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電子メディアのビジネスを考える人のために

メディアビジネスは刻々と変わっている。インターネットは国民的に普及が進み、Webサイトのメディアとしての価値が高まっている。様々なコンテンツがデジタル化され、それはeBookなど多方面に展開してゆく。既存紙メディアは頭打ちで、新メディアもペイし難いが、新メディアの冒険なしには展望は拓けない。

Webサイトの情報
 インターネットの情報量は増加し続けている。郵政研究所の報告では、Webサイトの総ページ数は1999年2月に2950万ページ、600億字分になると予測している。新聞の場合は、1996年の段階で140億文字、その後も発行部数が増えていないことを考えると、かなりの情報量である。ただ、Webサイトの情報は、個人情報などあらゆるものが含まれているので、既存の出版物のように編集して厳選された情報を提供するメディアとは単純に比べられない。

 しかし、日経ネットビジネスの1999年12月の調査では、家庭からのアクセスが66%と前年より6%増えており、利用者の裾野は広がっている。7割以上が趣味・娯楽情報を、4割近くがニュースや天気予報情報、3割が生活関連情報にアクセスしている。個人が求めるニッチな情報や、速報性の高いニュースなど、特定分野においては紙メディアへ及ぼす影響は大きいと予想される。ただし、家庭においては通信料金は以前として大きなネックとなっている。35%の人が将来的にはCATVの定額のサービスを利用したいと考えており、低額で常時接続できる環境が整えば、さらなる広がりが期待される。

 出版ビジネスが伸び悩む中、日経BPのように情報化時代にむけて体制を整え、斬新な戦略をたてているコンテンツホルダーもある。日経BPでは全社的にデータベースを構築し、各媒体を超えた横断的な情報サービスを展開している。取材記事をメールで配信し、Web、紙の雑誌への掲載、最後には縮刷版CD-ROM、PDFを利用したコピーサービスと、各メディアの特質を活用した、コンテンツビジネスのモデルを作っている。

インターネット広告
 ユーザ数の増加により、インターネットの広告メディアとしての価値が高まりつつある。不況で企業全体の広告費が下がっているにもかかわらず、インターネット広告の市場は拡大している。電通の予測では、インターネットの広告市場は1998年の113億円から1999年には198億円になるという。

 インターネットにおける広告は、メールマガジンに掲載する5行広告や、Webサイトのトップページなどに画像などをはるバナー広告が多く利用されている。メールマガジンの広告料は10万〜15万円程度と比較的安いが、それでも発行部数100万部を超えるまぐまぐの場合は1999年3月の段階で月に1170万円の収入があるという。一方、Webのトップページの広告料は、@ぴあの場合は1カ月で100万円、asahi.comは1カ月200万円というように、数10万円から数100万円になる場合もある。インターネット広告の人気にともない、掲載料も上昇する傾向にあり、Gooは1999年6月に1週間のトップページの広告掲載料を180万円から200万円に引き上げた。

 これに対し、新聞などの既存メディアは、広告のデジタル送稿や取引EDIなどで、広告入稿期限の短縮化、作業の効率化などに取り組み、媒体価値の向上に取り組んでいる。

eBook
 インターネットの急速な進歩は、電子出版にも影響を与えている。10数年前の電子出版は、リファレンス系などのCD-ROMが中心であった。しかし、インターネットが普及し、パソコンだけでなく携帯電話やPDA、ゲーム機やテレビなど家庭電化製品にも接続し、CD-ROMという媒体にこだわる必要はなくなった。

 アメリカでは1999年に、電子ブックの仕様書として、Open eBookがまとめられた。日本では電子書籍コンソーシアムが5000タイトルの本をイメージで蓄積し、配信するという実証実験が2000年3月まで行われている。ネットワークでの配信を前提に、快適に本を読むための読書端末や表示技術についての開発が進められている。

 iモードサービスをきっかけに、軽量でアクセス操作が簡単な携帯電話を使ったインターネットの利用も増えている。パソコンのように携帯電話をケーブルで接続して、起動してメールを開くという煩雑な作業が不要というメリットは大きい。文字入力やセキュリティなどに課題はあるものの、サービスは拡大しており、集英社は1月17日からマンガを配信すると発表した。

   これからのパブリッシングは、いろいろな媒体で情報をだすことを想定してデータを構築し、魅力的なコンテンツ展開を図る必要があるだろう。このためには、情報発信に柔軟な組織体制やプロデューサー的な能力のある人材の確保など21世紀メディアにむけた戦略づくりがキーとなる。

 漠然とマルチメディアの「バス」に乗れば何とかなる時代ではなくなった。新メディアをよく知らずに取り組むのは無謀である。PAGE2000コンファレンスでは、今日の先端を行くメディア企業が、21世紀メディアトラックにおいて、5年先のメディアについて考える。 eBookはどこまで進む?では、ボイジャーやアスキー、イーストなど電子書籍の先駆者を招き、電子本あるいは紙の本の未来についてディスカッションを行う。 WEB普及の今後 では、YAHOOや日経BP、「旅の窓口」を構築した日立造船情報システムを招き、拡大しつづけるWebの将来について展望する。 また、デジタルアーカイブでは、東京国立博物館、大日本印刷、凸版印刷など、美術品や文化財のアーカイブでは最先端にたずさわる方を招き、公共性とビジネスという両方の観点から議論する。

2000/01/18 00:00:00


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