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バリアブル・プリント機能によるDMツールとしての活用

個別の顧客の購買傾向に合わせて,バリアブル・プリント機能(可変データにより,1点ごとに異なるコンテンツをプリント)により,ダイレクトマーケティングツールとして活用し,商品・サービスの広告を行うケースが増えている。金融,保険会社など会員向けに毎月発送される請求明細書に広告を掲載するなど代表的な例である。こうした印刷物(トランザクショナル・プリント)は,請求明細書を受け取る方に必ず目を通してもらえることが期待できる。
また,優良顧客を会員としていることから,顧客のライフタイムバリュー(生涯価値)という点からも,永続的な顧客と見込め,長期にわたる戦略策定ができる。本稿では,NTTコムウェア・ビリングソリューション株式会社(以下 NTT BGSOL,本社:東京都品川区)との提携により,カード会員データ管理と明細の発行を行っている株式会社UCS(本社:愛知県稲沢市)にご協力いただき,個別のダイレクトマーケティングツールとしての活用とその可能性を紹介する。

■事業概略
同社は,UCSカードを中心としたクレジットカードの発行(会員数 215万人 2005年2月末現在)を始めとするショッピングクレジット事業,金融事業,融資代行事業,生命保険・損害保険事業,旅行事業などを展開する。'ライフタイムバリュークリエイション'をテーマに,クレジットカードという決済機能をもつ強みを生かし,カード会員を中心にそれぞれのライフスタイルに合った商品・サービスの提供を行っている。

■NTTコムウェア・ビリングソリューション(株)(以下NTT BGSOL)との提携経緯
株式会社UCSでは,クレジットカード会員向けに毎月約65万部の利用明細書(請求書)を発送している。同社は大手流通業のユニーグループの一員であり,グループ店舗内におけるカードの入会,利用促進の活動が,非常に大きな割合を占めている。しかし,国際ブランド(MasterCard,VISA,JCBなど国内・海外に広い利用加盟店をもつブランド)との提携カードも発行する同社としては,グループ外の利用促進を強化することが事業拡大のための大きな課題であった。現状,顧客と直接に接することが少ないクレジットカード会社としては,月に1度の利用明細書の発送が一番重要な顧客との接点であり,販促手段である。この利用明細書に同封する販促物によっていかに効率良く,販売促進の効果が出せるかということをテーマに,利用明細書発行に関わる媒体物の見直しを行った。従来,すべて顧客に同一内容の販促物を発送するか,あるいは顧客をセグメントし,リーフレットを差し替えて発送していたが,コスト面・運用面での負担が大きく,ターゲットとする顧客を囲い込み,情報を発信することが不可能であった。
そこでデジタルプリント導入を検討,2002年より,NTT BGSOLと提携し,3色のオンデマンドプリントをスタートした。約2年半のノウハウ構築後,2005年からフルカラー・バリアブルプリント(会員向けに毎月発送される請求明細書に広告を掲載する印刷)を本格的に開始した。これにより,従来と比較して飛躍的に販売促進のメリットを発揮できるようになった。

■フルカラー・バリアブルプリントのメリットなど
(1)印刷物発注・作成のコスト削減および運用業務の軽減
コスト効率が求められる企画・広告を実施する場合,顧客のセグメント化による情報発信という方法が有効である。従来のオフセットによる印刷の場合,顧客セグメントごとの媒体作成を行うと,それに伴うコスト,校正作業,物流の確保が必要であった。特に同社のようなカード会社では顧客の請求情報データは日々更新され,利用明細書の発送業務には非常に短い日数でデータ作成を行い,発送業務へと流していかなければならない。これが,従来のオフセットの場合,印刷日程を加味すると実際に使用する部数が確定しないまま,見込み数で印刷物を発注しなければならなかった。しかし,フルカラーバリアブルプリントを導入することで,あらかじめ広告をデータとして作成し,それを明細書のプリント業務と同時に印刷をできるため部数のロスが一切発生しない。そのため,コストが最低限に抑制でき,また予算も立てやすくなった。校正作業においても1コンテンツをデータにより印字位置をコントロールできるため,校正作業も1回で完了し,作業の効率化と人的ミスによる誤植のリスクも最小限に抑えることができるようになった。また,印刷物の納品,発送時といった物流自体が発生しないため,従来のリスクとコストも回避できるようになった。

(2)顧客に合わせた情報の発信
  バリアブルプリントはすべて,顧客データにより印刷対象を制御できる。顧客の属性や契約形態により,ベストな情報を発信・提供することが可能となった。例えば,保険商品の販促を行う場合,年齢や性別により選択される商品が異なる。これを顧客属性などから読み取り,それぞれの顧客の求める商品提案ができる。これにより販売部門においても無駄なく広告発信ができ,またセグメントにより小ロットの告知も可能なため,テストマーケティングの実施も容易となった。

(3)効果測定の精度向上
広告発信をすべて顧客データにより行うため,その広告に対する効果測定も顧客データを元に正確な測定が可能となる。同社では顧客の基本的な属性データとカードの利用履歴の情報を保有しており,効果測定の精度を上げていけば今まで見えなかった顧客の顔を垣間見ることができるようになる。以上のことから,同社では,バリアブルプリント導入による効果としてショッピング取扱高年間5%増を見込んでいる。

■今後のビジネス構想
自社の商品提供だけにとどまらず,同社の取引先の情報を発信することにより同社と取引先のサービス利用促進,また広告費の削減・効率化を実現することも考えられる。
カード会社の利用明細書では,広告との一体化による顧客データの蓄積が可能であり,それを販促のノウハウとして構築し,利用明細書に限らず,DM,インターネットなど他媒体に活用し,取引先の広告活動に役立てられる。従って,それをビジネスとして実現することを視野に入れている。
なお,ここでのフルカラー・バリアブルプリント機は,Kodak Versamark VX5000 プリンティングシステム(コダック ヴァーサマーク社)が利用されている。同機は,ロール紙に印刷する方式が採用され,通常のカット紙と比べ後加工の自由度が高い上,両面検討精度も高く,巻き込みなどの印刷工程中のリスクも減らせるという利点もある。



『プリンターズサークル 2005年7月号より』

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2005/08/01 00:00:00


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