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新たなチャレンジの基盤となる画像処理技術

テキスト&グラフィックス研究会メンバーレポート)

株式会社トライペックスは,今年度から『テキスト&グラフィックス研究会』に参加している。同社取締役生産担当 大槻 辰弥 氏に,これまでのテキスト&グラフィックス関連の課題への取組みと研究会参加の意義についてお話を伺った。

取締役生産担当 大槻 辰弥 氏
株式会社トライペックスの概要

本社は東京都品川区にあり,1996年に創業した従業員数約50名,DTP制作を主力業務としている企業である。
主な事業内容は,チラシやパンフレット,カタログなど商業印刷物の制作,画像処理を中心としたプリプレス作業である。主要設備は,DDCP,CTPシステム,RIP,カラーマネジメントツールをはじめ,カラースキャナ,イメージセッタ,平台校正機などがある。

インクジェットプリンタや網点再現できるDDCP,または平台校正機による校正を行い,その後ファイナルデータの出力・納品を行っている。また,提携会社とはネットワーク回線が接続されており,CTP出力用の1bitTIFFデータ等のやり取りも行っている。

イメージを形にする制作工程

デザイン,レイアウトデータの編集・加工,地図・図面のトレース,大量ページのデータ編集などクライアントの商品の魅力を表現豊かに創作することをモットーにしている。
通常のチラシやパンフレットの作成には,QuarkXPressやInDesignを中心に編集作業を行っているが,定型カタログ等の文字組版には,組版ソフトウェアWAVEやデータベースのデータからドキュメントを生成するQuarkXPress用XTensions,DB Publisherを活用した自動組版を実現している。

例えば,クライアントのExcelデータをWAVEを用いてEPSデータに書き出し,自動組版に利用する。また,WAVEの図版データをIllustrator上に流用するなどの使い方も行っている。
さらに,あらかじめ一連の操作を登録し,自動的に実行させてアプリケーションの動きまで指定できるスクリプト言語AppleScriptを利用したバッチ処理なども手がけており,さまざまなシーンで業務の効率化を図っている。

コンテンツ管理の活用

画像データを中心としたデジタルファイルを効率的に運用するため,ActiveAssets(アクティブアセット)というデータベースシステムを利用している。ActiveAssetsは,デジタルデータを管理・共有・配信する機能を持ち,すべての操作をWebブラウザのみで行うことが可能なパソコンのOSに依存しないシステムである。SSLで暗号化したり,きめ細かな共有設定によるセキュリティ機能もある。

このシステムの利用によって,クライアントとの素材データの受け渡しから提携会社への大量の1bit Tiffデータ送稿に至るまで,インターネット上のやり取りに効果を発揮する。例えば,「片道30分かかるクライアントでも,営業が1日2回も往復すると結構な時間を要する」ということで,営業ツールとしてデータの入出稿の効率化およびコミュニケーションツールとして利用している。また,最近では画像データは先行して入稿され,データベースによるデータ管理の形態が増加傾向にあるという。

スキャナ時代から培ってきた画像処理技術

従来の画像処理工程は,入稿した写真原稿をカラースキャナを使用しカラーコレクション(カラーコントロール)で色補正していた。しかし,現在は「デジタルカメラデータによる入稿は,フィルム原稿に比べ過半数を大きく超えており,スキャナの稼動は年々半減している」と大槻氏はいう。したがって,従来のスキャナによるセットアップ作業が,今ではRGB〜CMYK変換に移行しており,適切な処理をすることに注力している。

また,AdobeRGB対応液晶モニタ(EIZO ColorEdge CG220)や,i1とProfileMakerを組み合わせたカラーマネジメントなど,さらに厳密なカラーマネジメントと画像データの合成,修正などクリエイティブ処理に注力している。
「DTP出力だけに留まらず,画像データのクリエイティブ処理を施した作成など,よりフロント側に業務を移行してより付加価値をつけていきたい」と抱負を語る。

例えば,影や背景,部品など多数のパーツを組み合わせる自動車用パンフレットでは,画像処理のノウハウを活かし高品質のデータ作成を行っている。また,写真点数が数千点ある部品カタログも手がけている。今後,これらの処理はCGを利用した画像データ作成システムを開発し,自社のデータ作成の合理化とクライアントの試作コスト削減など,相互のメリットを追求していきたいという展望もある。

独自のプロセス6色印刷方式を開発

株式会社恒陽社との共同開発により,これまでのオフセット印刷より色の再現性を大幅に高め,優れた表現力をもつ印刷方式「マルチシックス(以下,M6という)」を開発した。これは,CMYKのプロセス4色に2色を追加した印刷方式であり,現在特許申請中である。

従来のCMYKプロセス4色のオフセット印刷ではプリンタ等の領域と比べ,色再現範囲が制限される部分が多く存在した。

M6の場合はCMYKプロセス4色より色再現範囲が広がり,写真の再現性により近づくことができるという。
M6は,独自の6色分版方式をとり,FMスクリーンを利用した印刷方式である。モニタのAdobeRGBをそのまま印刷にも再現したいというコンセプトで開発したものであり,色域の広がりはより自然な仕上がりを目指したものであるという。
M6を中心としたRGBワークフローが可能になり,より高いレベルの付加価値の製品提供を心がけており,クライアントにも好評を得ている。

研究会の意義と要望

研究会には,大槻氏を中心に制作系または画像処理系のスタッフが仕事の状況を見て参加されている。
現場の中で目的意識を見失うことがないよう,若手社員も積極的に研究会へ参加させるようにしている。また,大槻氏をはじめ,数名の社員が自らDTPエキスパート認証を取得しており,自己啓発も活発に行っているという。同社は,社内FA制度もあり,自己アピールをする機会にも恵まれた環境にある。

「セミナーについて昨年までは,自分の足で無料セミナーなどの情報を探し参加していたが,内容については当たりはずれが多かった。今年度から参加しているJAGAT研究会は,テーマや内容が絞られていて短時間に得られる情報が多い」と大槻氏は語る。

「最近では,リモートプルーフソリューションinter-Graphicsや6色インキを使用した印刷システムであるヘキサクローム等をテーマにしたミーティングが参考になった」
「今後も,取り上げるテーマは幅広く扱っていただいた方が,いろいろな情報に出会える機会が得られてよい」という。
「今後もテキスト&グラフィックス研究会を通して,有効な情報をいただきたい。」と締めくくった。

2005/09/07 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会