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さまざまな波紋を起こしつつあるフリーペーパー

フリーペーパーの実態はなかなか把握しにくいが、ここ数年で関心が高まり市場が拡大していることは間違いない。
フリーペーパーのタイプ、対象は非常に多様だが、例えば新聞タイプのフリーペーパーで見ると、この5年間、紙数で8割、発行部数で約6割増加している。最近では対象をかなり絞り込んだものやクーポンマガジンが伸びている。しかも、部数は10万部から50万部のものが多くAIDEM(3800万部)、ホットペッパー(538万部)など、大量部数発行のものもありしかもページ物印刷物だから、印刷需要としてかなり大きな市場である。
凸版印刷株式会社の「平成17年3月期 第3四半期財務・業績の概況」には、出版印刷分野で伸びた印刷品目として「フリーペーパー」という言葉が登場した。「フリーペーパーの2003年の年間発行部数は64億3235万部と見られ、出版科学研究所の調査による雑誌(有料誌)の2003年年間推定発行部数43億1098万部を上回る(「出版月報 2004年10月号」社団法人 全国出版協会 出版科学研究所)」規模になっている。

出版界が注目するフリーペーパーのひとつが、リクルートが発行した男性向けフリーペーパー「R25」である。2004年秋時点の発行部数は約60万部になっている。内容は、出版業界から見ても一般出版社発行雑誌と同じと評価されており、違うのは「R25」が「無料」という点だけである。リクルートの場合、ホットペッパーも含めて、マス媒体を使って認知度を上げている点がいわゆるミニコミ誌を起点としたフリーペーパーと違うことであり、この点も一般雑誌と同じである。フリーペーパーといってもさまざまあるが、「R25」のコンセプトは、「『無料』が先にあるのではなく『人が手にとってくれること』の一つの手段として無料がある」というものだという。

1990年代後半に、米国ではフリーペーパーが急速に増えて有料の雑誌が売れなくなるという傾向が出始めた。一方、最近の日本国内での創刊雑誌の傾向を見ると、広告収入が見込める団塊世代向け、女性誌、男性のスポーツ誌の増加がある。日本の出版社も米国のように広告依存での雑誌作りに向かう、フリーペーパーがそのひとつのきっかけになる可能性もある。

宣伝広告媒体としてのフリーペーパーは、商品情報を得る実用性のある媒体という意味で折込に近いポジションにあるとの調査結果があり、フリーペーパーの増加が新聞折込需要にマイナスになるとの見方もある。
新聞が読まれなくなって新聞折込では特に若年層に情報が届かなくなってきているので、全戸宅配のフリーペーパーの到達度が大きな価値として認められはじめた。広報手段として折込の代わりに全戸宅配のフリーペーパーを使う自治体も出ている。また、フリーペーパーのなかには折込チラシを入れるものも出て、それに対抗するために新聞社がフリーペーパーを発行するといった動きも見られる。
しかし、読売インフォメーションサービスの調査によると、フリーペーパーへの広告出向が多いサービス業の折込広告やクーポンの折込出稿量をみるとそれぞれ増加しており、少なくともこれらについては、フリーペーパーが増えたために折込が減少したという状況は見られないという。
先に、フリーペーパーの年間発行部数64.3億部を有料雑誌の発行物と比較してみたが、新聞折込と比較してみると、折込枚数は1583億枚だから、もしフリーペーパーの平均ページ数が24ページとすると、物量的には両者はほぼ同じということになる。

いずれにしても、いつのまにか膨大な印刷市場になってきたフリーペーパーの今後の動向には注目せざるを得ない。

2005/07/04 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会