子書籍に対して,携帯端末には保存できるが,SDカードやメモリスティックなどには保存できないという設定にしています。一方で、携帯端末の限られたメモリ容量を考慮し、サイト側で購入履歴を管理し、コンテンツを購入した日から原則的に1年間はダウンロード可能としています。携帯端末のメモリがいっぱいになってしまった場合は,一度データを削除して読みたいときに再度ダウンロードできます。これで,所有感を出すようにしています。

FOMAやボーダフォンの3G対応の携帯電話はSIM(シム)カードと呼ばれる着脱可能なICチップを採用しています。SIMカードに電話番号や携帯電話の固体番号などの情報が記録されていますので,再ダウンロードの時にはそれが同じかどうかを識別します。

携帯電話向けサイトやコンテンツは,インターネットのようにコピーされたり攻撃されたりすることはほとんどないので,比較的安心してコンテンツビジネスを展開できます。

JAGAT:ビットウェイのPC向けコンテンツはデジタル著作権管理ついてどのように対処していますか。

野淵:画像の場合は凸版印刷側でDRMの仕組みを用意し,写真や静止画などには電子透かしを入れています。これにより,コピーを抑止し,さらに不正な利用をしていないか監視ロボットプログラムをネット上に走らせています。不正な利用をしているサイトを見つけた場合は,サイト運営者に警告をします。

PC向けの電子コミックはコミックビューア側で,画像キャプチャやプリントができないような機能をもたせています。

動画の場合はWindows DRMを利用すると,かなりしっかりとデジタル著作権管理をすることができます。以前は,RealPlayerに対応するケースも多かったのですが,ユーザ側のPCにすでにビューア「Windows Media Player」がインストールされているということもあり,Windows DRMだけに対応するというコンテンツホルダーが増えてきています。

JAGAT:中国向けにも携帯向けコンテンツを配信していますか。

小林:日本の携帯コンテンツのビジネスモデルはDRMの点が非常によくできています。中国はPCのポータルサイトに携帯電話の商品が並んでいます。購入するとメールにコンテンツが添付されて携帯電話へ送られます。つまり,添付して送られてくるということは,別の人にも自由に(無断で)転送できるということです。

ビットウェイの中国での携帯コンテンツ配信はテスト段階です。コピーされやすい状況なので,コンテンツプロバイダーからは,そのことを前提でコンテンツを預かっています。しかし,不正コピーの心配よりも,携帯端末の台数が2億台を越し,コンテンツの購買意欲が高い中国市場に対する期待のほうが大きいのです。

現在の中国のコンテンツの特徴はテキストコンテンツが多い点です。市場に出回っている携帯端末のディスプレイが非常に小さいため,ニュースや小話(ジョーク)などの人気が高いです。

小林:最近特にケータイのパワーを感じます。携帯サイトに配信して売れる本のタイトルは,後からPCのコンテンツでも売れることも多くなりました。

携帯電話の定額制サービスと3Gケータイの普及は,携帯電話のコンテンツマーケットに大きなインパクトを与えるでしょう。現在は,まだ数が少ないのでコンテンツを配信する側は先行投資という意味合いが大きい。しかし,ターゲットは定額制サービスを利用している3Gユーザに向けてさまざまな準備を整えています。

■凸版印刷
http://www.toppan.co.jp/
■Handybitwayビットウェイの携帯コンテンツポータルサイト(携帯、PCからアクセス可能)
http://www.handybitway.com/

取材:JAGAT 通信&メディア研究会


携帯のサイト制作アプリ開発最前線 ◎携帯関連セミナー情報
通信&メディア研究会 techセミナー
「携帯のサイト制作・アプリ開発最前線」(開催日:2005年6月30日)
上記のお話を伺った凸版印刷 野淵氏にも制作についてお話いただきます。

2005/04/28 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会