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伸びる!! オンラインでの印刷物受注

新規開拓と営業効率化はWeb受注で実現できる

Webサイトを利用した印刷物受注が伸びているようだ。『プリンターズサークル』1月号では楽天ビジネスを取り上げたが,このようなマーケットプレイスを活用するほかにも,自社で立ち上げたWebサイトの利用がある。ITバブルと言われたころにも,印刷ECということでいくつかの印刷受発注サイトが注目されたが,その多くは撤退した。しかし,ネットショッピングやネットバンキングがもはや特別のことでなくなったように,ブロードバンドの普及とインターネット利用者が成熟するにつれて,印刷物受発注のネット利用も広がりつつある。Webを利用した印刷物の受注の現状と今後についてアンケートなどをもとに動向を探る。

アンケート結果―Web受注に手ごたえあり

プリンターズサークルではWebを利用した印刷物受注動向について,Webを利用して印刷物を受注している企業,および受注していると思われる企業264社にアンケートを行った。今回のアンケート発送企業は,印刷マーケットプレイス参加企業,Webのc検索サイトで「印刷」「印刷受注」「オンライン受注」などのキーワードを元に検索して,ピックアップした。なお,個人営業と思われる事業者は今回のアンケートから外している。このアンケートは2005年3月29日〜4月22日までに回収したものである。有効回答数は27社となった。

印刷業界は売り上げ数字のみを見れば,マイナス成長となっており,成熟産業として印刷そのものだけでは今後の成長性はあまり期待できない。しかしながら,クロスメディアへの取り組みなどによって,新たな成長の扉を開けられる可能性も残されている。また,ITの活用によって,これまでは捕まえ切れずにいた市場の拡大や営業活動の合理化も図れるだろう。特にビジネスインフラとして不可欠となったインターネットを活用した印刷物の受注は,今後の印刷業界においても重要な地位を占めると思われる。それは新規開拓など通常の受注に利用されるだけではなく,顧客側が目指すSCMの一環として組み込まれる,あるいは取り組まざるを得ないということも考えられる。
今回のアンケートでは,Web受注に取り組んでいる企業の現状についてアンケートを行った。なお,回答企業の規模については,小規模企業が多かった(図1)。これは実際にWebサイトなどで検索しても言える傾向で,中規模以上の印刷会社に比較してさまざまな面でリソースが不足している小規模事業者にとっては,現状を打破する上でWeb受注は取り組みやすい事業と言えるのかもしれない。また,回答企業では自社で受注用のWebサイトを立ち上げている企業のほかに,楽天ビジネスなどのようなマーケットプレイス型のECサイトを利用してる企業に大別される。


▲図1 回答各社の従業員数規模

ブロードバンドの普及とともにWeb受注増える

1. Webを利用して受注を始めた時期(図2)
最も早い企業で1999年2月に開始しており,この年スタートした会社は4社となっている。印刷物受注用のWebサイトの黎明(れいめい)期に当たり,同年に日本でもADSLサービスが開始されブロードバンド時代に突入した。2002年からWeb受注をスタートする会社も増え始めるが,この年はADSLサービスが安価に提供されて急速に普及し,ブロードバンド元年と言われる年になった。実際に「2001年ごろまでは,まだまだ競合する会社は少なかった」というコメントがあった。ブロードバンド普及でインターネット利用が成熟に向かう中で,それに呼応するように2002年以降Web受注を開始する企業も増えている。


▲図2 開始時期

2. Webを利用して受注を始めた理由(図3)
これは圧倒的に新規開拓と受注拡大を理由に挙げている。結果として,実際20社が新規開拓・受注拡大ができていると回答している。これからに期待と回答する会社はスタートして間もない企業,前年比の伸び率が低い企業などである。できていないとの回答がなかったことから,それなりにはWeb受注は実績を上げているものと思われる。


▲図3 Web受注の理由(複数回答)

また,同時に営業効率化を理由にしている回答も多かった。実際に16社が効率化できているとする。現状,例えば新規開拓から受注までの営業の行動を考えると,顧客情報を収集して,対象企業を選択し,アポイントを取り,案件を聞き出し,見積もり,受注までこぎ着ける時間と労力は膨大なものになる。それが営業の役割ではあるが,現実には既存顧客の制作物を担当しながら,新規案件を得るために情報収集や企画提案を行っていかなければならないので,手いっぱいという営業担当者も少なくないだろう。そうなると,受注獲得の見込みが薄いかもしれない顧客や案件に時間と労力を割かなければならないのは,営業の生産性を著しく落とすことにつながっていく。
その意味で言えば,Webでは高い確率で受注が見込める新規顧客や案件を効率的に探せる。また,受注後も案件の内容によってはデータ入稿から納品までが,営業担当者が顧客を訪問することなく,メール・電話などのやり取りだけで済んでしまう。つまり,仕事の内容にもよるだろうが,通常の訪問営業担当を必要とせずに仕事ができるようになったと言える。
実際「活動経費が抑えられるから」という回答があった。
そのほかに理由としては,マーケットプレイスなどに参加すれば,「どのような案件があるかの情報が得られる」という回答もあった。

『プリンターズサークル6月号』より

2005/06/11 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会