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多様な展開を見せるデジタルプリント・ビジネス

デジタル印刷機は,登場以来,紆余(うよ)曲折を重ねながら進化しており,当初うたわれた「小ロット」対応というビジネスモデルからの脱却を図ることで,利益を生むビジネスになりつつある。成功までには試行錯誤の連続が長く続いたが,今では多くの成功事例が出てきている。またデジタルの特徴を生かし,商業印刷分野に限らず,産業用途にもその領域を拡大しつつある。以下概要を紹介する。

商業印刷分野

ダイレクトマーケティングツール
〔1〕フルカラープリントによる各種明細書の発行。月1回顧客に送付する請求明細書などに,顧客特性に合わせた広告を掲載し,請求書発行という「経費」の掛かる領域を,広告という「収益」源に変えた事例がある。事前に顧客特性を知ることでこのような対応が可能となるが,主に金融,証券,保険などの業界で適用が進みつつある。
〔2〕学習指導・資料の発行。全員同一の教材ではなく,学習者の理解度に応じて異なる内容の教材を提供することで,確実な能力向上を図る例である。主に学習塾や通信教育機関において実施されている。
これらは顧客一人ひとりの属性に応じてきめ細かい対応を図り,企業と顧客とのコミュニケーションを活性化することに役立てる例である。「マス」という画一化した対応ではなく「パーソナル」な個に着目した事例と言える。

適正在庫の実現
必要量を必要なタイミングで提供する例であり,年賀状・季節のあいさつ状,社員の名刺,復刻本・自費出版や同好誌などの事例がある。コンビニエンスストアやインターネットを利用し,受け付け情報を数カ所で集約することで,一つひとつの仕事は小さくても,最終的に大ロット化することで収益性を高める例である。

産業用途

サイン・ディスプレイ
主に商業店舗や大型商業施設など,多くの人間が集まる場所のディスプレイに利用されている。店舗のリニューアルや,各種のイベントなどに活用が進んでいる。一方,車・バス・地下鉄・飛行機などに広告媒体をラッピングする利用も進んでいる。早く,フレキシブルなプリントが可能ということでデジタル化が進んでいるが,施工や資材(接着と剥離)との関係,使用後の環境影響なども考慮する必要がある。楽しい町作り,感動を生むデザインなど情報伝達のみではなく,生活に潤いをもたらす活用である。

各種デバイスや表示装置など
有機ELやカラー液晶ディスプレイのカラーフィルタ作成などが著名である。IJ技術を用いてインク滴を必要量,必要なタイミングて吐出し,RGBのカラーフィルタを作成する。位置決め精度や吐出制御が大きなカギである。情報伝達ではなく,情報を生み出す技術としても活用が進んでいる。

以上,今や単に機械導入という次元ではなく,デジタルの特徴を生かすこと,また利益を生み出すビジネスモデルを構築することなどが競争力向上の源泉となりつつある。以下,具体的な事例を紹介する。

『プリンターズサークル7月号』より

2005/07/28 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会